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『白いしるし』を読んで

 この本を最後まで一文一文を追って、読み干すことができて良かった。
 直球恋愛小説を読んだ経験はあまりない。恋愛小説を毛嫌いしていたため、背表紙のあらすじを見て、棚に残したままにしておいた。しかし読み終えて、外出自粛の恩恵を享受することができたと思っている。それくらいの権利はくれ。
 登場人物全員が誰かに盲目的に恋をしていた。「盲目的に」との表現がありふれており、陳腐なものに思えてしまう。それ以上に彼らはその一瞬一瞬をかけて恋をしていた。

 人が恋に落ちる導入なんて、どうでもいい。容姿がいい、金持ち、性格が合う、身長が高い、作品が素敵、セックス が上手。
 この初期段階の「好き」の先に潜むドロドロとした「好き」に浸かってしまったら、泥沼である。「好き」という絶対的に揺るぐことのない感情を支えに、抱いてしまう理解し難い新たな感情。なりたい、食べたい、お金をあげたい、ぶたれたい、産みたい。
 側から見たら理解し難い感情が、本人には理解できてしまうのが恋であるようだ。この本に登場する人物の心情を、西さんが巧みに細部まで描いてくれたおかげで、気づかせてくれた。

 周囲の友人のカップル事情を聞いて、自分の彼女に抱く感情はひどく変態で、狂っているほどのめり込んでいるように思えた。弱冠20歳が彼女を生きがいにして、大学に通い、バイトをし、就活に挑み、日々健康でいようとしている。恋人のいる友達の多くが、大学生の自由な特権を存分に濫用するが如く、男女で遊んだりしている。私は彼女ができた途端、他の異性と積極的に関わりたい感情が消えてしまった。よくTwitterのbioで見かける、「〇〇の隣。女絡みいらん卍」系の感情。この感情がおかしいのか。彼女が自分に合わせてくれているのではないかと疑っていた時期もあった。
 しかしこの本は自分の感情を肯定してくれた。この恋が生涯成就し続けようが、し続けまいが、今この瞬間狂乱的に没入している恋を大切にしようと思えた。この感情を頼りに行動していこう。ただ愛していたくて、愛する。
 以上のように豪語しても、やっぱり彼女とは永く一緒にいたい。自分の抱いた感情が世間一般から見てアウトと判断したら、自分の感情の中に留める。
 感情を誰かと比較するのはもう終わりにしよう。また自分の感情を否定する考えを持つのも終わりにしよう。治安維持法がなくて良かった。法を犯さない限り、私の恋愛感情は飛躍し続ける。「彼女を産みたい」が「彼女を産んで死ぬまで見届け、後追い」するまでに。肯定してくれてありがとう西さん。自分のエゴを大切にしていくよ。

 恋愛はウイルスよりも感情を突然変異させる。

ステマみたいな文章になってしまいました。
てへっ。