-第1章- 研究背景と目的 「インディーズにおけるアナログゲーム開発環境と実践」
1−1 アナログゲームとは
ゲームといえば、スマートフォンなどを利用したいわゆるデジタルゲームを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。他にも、PlayStation4などの家庭用の据え置きデジタルゲーム、Nintendo Switchなどの持ち運べる携帯ゲームなど、様々な種類のデジタルゲームが存在している。その一方で、近年話題に上っているゲームの中にアナログゲームというものがある。
まず、アナログゲームの定義をするために、デジタルゲームの定義を引用する。デジタルゲームの定義について、長瀧(2012)は以下のように書いている[1]。
「娯楽を主目的として利用する計算機またはその上で動作するプログラムであり,テレビなど映像や音声を出力する装置を用い,操作する者との双方向のやりとりで出力される映像や音声が変化するもの」
ここで、アナログとデジタルとは対比であるものであるから、アナログゲームとは「計算機を使わず、映像や音声を出力する装置を使わないゲーム」のことであり、ここから、本研究ではアナログゲームを「電源を使わないゲーム」であると定義する。
このアナログゲームは、世界でも様々な人に遊ばれており、1年間に発表されるアナログゲームの新作の数は1000タイトル以上にもなる[2]。これは、大手メーカーなどから出る新作のみの計上で、世界各国のローカルな新作を含めると、さらに数は増える。それほど、世界中で根強い人気を持つゲームが、アナログゲームである。
1−2 アナログゲームの利用
アナログゲームは娯楽だけでなく、教育や災害対策としても利用されている。教育面ではプログラミングの初期教育としてのグラヴィティメイズ[3]、数学教育としてのナインブレイク[4]などがある。災害対策面では、避難所運営のシミュレーションとしてのHUG[5]、災害にまつわるジレンマについて考えるクロスロード[6]などがある。
図1-2-1 グラヴィティメイズ [3]より転載
図1-2-2 ナインブレイク [4]より転載
図1-2-3 HUG [5]より転載
図1-2-4 クロスロード 現物を著者が撮影[6]
1−3 インディーズにおけるアナログゲーム
日本におけるアナログゲームへの関心は年々高まっており、ボードゲームカフェという世界各国のアナログゲームを遊べるカラオケのようなレジャー施設が、2018年11月段階で351店舗、存在している[7]。
さらに、ゲームマーケットと呼ばれるメジャーやインディーズの垣根を超えたアナログゲームの日本最大の即売会では、2018年5月において出展企業やサークルが800を超え、来場者も2万人を超える大きなイベントとなっており、ますます規模が大きくなっていくことが想定できる[8]。
つまり、日本においてアナログゲーム市場はますます大きくなり、関わるユーザーが増えると考えられ、アナログゲームに対する調査は重要性をますます帯びてくると考えられる。
1−4 研究目的
本研究の目的は、アナログゲームを実際に制作し、インディーズのアナログゲーム市場に出すことで、インディーズ環境でのゲーム制作のプロセスと現状を明らかにし、その環境における実践例を示すことである。
参考文献
[1]長瀧 寛之(2012)、「コンピュータゲームを通して情報科学を概観する一般情報教育の授業手法の提案と評価」、『情報処理学会論文誌 Vol.54 No.1』、p2-p13
[2]GetNavi Web、「世界中で年間1000タイトル以上がリリース! あなたの知らないボードゲームの世界」http://news.livedoor.com/article/detail/14629300/ (2018/12/30 閲覧)
[3]「The BoardGame Family」https://www.theboardgamefamily.com/2014/11/gravity-maze-puzzle-game-review/ (2019/1/17 閲覧)
[4]「ナインブレイク」http://ninebreak.jp (2019/1/17 閲覧)
[5]「静岡県公式HP 避難所HUG」http://www.pref.shizuoka.jp/bousai/e-quakes/manabu/hinanjyo-hug/omotome.html(2019/1/1 閲覧)
[6]「内閣府 防災情報のページ クロスロード」http://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h20/11/special_02_1.html (2019/1/1 閲覧)
[7]「ボドゲーマ 全国のボードゲームカフェ」https://bodoge.hoobby.net/spaces (2018/12/30 閲覧)
[8]「ゲームマーケット」http://gamemarket.jp/report/ (2018/12/30 閲覧)
次はまた今度。
札幌出身、福岡育ち、東京住みのSunnyと申します。 働きながらボードゲームデザインをしています。いただいたご支援は、ボードゲームデザインに使わせていただきます。