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僕がご飯を奢っていた愛想の悪い彼女 

勝手にエッセイ書きました。リレーエッセイにも参加します。ウエイ!



あれは大学1年生の夏。当時も今も人にご飯を奢るほどお金はないが、彼女だけは特別だった。


彼女との出会いは近所にある広い公園だった。


大学の授業は終わり、夏休みに突入。それはそれは暇を持て余していた僕は30度を超える猛暑の中、一人鼻歌を歌いながら散歩していた。音痴なのに。


そんな猛暑で人どころか鳩すら見当たらない公園を散歩していた時、彼女を見つけた。


こんな猛暑日にも関わらず、外にいる彼女は木陰でぐっすり眠っていた。

よくこんな猛暑の中、寝て居られるな~とか思いながら近づいていくと彼女から「グーーー」と音が鳴った。


どうやらおなかが空いているようだ。寝ていたのではなく、空腹で動けないだけだった。僕が目が悪くて気が付かなかったが、近づくと僕をにらみつけていたことが分かった。


僕もこんな初対面の関係で何かをしようとは思わない人間。ましてや僕の事を睨め点けていた彼女。そのまま過ぎ去ろうと思ったが、あまりにもやせ細り、みずほらしい見た目をしていた彼女。


思わず近所のスーパーで彼女のご飯を買って持って行ってあげることにした。


最初は僕の事を警戒していた彼女も空腹には耐えられなかったのか、1口ご飯を食べ始めるとあっという間に完食。

そして彼女は満足したのだろう。そのまま礼も言わずどこかに行ってしまった。


あまりにも鮮やかに去っていくその姿。僕はただただ眺めることしかできなかった。


普通だったら「なんて恩知らずな奴なんだ!」と怒る場面だし、僕だって普通だったら怒っていたと思う。

しかし、彼女のあの美しい青い瞳を前に僕は「また会いたいな」とのんきなことを考えていた。

食い散らかした彼女がおいていったゴミを片付け、僕はそのまま帰宅した。


そこから1週間ほど、公園に通うが彼女の姿を見る事はなかった…


次に会えたのはそれからさらに1週間後。

彼女の姿をみると、初めて会ったときと同じように横になり、お腹がなっている。

僕はまた、彼女にご飯をあげた。

彼女が食べている最中、「どこから来たの?」「普段何してるの?」と質問をするが彼女は食事に夢中で何も答えてくれない。


食べ終わるとまた、前回と同じようにどこかに姿を消してしまった。


そんな恩知らずの彼女にも関わらずなぜか惹かれてしまった僕は毎日、彼女にご飯をあげるために公園に通う日々が続いた。

彼女は相変わらず僕の質問は無視し、ご飯を食べ終えると光の速さで消えて行ってしまう。


そんな関係が1ヶ月続いたある日、僕が住んでいる地域に超大型の台風が接近した。。


その前日、近所のスーパーやホームセンターでは防災グッズや水が棚から姿を消し、Twitterでは台風の対策をまとめたツイートがバズっていた。


そんな中でも僕は彼女に会いに行くために公園に出かけた。もう完全に虜になっている。

彼女がご飯を食べている最中、台風が来るけど彼女は大丈夫なのかと不安になる僕。

それはそうだ。彼女はその日のご飯すらままならない。きっと家なんて立派なものはないのだろう。


今までは生きてこれたけど、今回の台風は過去最大級の強さ。比にならない。

お節介だとは思ったがご飯を食べ終え、逃げようとする彼女を捕まえ、僕の住んでいる家に連れてきた。


最初は戸惑っていた彼女もなんやかんや適応し、今では家に住み着いてヨギボーで寝ています。


おい、そこは人間様のスペースだぞ、タマ!


「にゃ~」


【あとがき】
本当はもっと、蛙化現象を絡めて書きたかったのですが、あまり絡めることが出来なかったのは秘密です。






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