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人の向き不向きと、それでも向いていないことに挑戦する意味とは?

今、バルト海沿いの小さな街、プレロウに来ています。

街の観光は二時間もあれば十分で、駅なし、ビーチあり、森あり、近隣の街につながるサイクリングロードありといったロケーションなので、一週間の滞在ともなれば、見るものもなくなり、隣町まで足を延ばしてみるかという気になってきます。

そういうわけで、三日目の昼、プレロウの街から6kmほど離れた西海岸なる場所に行ってきました(徒歩で!)。

自衛隊の訓練で100キロ行軍というものがあるそうですが、往復12kmということは、それのたった12パーセント。四十過ぎとはいえ、毎日ジムで体を鍛えている私に出来ない訳がありません。
それに、ランニングマシンで時速5.4km、まるっと一時間歩くというプログラムを週に三日くらいやっているので、コンディションが悪くなければ、その倍だって余裕で歩けるはずです。

行軍のメンバーは旦那(42)、息子(12)と私の三名。森の中のサイクリング&ジョギングコースをひたすら歩いていきます。しかし歩き始めて十五分くらいで気がついたのは、

「外を歩くのは、ランニングマシンの倍疲れる!」

という事実でした。
森の中の砂利道、歩き慣れた靴を履いているとはいえ、ごつごつした石の感触が伝わってきます。家族三人で歩いているから音楽も聴けないし、日差し、風、ときどき飛んでくる虫など、屋外ならではのコンディションで一時間歩くのは、快適なジムとは大違い。おまけに1.5リットルの水、軽食、ビーサン、タオルなどが入った大きめのリュックサックを背負っている時点で、ジムでのウォーキングと森の中の行軍は全く別物なのでした。

しかしそれより私が驚いたのは、旦那と息子が平然と目的地まで歩いていたこと。二人にとっての障害は、凸凹道を歩くのが疲れる、ではなく、同じような景色の道が延々と続いていて飽きる、だったのです。普段「ジム!ウォーキング!筋トレ!」と連呼しているのは私の方なのに…。

「二人とも疲れないの?歩き慣れてないのによく平気だね」
と訊くと、
「別に…」
と言った感じで、涼しい顔で歩いているのを見ると、私がこの二年間ジムで過ごした時間は一体何だったんだ~!!と木々に向かって叫びたくなってきます。確かに、ランニングマシンの上でスマホの画面を二分割してツイッターとYouTubeを眺めていただけだったけどさあ…。こんなの、フェアじゃないよォ(涙)。

ちなみに、息子は私によく似ているねと言われるのですが、首から下は(性別も含め)私の要素まるでなし。シュっとしていて、足がメチャクチャ細い。私としてはそれで構わないというか、むしろ嬉しいのですが、体型や体脂肪率、筋肉量なども持久力や運動能力と密接に結びついているのであれば、二人はおそらく行軍に向いた体をしていて、私はそうではないのでしょう。それを、二年間ジムでウォーキングしてきた実績のみで、何とかついて行っているのです。息子も文句ひとつ言わず12km歩けるなんて嬉しいなあ、この子も成長したなあという感動もあるものの、自分のショボさに気づかされた一日でした。

そして二日後、今度は旦那が「サイクリングしたい!したいしたい!」と言うので、自転車を借りて、プレロウから約13kmほど離れた、アーレンスホープという街へ行くことにしました。

私は、ジムのエアロバイクを時速約10kmで一時間漕ぐプログラムをやってきた実績があるので、今度こそ自信がありましたが、その自信は最初の2kmで見事に砕け散りました。レンタルショップで借りたばかりの慣れない自転車は姿勢が安定しないし、凸凹道の振動が思ったよりも激しくて、手とお尻が痛いし、なんなら松ぼっくりを踏んだだけで自転車がグラついて、「ヒエッ!」と止まりたくなってしまいます。

ここでもメンズは楽々自転車を漕いで、息子の方はマウンテンバイクですが、旦那は何故かママチャリみたいなやつを借りていて、さしてスピードも出なさそうなのに、鼻歌を歌わんばかりのお気楽さです。私は両手がふさがっているので(手放し走行なんて出来る訳ありません)、心の中でハンケチを噛んで悔しがりました。

アーレンスホープまでの道程で、老夫婦から赤ちゃん、小さな子供を連れた家族まで、多くのサイクリストとすれ違ったのですが、五歳くらいの子が補助輪なしの自転車に乗って(まあ、こちらでは補助輪自体あまり見かけませんが)、親と一緒に走っているアレは、自転車の英才教育か何かでしょうか。だってその森の道、一旦入ったら最短の目的地でも4kmはあるのですから。あんな三輪車を一回り大きくしたようなミニ自転車を漕いでいるちびっ子に四、五キロ、往復で十キロのサイクリングをさせるとは…!こっちの人って、小学校はゆとり教育なのに、サッカークラブ、体操教室、自転車とかになると、急にスパルタになるんですよね。

ママチャリみたいな自転車に乗っている老夫婦も、ふくらはぎにはしっかり筋肉がついて、アキレス腱もくっきりだし、二年間ほぼ毎日ジムに通って、未だに藤子不二雄作品のキャラのような脚をしている私は、一体どうしたら良いのでせう。今更サザエさんのようなキュッと締まった足首になりたいなんてワガママは言いませんが、せめて努力に見合った成果が欲しい…。

そんな事を考えながら、約一時間後、アーレンスホープに到着しました。二時間ほど滞在したところで、雲行きが怪しくなってきたので、雨雲レーダーを確認したところ、夕方には雨が降るとのことなので、同じ道で帰ることに。砂利道の振動と至るところに落ちている松ぼっくりは確実にHPを削ってきますが、そこそこ慣れて来たので、先頭を走っている息子について行くことだけに集中してひたすら漕いでいたら、あらびっくり!行きの半分の時間でプレロウに着いたではありませんか!往路では自転車のギアを一番軽いものにしていたこともあるのですが、復路は随分ラクに漕げた気がします。あれ、もしかして私才能ある?//// いや、あるワケないんですけどね。それでも13kmの道程を倍速で漕いで帰ってきたことは、私にとって一種の成功体験なのでした。

ちなみに私は泳げませんし、ドッジボールはただの暴力、逆上がりは出来たことがない、飛び箱は飛べたことがない、持久走は211人中209位、徒競走は万年ビリで、体を動かすことに関しては、全くもって向いていないようです(普通に、健康体なのに!)。小学校・中学校の頃、クラスにいつも一人か二人、全く授業について来れない子がいて、子供だった私は「あんな簡単な計算ができないなんて信じられない!」と不思議に思っていたのですが、きっと私の運動能力について、クラスメイトは同じ感想を抱いていたことでしょう。私とスポーツというのはそれくらい相容れないものだったので、二年前にジムに入会するまで自分の意志で運動をすることはなかったのですが、ネットが出来る、暑くも寒くもないし雨も降らないという好環境で筋トレを始めたら思ったよりハマったので、自分が運動が苦手だったことも、最近はすっかり忘れていたのでした。

今回、メンズ二人と一緒に歩き、自転車に乗ってみて、私の体力ってこの程度なんだ、ショボっ!ダサっ!ピアノで言えばバイエル上巻じゃん!と思い知らされたわけですが、もしかして、四十過ぎのオバさんがこのプログラムについていけているだけでも、大したものだと思っていい?ですかね。
だとしたら、日々のジム通いも全くの無駄ではなかったのかな、と少しだけ楽観的な気分になれたのでした。

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