シンジくんも言ってるし...

「逃げちゃだめだ」

エヴァンゲリオンのテレビシリーズ全26話と劇場版を観た。
エヴァシリーズは何となく食わず嫌いしていたが、もっと早く見ておけばよかった。

「天才が作ってますわ。」

偉そうだがこれが私の感想だ。100万回褒めちぎられてるし私が褒めても100万人が通った道だろうがこれは自分語りの自己満なので勝手に褒めさせてくれ。

私は何の疑問も持たずに敷かれたレールを生きてきた。親は教育熱心で私に色々な習い事、勉強にもうるさかった。親自身の学歴コンプを含む様々なコンプレックスへの復讐の道具として見られていたのは間違いない。別にそのことは悪く思っていないし、自分も親になったらそういう気持ちにもなると思う。

ただ私には反抗期というものが無かった。当然グレることなく、皆勤賞で小中学校を卒業した。田舎の公立だったが、学校ではトップクラスの成績だった。学校社会という画一的で小さなコミュニティでは常に均質な比較対象がいるし、私にとって「勉強ができる」ということはアイデンティティの確立という点で非常に大きかった。
勉強は出来たが運動はからきしで、内気で、声も小さい。クラスでは当然目立つ方ではなかった。そのため私にとってはクラスの立場を保つのにこの「勉強ができる」という要素無しでは生きていけなかったと思う。

人は劣等感をもって生まれてくる。私は人一倍これに関して感受性が高い。つまるところ「プライドが高い」と言えると思う。

余談だが、「自己肯定感」という言葉は一般的になっているものの、私はあまり使わないようにしている。自己を肯定するのに何か理由付けが必要だとすると、私には「勉強ができること」が自分を肯定する要因となるだろう。しかし、私より勉強ができる人間など、この世にいくらでも存在するし、大学だってそこそこのところに通っているわけで、この一点で自己肯定をしようとすると、世界で一番勉強ができないといけなくなるではないか。

まあつまり何が言いたいかというと、人と比べてもきりがないし、諦めて、受け入れて生きていくしかねえじゃんって思い始めた。しかしこれを思い始めたのは最近のことで、小中学生時代の自分のことを思うと、その時は非常に「自己肯定感が低かった。」

あんまり本筋と関係ない話ばかり書いてしまった。別に誰も読んでないだろうし許してくれ。

学生の本分は勉強!!という標語に救われ、与えられた目標を受け入れ、受け身のまま勉強し、漠然と生きてきた。そして、そこそこ良い高校、良い大学に進学したが、今就職活動の時期になり、気づいたら走っているレールがなくなっていた。「やるべきこと」「やった方いいこと」「誰かにやれって言われていること」のレールを走ってきた私にとって、気づいたら大海原で自由に舵をとって行き先を決めなくてはいけなくなった状態で、本当に何をしたらいいかわからなくなり、思考停止してふさぎ込んでしまった。ふさぎ込み、人間が怖くなり、半鬱のような状況に陥った。全てを投げ出して家から出れなくなった。

ここでようやくエヴァの話なのだが、私はシンジくんと自分を重ねた。シンジ君は自分よりも若くして人生に向き合っているように見えた。自分だったら何も考えずにヱヴァに乗る人生なんだろうなぁ、と思ってしまった。シンクロ率は低そうだけど。
私がエヴァに見たのは、「エヴァに乗る」ということとが「人生に向き合う」ということにマッチしているということだ。自分の人生に向き合うことから逃げた私とシンジ君がエヴァから逃げようとするときの心情が非常に近いものに感じられた。

実は新劇を「破」まで見た。シンジ君の葛藤のシーンが大幅にカットされており、私としては旧劇信者寄りの感想を抱いている。私がヱヴァでアツいと思ったのはシンジ君の葛藤なのだ。これからすべて見ようと思う。

シンジくんにヱヴァに乗るというレールを与えるのは親なのだが、もうこれは就活に口出ししてくる親に見えた。また、選択肢を提示されたシンジは信じた道を行き、人生はそうやって自分で前向きに進むしかないんだって思わされたし、自己嫌悪との向き合い方、自己肯定を何かに依存するのは危険だったり、色々と心に刺さるところがあった。

旧劇のラストには面食らってしまったが、私の解釈では、シンジが殺したアスカはエヴァに乗って戦った自信を取り戻したアスカではなく、シンジに嫉妬し、自己肯定できなくなってしまったアスカなのではないかと考えた。心の壁であるATフィールドがなくなり、アスカの心に存在する色々な面のアスカが具現化する中で、その一人を殺すことで救ってあげたのではないか、と勝手に予想した。

「天才が作ってる」と思ったのはロボットアニメという今までの型をすべてをフリに用いて新たなオチを創造したところである。それと、親からの圧力、人生との向き合い方、自己肯定、人間関係、色々なことをテーマにしたかったのだと思うし、作り手が現在進行形で悩んでいることも全て作品に落とし込まれているような気がした。全てが解決しないところも人生と同じだと思うし、不評だったという最終2話も、背景を聞いたら納得できた。何ならなんで叩かれたのか少し疑問だった。人類補完計画が遂行された世界と考えれば納得できそうなものだが。

時間が無い中での完璧とはいえないであろう演出だったのだろうが、私はこれら全てがあったからこそ、エヴァが伝説になったのだろうと思った。完璧すぎる作品よりこの人間らしさ、作り手の現在進行形の悩み・苦悩があったヱヴァだからこそ、完璧主義ではない私にはすごくよく届いた。

まあシンジくんが逃げちゃダメって言ってるし自分もぼちぼちがんばらないとな。

多分正解なんてないんだろうから好きに語らせてもらえて満足した。では。



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