「積み上げのその先」20-21 PL 第6節 アーセナル×レスター・シティ レビュー
ヨーロッパリーグを戦い中2日で迎えるプレミアリーグ。対戦相手はレスター。レスターもヨーロッパリーグを戦いスケジュール的には同じ条件で戦うこのゲーム。
レスターは、開幕から3連勝とスタートダッシュに成功したもののヴァーディを怪我で欠いた直近2試合で連敗と、今ひとつ波に乗れていない。アーセナルと互いに勝ち点9同士。どちらもここで勝って上位へ喰らいついておきたいところだ。
■ チーム概要
【HOME】
・アーセナル(監督:ミケル・アルテタ)
フォーメーション:3-4-2-1
【AWAY】
・レスター・シティ(監督:ブレンダン・ロジャーズ)
フォーメーション:3-4-2-1
アーセナルはメンバー的に4-3-3でスタートするかと思われたが、蓋を開けるとジャカを左ハーフバックに置いた3-4-2-1をベースにした形だった。守備時は最終ラインに5枚を並べ、攻撃時はジャカが前に上がって4-3-3をベースにする可変が見られた。注目の新加入トーマスがプレミアリーグ初スタメン。ウィリアンが怪我で不在となり、オーバメヤンは右サイド起用。サカが左シャドーに入った。
レスターはエースストライカーのヴァーディが怪我明けということでサブメンバーに名を連ねる。そしてマディソンが今シーズン初スタメン。フォワードに入ったバーンズはサイドを主戦場とする選手ということで、ロジャーズは前線にセンターフォワード不在のメンバーで組んできた。
■ 前半:効果的だったロングフィード
試合開始から4分。アーセナルのコーナーキックからラカゼットのヘディングシュートでいきなり先制。と思いきやオフサイドポジションにいたジャカがキーパーの邪魔をしたと判断され、プレーに関与したということで、これがノーゴールに。個人的にはこのジャッジは厳しく感じたし、せめてVARで再度検証してほしかった。タラレバになるが、これがゴールと判定されていれば、この試合は全く異なったものになっていたように思う。
アーセナルの守備時の基本的なフォーメーションは5-2-3のような形。アーセナルは今までと同様5人で最終ラインを守ることは変わらないが、今までとの違いは、ジャカが左CBに入っていること。普段サイドバックへ降りるサカは、この試合でシャドーのポジションに入っているため、降りてこれないことからこの戦術を採用したのだと思われる。
そして、オフェンス時には両サイドバックを高い位置へ上げる狙い。右はベジェリンが幅を取りハーフレーンにオーバメヤン、左はティアニーが幅を取りハーフレーンにサカ、中央はやや低めのゼロトップにラカゼットが入って5レーンを埋める形を作る。
対するレスターは、5-4-1で比較的深めにブロックをしいて守る形。攻撃はトランジションからのショートカウンターをベースにしているように見えた。しっかりと引いて我慢強く守り、チャンスを伺う狙いだ。
アーセナルのビルドアップはジャカを軸にした形。左ハーフバックに入ったジャカは、インサイドハーフや左ハーフバックの位置へ移動しながらウイングバックのティアニーを高い位置へ押し上げる。トーマスは中央で全体的なビルドアップをサポート。そしてなにげに効果的だったのが右寄りのインサイドハーフに入ったセバージョスのポジショニング。セバージョスはあまりボールプレーに関与出来ていなかったものの、やや高めの位置にポジションを取ることでマディソンやメンディをピン留め出来ていた。これによりレスターを押し下げることに成功。結果、ディフェンスラインでスペースと時間に余裕が出来たことで、ダビド・ルイスから精度の高いロングフィードが可能になっていた。
10分には右サイドのベジェリン、11分には中央のラカゼット、14分には左サイドのティアニーと、ダビド・ルイスのロングフィードからフィニッシュにつなげる良い形が何度も見られた。28分には、そのロングフィードからティアニーへつないでクロス。最後はラカゼットのヘディングシュートがきっちりと合っていればゴールという非常に惜しいシーも作っていた。まさにこのダビド・ルイスからのフィードは、アーセナルの突破口となっていた。
ダビド・ルイスからの対角フィード、ジャカを軸にしたビルドアップで、いつもどおり左偏重で攻めるアーセナルは、サカ、ティアニーがミドルサードからファイナルサードにかけていくつか効果的なプレーを見せるもののゴールまでは結びつかず。
