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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

君たちはどう生きるのかー感想・考察

大分、遅くなったけど映画「君たちはどう生きるのか」を観てきました。
事前、情報も少なく、原作も哲学・倫理なども絡んできて難しく感じて敬遠するかもしれませんがこの作品は事前情報なしで楽しめると思います。簡単な個人的な感想でいうと「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」のような路線に感じました。この二つの作品が好きな人なら観て楽しめるように思います。宮崎監督の久々の作品で過度な期待も過度な推測もしないでみれば多くの人は楽しめるようにも思います。ただ導入部といえばいいか最初の方は少し戦時中の知識というか文化・雰囲気がわかっていたほうがいいかも。そこで飽きがくる人も出ているのかも。
この作品の哲学的な部分はあとでネタバレをしながら詳しく説明もしますが作品の展開的には宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」などの作品やサンテグジュペリの「星の王子様」的な感じで表現しているので小難しい哲学論は必要ないと思います。少年の冒険物語の裏にそのような設定も存在している、そんな構想で作っていると思います。(ただ例で挙げたものが本・小説という行間や想像が大事なものでアニメ映画がそれを表現するのは難しい媒体でもあるようにも感じます)
もしかしたらそのような作品同様、子供のころはなんとなく好きだったけど、大人になって、成長して、見返したときにまた発見がある、そんな思いも込めて作ったのかもしれません。
事前情報なしというのは変に構えてみるのはやめて、単純に楽しんでみてもらいたい、ということだと思っています。









*ネタバレ注意
■内容を詳しく考察・説明
最初にこの作品の意図がなんだったのか?
本来はそれも各々で考えてもらいたいと思って、制作しているようにも思います、無粋で悪いのですが個人的感じた宮崎監督のテーマは何だったのか?を説明します。
基本的には漫画版の「風の谷のナウシカ」のエンディング部分を意識し、その世界観、捉え方を提示したように思います。なので、漫画版「風の谷のナウシカ」を知っていると世界観は分かりやすくなるかなと思いました。漫画版「風の谷のナウシカ」では土鬼という勢力があり、超科学力を持っている墓所という存在があります。土鬼のトップ、皇帝も実は墓所のいいなりであって、墓所の目的は平和な人類(新しい人類、超人類)による世界を作る、そのような狙いがありました(詳しくは漫画版風の谷のナウシカで確認ください)。この作品では皇帝が大叔父になり、平和な人類というのはインコという設定になりました。本来、インコというのはかわいらしい平和な生き物のイメージですがそのような平和なものだけの世界は正しいか?それは宮崎監督のなかでずっと意識していたテーマだと思うし、そのような世界でも競争があって、その中で権力者がでて、争いや問題が起こるという思想があるのだろうと思います。そして大叔父に関しても個人でみれば、親族という間柄でいい人だとしても組織、この作品だと塔の中の世界、そしてその主という全体でみれば間違っている、そのような意図での設定だと思います。そして理想の世界というのはどこかにあるのではなく、自分たちで作っていくもの、そんな思い・テーマがあるようにも思います。そしてそれはAIという存在、その危険性も言われている現状にも共通している大事なテーマだと思います。いわゆる正論ばかりに比重を置くのではなく、自分で感じて、考えて、そして選択する、そのようなことは大事だよ、ということが伝えたかったことだと感じています。
この思想の部分関してはいろいろな意見があっていいと思いますがこのような意識を持つことは大事だと思います。

それ以外にもいろんな部分で隠されたメッセージはあると思いますが、それは各々が想像し、知り合いや友達と話しながらその謎を考えるほうが楽しいだろうと思うし、自分も全てわかっているわけでもないし、そこまで無粋にもなれない。
ムスカやレプカ、そしてカリオストロ伯爵、みんな悪人というような役回りで宮崎監督は本当はいい面も描きたかったという話も聞いたように思います。今作品は悪い人という描き方ではなく大叔父という存在を登場させて、宮崎監督とすればその点も一つ、今まで描けなかったことに挑戦し、表現できたことだったと思います。
ちなみに公開して日数も経って、平日の昼という時間帯でもあり、映画館の観客も満席ではなかったので割と気楽に観れました。一つ空席を挟んで観ていた若い人が泣いていて、とても感情豊かなんだなと思いながら、どこか捻くれてしまった中年、おじさんになって、純粋さを忘れてしまったのかもと思いながら映画館を後にしました。

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