#16 『夏の体温』/瀬尾まいこ

3編の小説集になっている本書。
今回紹介したいのは表題作の『夏の体温』。
主人公の小学三年生の瑛介は血小板数値の経過観察で1カ月以上入院中。
退屈な日々を過ごす中、同学年の壮太が2泊3日に検査入院してくることに。
たちまち仲良くいった2人。
でも、一緒にいられるのはわずかな期間。
そんな2人の交流を描いた話。

大きな事件が起こるわけではないけど、2人にとっては大切な思い出になるんだろうなあと感じました。
印象的だったエピソードが2つあります。

1つ目は瑛介が先生からあと1、2週間で退院できるよと言われた場面。
「一、二週間。ひとくくりにしてもらっては困る」「ぼくら子どもにとっての一日を、大人の感覚で計算するのはやめてほしい」。
大人だとあっという間に感じてしまう時間でも、子どもにとってはまた時間の感じ方って違うんだよなあ。
さりげないようでとても鋭い言葉だなと思いました。

2つ目は退院した壮太から瑛介への手紙が届いた場面。
現代の中学生か小学校高学年くらいならスマホを持っていることが多いと思います。
なので自然とLINEなどのSNSで連絡先を交換するという流れになりそうです。
しかし、2人は手紙でやり取りをしています。
小学三年生という絶妙な年齢設定が手紙でのやり取りをリアルなものにさせているなあと思いました。

私は高校生のときに1度入院したことがありますが、同じ病室(4人部屋)に2人の小学生くらいの男の子が仲良くなっているのを見ました。
学校とは違うコミュニティでできた友達はまた人生の視野が拡げてくれるのではないでしょうか。
自分の周りにはおじさんと小学生と赤ちゃんしかいなかったので、友達はできませんでしたね(笑)

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