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エンターテイナーと職人

今日、とある音楽フェスティバルで、いくつかのバンドのライブを観てふと思ったことがある:バンドマンは、エンターテイナーと職人タイプのふたつに大別されるのではないだろうか。

今日のフェスには息子がキーボードを担当している、総勢十五人ほどのビッグバンドも出演していたのだが、これがまた非常に分かりやすい例だった。
構成メンバーが全員中坊だから慣れていないだけなのかもしれないけれど、ほぼ無表情・もしくは真顔で自分のパートに専念している子と、演奏しながら、もしくは歌いながらノリノリの子がいる。
ノリノリの子は観客の目線を気にしているのか、自然とそうなってしまうのかは分からないが、動画にしたときに切り抜かれたり、映えるのはこういうタイプだ。ここでは仮にエンターテイナーと呼ぶことにしよう。

基本、ヴォーカリストはエンターテイナータイプの子が多いし、それはプロのバンドでもそうだと思うが、職人の子たちは、舞台に立っていても相変わらず職人。まるで朝三時起きでパンでもこねているような顔つきだ。眉間にしわを寄せてキーボードを弾く息子を見ると、観客からどう見られているか少しは気にせえ(;´Д`)と思うが、こういうのは元の性格もあるから、場数を踏んだところで多分変わらないだろう。

といっても、やたら動きが激しかったり、顔芸みたいなことをやるピアニストが(たとえ世界トップレベルの演奏でも)私はあまり好きではないので、淡々と弾くけれど技術がある演奏者の方がよほど見ていて気持ちがいいとも思う。だから他人の余計な一言で不自然な作り笑顔をするより、職人は職人のままで、演奏技術を高める努力をして、同じ舞台上に立つ生まれながらのエンターテイナーを輝かせることに集中すればいい。そういう職人タイプの仕事が琴線に触れる観客もいるだろうから。

と、ここまでの文章でバンドを構成するエンターテイナーと職人について述べたが、この2タイプにどうしても振り分けることが出来なかった子がいるので、補足したい:件の息子が所属するビッグバンドに、とても歌の上手い男の子がいるのだが、何故かその子はライブ中ずっと心ここにあらずといった感じで、目も虚ろだし、何を考えているのかサッパリ分からないしで、その声量とそれにそぐわない希薄さに毎回乖離が生じる。私と私の友人らは、その少年を最初のライブで観た時、やる気がないのだろうと決めつけていたが、どうやらそうではないらしい。ということで、エンターテイナーにも職人にも当て嵌まらない子用に、不思議ちゃんというカテゴリーを加えておこうと思います。
もしかしたら、こういう浮世離れした子が、オーディション番組か何かでどこぞのプロデューサーの目に留まって、数年後にビッグスターになるのかもしれない。日本の女性アーティストで言ったら、鬼束ちひろさんとかCoccoさんとか、まさにそういうタイプだもんなあ…。

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