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「課題となる攻守のバランス」20-21 PL 第8節 アーセナル×アストン・ヴィラ レビュー

前節オールドトラッフォードでユナイテッドに勝利し、ミッドウィークでELも勝利したアーセナル。プレミアリーグではここまで7失点とリーグで最小失点数という、今までのアーセナルらしくないここまでの結果。
対するアストンヴィラは、開幕から4連勝で勝ち点を重ねたものの、ここ2試合で負けており足踏み状態。アストンヴィラとしては、この辺で連敗を止めておきたいところだろう。
この試合を終えるとインターナショナルマッチウィークに入るため、この試合で勝利を収めて良い形で休みに入りたいのは両チーム共に同じだろう。
そして、昨シーズンにレノの負傷からアーセナルをFAカップ優勝に導く活躍を見せたマルティネス。彼が今シーズンに新天地として選んだのがアストンヴィラ。彼にとっては古巣対決となる。

■ チーム概要

【HOME】
・アーセナル(監督:ミケル・アルテタ)
フォーメーション:3-4-2-1
【AWAY】
・アストン・ヴィラ(監督:ディーン・スミス)
フォーメーション:4-2-3-1

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ホームのアーセナルは、前節と同じスターティングメンバー。お馴染みの3バックと4バックを可変させるシステムを採用。
対するアストンヴィラは、4-2-3-1のフォーメーション。マルティネスもしっかりスターティングメンバーに名を連ねた。

■ 前半:アストンヴィラの強力な左サイド

試合開始早々、早くもゲームが動く。アストンヴィラはボール奪取から左サイドのグリーリッシュへ展開。アーセナルの3バック脇を狙う形。ボールを受けたグリーリッシュはドリブルで仕掛けて注意を引きつけておきながら中央へ折り返し、これを受けたマッギンがゴール左上にシュートを突き刺し早々にゴール。と思いきやオフサイドポジションにいたバークリーの位置がキーパーの邪魔をしていたということで、VARによりこれがノーゴールに。アストンヴィラとしては辛いジャッジに見えた。アーセナルは出鼻を挫かれたものの判定に救われた形だ。

アーセナルはいつもの3バックから4バックへの可変で攻撃をスタート。ボール保持ではエルネニーがCB間へ落ちてビルドアップを補佐。トーマスはアストンヴィラのファーストディフェンスラインを超えた位置にポジションを取り3-1の菱形でボールを引き出す。両サイドバックを押し上げてサイドから崩しを狙う形。

これに対してアストンヴィラは、ワトキンスとバークリーを2トップにした4-4-2の守備陣形をベースに守る。時折り左サイドのグリーリッシュが上がって3トップ気味にプレッシングを行う時もあった。
基本的にはハーフウェイライン辺りからプレッシングを開始。中央を締めてサイドへ追いやる狙い。サイドで押し込まれても中央を固めてゴールを守る。

アストンヴィラの攻撃は、ボール奪取から先ずは左サイドのグリーリッシュを狙う形。そこから一気に突破が狙えれば攻め切る。無理ならボールを保持して周りのサポートを待ち、バークリーからの精度の高いパスで最終ラインと勝負する狙い。

アーセナルはアストンヴィラの起点であるグリーリッシュに再三3バックの脇を狙われ、ホールディングが対峙するもボールを奪いきれない。

失点シーンはまさにそこから生まれる。グリーリッシュにサイド深くまで押し込まれ、そこにバークリー、ターゲットも加わり3人でボール保持。パス交換とポジションチェンジを繰り返しながら機会を伺い、マークがズレたタイミングでバークリーからターゲットへ絶妙なスルーパス。ターゲットからの早いグランウダークロスを逆サイドのトレゼゲが詰める。サカがなんとか防ごうとトレゼゲの前に足を伸ばしてボールに触ったものの、これがオウンゴールとなりアストンヴィラが先制に成功。ホールディングがグリーリッシュに寄せきれなかった事、ベジェリンがマークを外してしまった事が致命傷となったシーンだった。

