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十二時間の闇を超えて

この時期のドイツの日の短さには毎年うんざりさせられるけれども、上には上がいて、というか、北には北があって、どうやら北欧諸国は15時過ぎには暗くなってしまうらしい。
昼過ぎに離陸したヘルシンキ行きAY1434便が厚い雲を突き抜けた瞬間、二週間ぶりに日の光を浴びて多幸感に包まれたが、それも束の間、14時過ぎには急速に陽が傾いていくのが機内の窓から見て取れた。

夜が長過ぎる。

長年暮らしているドイツでもギリ耐えられるかどうかなのに、さらに日が短い国になんて、到底住めないと本能的に感じた。
と、そんな私を啓蒙するかのように、成田行き飛行機のエンタメサービスに「世界で最も幸せな国フィンランド」というドキュメンタリー映画があったので視聴してみた。

映画は、フィンランドの自由な教育現場から、福祉の充実ぶり、恵まれた環境で更生する囚人、サ活なんかが紹介されていた…が、正直今の私にはあまり響かなかった。
というか、フィンランドは寒くて、冬は日が短くて雪も降って不便だから、精一杯の工夫でQOLを上げる事で日々を耐えしのいでいる風に私には見えてしまったし、もし言葉の問題がないとしても、住みたいとはあまり思わない。

私も、私の周りの在独邦人もこの時期は大抵ドイツを脱出したいと言うけれど、生まれた時からドイツ暮らしの息子は、それがデフォルトだかなのか何とも思わないらしく、「お日様が出て来たから外出しよう!」とかいう発想もないし(子供だからですかね^^;)、寒さにもめっぽう強いし、一ヶ月曇りと雨の日が続いても、それを意に介す様子もなく、自宅で悠々と過ごしているのを見ると、強いなあ、北の国で暮らす適正抜群だなあと感心してしまう。

その強さを身につけたら私はもっと快適にドイツで暮らしていけるだろうけれど、残念ながらそれは出来そうにない。
最近は、日々を忙しく過ごす事で日の短さやこの国への不満を忘れ、時折日本にリフレッシュしに帰る事ばかり考えている。なんつーか、ドイツは私の生活圏だし、外にいようと家の中にいようと、常にどこか戦闘態勢なんだよな…。

十二時間の闇を超えて上陸した成田空港は暖かくて、都内行きのリムジンバスはとても快適でWiFiまで使えて、今日も日本はとても私に優しかった。

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