ラジオDJとしてもすごい大友良英

大友良英は、いい。
ジャズDJとして、実にいい。
フリー・ジャズの演奏家であり、「じぇじぇじぇ」で有名な連続テレビ小説『あまちゃん』、NHK教育テレビ番組『大人の一休さん』、そして来年は大河ドラマ『いだてん』とさまざまな劇伴を手がける人でもあり、地方の音楽祭的なイベントの立役者も務める大友良英氏が、ラジオDJとしてもこれほどすばらしい腕を持つとは知らなかった。
すんどめが最も敬愛するジャズDJにして、日本に最後に残った本物のジャズ評論家でもある児山紀芳氏が体調不良のため、２０１８年の１２月、NHK-FM『ジャズトゥナイト』で代打を務めた大友氏であった。
その立派な代打ぶりには驚かされる。
来年の『いだてん』を目前にした氏が、今のタイミングでこのような仕事をしたことは、記憶にとどめられてしかるべきだ。

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大友氏のジャズDJぶりの特長は、やはり、彼が単にジャズ・ミュージシャンというだけでなく、劇伴作家という別の顔を持ち、活動に幅があることから来ると思われる。
というのも、ジャズ番組を２５年聴き続けてきたすんどめに言わせると、ジャズDJというものは一般的に、どうしても「偏り」を持ってしまうのは、これはもう仕方がないものなのだ。
何の根拠もなくボーカルものばかりかけてしまう人。
同じくフュージョンやクロスオーバーものばかりかけてしまう人。
自分の演奏ばかりかけてしまうミュージシャン兼DJ。
往年の巨人の足跡ばかりを追ってしまい、最新の若手の動きに対する取材をサボってしまう人などなど。
ジャズという世界があまりに広大で、その歴史は深遠で、気も遠くなるほど豊かな構造を持つため、バランスよく取材し番組で取り扱うのが困難なのは仕方がない。
目下体調不良中の児山紀芳氏の何が凄いかと言えば、１９６７年には死んでしまった伝説の男、ジョン・コルトレーンにインタビューした経験を持ちながら、２０１０年代の今も精力的に新譜情報を取材し、世界じゅうのジャズ・ミュージシャンに会い、エレクトロ・スウィングやヒップホップ・アレンジまで幅広く扱うその飽くなき不屈の精神である。
偉大なる児山氏。
一日も早く元気になって頂きたい。
さて、そこに来て大友氏である。
自身がフリー・ジャズの演奏家でありながら、児山氏ばりの幅の広さを見せ、ハード・バップ期の古典作からノイズ系、果ては５０年代の歌謡曲におけるジャズ・ミュージシャンの参加演奏と、実にバランスよくかけてくれる。
これならマニアックなリスナーにもそうでないリスナーにも抵抗なく、かつ興味深く聴くことができる。
決して自己満足に陥ることのない、リスナーへの優しい配慮が行き届いたDJぶりではないか。

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１２月２２日の放送では、日本のフリー・ジャズの発生経緯を、児山氏とは全く異なる独自の見解で分かりやすくまとめてくれた。
そればかりか、世界のノイズ・ミュージック発祥の謎にまで、やはり彼独自の視点から切り込んでくれた。
横山光輝原作のテレビ番組『ジャイアントロボ』（１９６７年～。音楽担当は山下毅雄）のBGM「格闘」某に、日本の最初期のフリー・ジャズ的演奏が見られるという衝撃の内容にはほんとうに驚かされた。
よほど注意深く調査を重ねていなければ、こんなことには気づかないだろう。
そういえば６４年の、とんでもなく不気味な迫力の映画『鬼婆』の音楽に対しても、極めてフリー・ジャズ的だと感じた記憶がある。
果たしてそこに影響があるのかどうか、大友氏に質問してみたくなった。
さらに大友氏は、同じく山下毅雄の劇伴作品としてテレビ・ドラマ『七人の刑事』（１９６１年～）を挙げ、その主題曲に松本英彦らジャズ・ミュージシャンが参加していたことを解説。
当時の日本のジャズ・ミュージシャンが本業でやっていたジャズはむしろアメリカのジャズのコピーで、そのかたわら参加していた歌謡曲や劇伴での演奏にこそ、当時の日本のジャズ・ミュージシャンの本当の個性が現れているという大胆な指摘までしてみせた。
個人的なことだが、すんどめは『七人の刑事』の主題曲を聴いていて、何かこう、『大岡越前』の主題曲にも似た作曲上の文法を感じた。
そういえば山下毅雄と言えば『ルパン三世』の最初期の音楽や『ガンバの冒険』の音楽なども手掛けた人で、『大岡越前』も含めそれらに共通の哀愁があるな、と感じて調べてみたところ、案の定『大岡越前』も山下毅雄であった。
このような興味を激しく喚起してくれるのが、大友氏のDJというわけだ。

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さて、もうすぐ２０１９年。
新作の大河ドラマ『いだてん』で、大友氏はさまざまな面白い音楽を用意しているらしく、後半になればなるほど驚きの音楽が待っていると予告。
それらの音楽に出会うのが今から楽しみだ。
早く来年になってほしい。

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