ゴールは奪えないものの、ネガティブトランジションでインテンシティが高いアーセナル。ボール保持の時間が長く、レスターのシュート1本に対し、アーセナルはシュート11本(枠内3本)と、ゲーム自体はコントロールできていたものの、スコアレスで前半終了。
■ 後半①:失った突破口
後半開始早々の48分、ダビド・ルイスが負傷によりムスタフィと交代。後半スタート前にアルテタがムスタフィになにやら指示をしていたので、その時点ですでに違和感はあったのかもしれない。これによりアーセナルは、前半に最も効果的だったダビド・ルイスのロングフィードという一つの突破口を失うことになる。
更に52分、サカがフォファナのタックルで負傷。プレーは続行するが結局このあと65分にペペと交代。これでミドルサードからファイナルサードにかけてこの試合で最も仕事の出来ていた選手を失うことに。これで2つ目の突破口も失うことになった。
前半はレスターのDF-MFのライン間にポジションを取ることが多かったセバージョスが後半は、MFラインの手前低い位置ににポジションを取る形に変更していた。これにより後ろと前が分断されるような形になり、アーセナルは前へボールを運べない。
レスターの中央2枚の守備が堅いこともあり、ブロックの手前でただボールを保持する時間が続く。60分頃からはセバージョスが徐々に高い位置を取るようになるが、なかなか後ろからボールを引き出せない。ダビド・ルイス不在でロングフィードも使えずボールを効果的に前へ運べない時間が続く。
■ 後半②:突かれた急造DFの穴
レスターは60分、いよいよエースストライカーを投入。プラートを下げてヴァーディが入る。75分にはバーンズを下げてウンデルを投入。カウンターの強度を上げて得点を狙いに来る。
そして80分、遂に均衡が破れる。ハーフウェイライン手前でこぼれ球を拾ったメンディからティーレマンスへ。下がりながらボールを受けるティーレマンスに対してトーマスがプレッシング。しかしティーレマンスはマイナス方向へボールをコントロールし、トーマスのプレスを無効化。そこから縦へズバッと長く鋭いスルーパスを供給。受けたのは交代で入ったウンデル。そのままウンデルはワンタッチで中へクロス。待っていたのはエースストライカーのヴァーディだ。これを難なく決めてレスターが先制。ジャカのCB化で生まれたラインのズレをうまく突かれた形だった。トーマスがもう少しティーレマンスへ寄せきれていればスルーパスを防げたかもしれないが、ティーレマンスのマイナスへのボールコントロールが非常にうまかった。
アーセナルは、失点直後にティアニーを下げてエンケティア投入。前線の枚数を増やすもレスターの守備は崩せず。結局このまま0-1で試合終了。アーセナルは後半シュートわずか1本に終わった。
■ 試合結果
Arsenal 0 × 1 Leicester City
■ 得点
80分:ヴァーディ(アシスト:ウンデル)
■ 交代
49分:ダビド・ルイス → ムスタフィ
60分:プラート → ヴァーディ
65分:サカ → ペペ
75分:バーンズ → ウンデル
81分:ティアニー → エンケティア
85分:マディソン → オルブライトン
■ 試合ハイライト
■ あとがき
この試合で鍵となっていた、ダビド・ルイスのロングフィード、サカのライン間で受けるポジショニング。この2つを怪我で失うことになってしまったのは不運だった。
とはいえ、1が無理なら2の手3の手を出せるのが強いチーム。アーセナルは現状そこまで力がないということだろう。オフェンス面、特にファイナルサードでの崩しのバリエーションが少なく感じる。
ただ、アルテタ就任後、守備の構築は順調に進んでいるように見える。この試合でもネガティブトランジションを中心に守備の意識、強度が高く、以前の脆さは感じさせなかった。
ビルドアップの構築もまずまず。特に左サイドは再現性もあり効果的なビルドアップを出来ているように見える。課題は右サイド、そして中央を効果的に使うことだろう。
守備、そしてビルドアップも徐々に構築されてきた。アルテタによる積み上げは確かにある。その先の課題をどうクリアしていくのか。今はもうしばらく辛抱が必要な時期なのかもしれない。
見出し画像 引用元:アーセナル公式HP
ハイライト動画:アーセナル公式 You Tube
フォーメーション画像作成:TACTICALista