アストンヴィラの強みであるグリーリッシュを起点としたバークリー、ターゲットの左サイドからの攻撃は非常に強力で何度もアーセナルディフェンスを苦しめていた。

■ 後半:崩壊した守備

1点ビハインドとなったアーセナル。後半はゲームの主導権を握って逆転の足がかりとしたいところだが、ここでアクシデント。前半にピッチ中央で前後のリンク役として起点となれていたトーマスがまさかの負傷により交代。代わりにセバージョスが入って後半がスタート。

セバージョスは積極的にビルドアップに関与してボールの前進を試みるものの、スタートポジションが低くチーム全体がスピードアップしないことで相手陣地へボールを運べてもアストン・ヴィラの守備陣系が整っていることが多く、アーセナルはバイタルエリアへ侵入できない。ゼロトップ気味のラカゼットへのパスコースも塞がれ、前後を分断されたアーセナルは決定機を作れないまま時間が過ぎてゆく。

なんとか攻撃に転じたいアーセナルは、65分という早い時間帯に2枚替え。ラカゼットとウィリアンを下げて、エンケティアとペペを投入する。交代枠を使い切り前がかりに仕掛ける。

しかし72分、アストン・ヴィラが追加点を上げる。コーナーキックのこぼれ球からドウグラス・ルイスがディフェンスラインの裏を取ったバークリーへ対角線にロングフィード。これをダイレクトで中で折り返し、最後はワトキンスが頭で押し込みゴール。精度の高いドウグラス・ルイスのフィードにワンタッチで正確に中へ折り返したバークリーと、非常にレベルの高いゴールだった。アーセナルとしては、裏のバークリーをフリーにするべきではなかった。

さらに75分には、カウンターからグリーリッシュにまた右サイドを突破され、CB間をうまく抜け出したワトキンスへグリーリッシュからスルーパス。これをワトキンスが見事なシュートをゴールに突き刺して追加点。

交代枠も使い切り、3点差をつけられたアーセナルは万事休す。0-3でゲーム終了。完敗となった。

■ 試合結果

Arsenal 0 × 3 Aston Villa

■ 得点
25分:ブカヨ・サカ(オウンゴール)
72分:ワトキンス(アシスト:ロス・バークリー)
75分:ワトキンス(アシスト:グリーリッシュ)
■ 交代
45分:トーマス → セバージョス
65分:ラカゼット → エンケティア
65分:ウィリアン → ペペ
88分:トレゼゲ → エル・ガジ

■ 試合ハイライト

■ あとがき

今のメンバーでは4バックでの守備に不安を感じたアルテタは3バック型や5バック)にする事でこれを解消。見事にプレミアリーグでここまで7失点と守備の再構築には成功したかに見える。

しっかりと守り、ボール保持では自陣深い位置まで相手を引き出してプレス回避から擬似カウンターで仕留める狙いでここまで勝ち点を稼いできた。

ただ、この試合のように相手に先制され、ディフェンスラインを深く設定されてしまうと、ファイナルサードで相手を崩し切る力は残念ながら今のアーセナルにはまだ無い。

5レーンを塞ぐために3-4-2-1で守り、4-3-3への可変でボール保持から攻撃を仕掛ける今のアーセナル。ビルドアップで中盤が下がる事により後ろが重たくなり、必然的に中央が足りなくなる。そこをラカゼットのゼロトップ、またはウィリアンが中に絞る事で後ろと前を繋いでサイドの深い位置へ、そしてフィニッシュにつなげる擬似カウンター狙いがベースだが、これには早い展開が必要となる。ゆっくりとボールを回していては、相手の守備ブロックが構築されてしまい、攻めきれなくなってしまう。

それを解消できていたのがジャカのパススピードだったり、ダビド・ルイスのロングフィードだったが、この試合では2人ともに出場せず。

固い守備を構築したものの、それと等価交換で攻撃の人数不足が課題となった今のアーセナル。攻撃に人数を割くと守備の強度が下がる可能性が高いので悩ましいところだ。

今のアーセナルは、攻守のバランスが取れていない。

今後、アルテタがこの課題に対してどう解決策を見出していくのか注目だ。


見出し画像 引用元:アーセナル公式HP
ハイライト動画:アーセナル公式 You Tube
フォーメーション画像作成:TACTICALista