秋に恋ふらく
肌色が少なくなる季節に、そろそろ壁に掛けたクーラーのリモコンにホコリが溜まる季節を想う。
こんな季節だからだろうか。あの友とこんな会話をした。
「誰か隣に居ないかな」と。
どんな歌を聴いても、どんな風が吹いても、どんなレイヤードに肌を隠しても、この季節は一段と寂しさが乾燥しそうなどこかに沁みわたる。
だから人は「人肌恋しい」なんて言葉に身を任せて、その寂しさを埋めたい気になる。
だけどね、私もあの友もこの寂しさが好き。
窓を開けたら、秋がお邪魔しますと言わんばかりにカーテンを揺らす。
スタバではホットの選択肢が増えて思いがけずレジに長居してしまう。
イヤホンをして散歩でもした日には、秋風が私を歌詞の中に連れ込んで、その歌のヒロインに仕立てあげてしまう。
秋という漢字は一番洒落ていて、秋という感じは一番寂しい。秋という範囲で安易に恋ふらく。
それならいっそ、秋に入り浸る。研ぎ澄まされた第六感に秋を覚えさせる。
秋の風はこうで、秋の匂いはああで、秋の音楽はこれで、秋の色はそれ。
今年の秋は私を覚えていてくれるだろうか。
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