投資家プレゼンで他社のことを紹介しろ
起業する前もプレゼン(ピッチ)を何回もやっていましたが、起業してからの3年間のプレゼン回数は優に100回を超えると思います。
それはもちろんピッチイベントも含み、そのだいたいの目的は投資家からの資金調達です。もちろんそのイベントでは、弊社以外にもスタートアップが参加していて1つだけ思うことがあります。
「なんでこんな自分の話したいことしか話さないんだろう」と。
多くの起業家は、「自分の頭の中の事だけ」を話します。そこからマシなのは、自社の技術のこと、次にマシなのは自社の顧客のことを話します。でもそれは間違っています。
質疑応答の時間になると、投資家は別の角度で質問します。
「御社にはどんな競合がいますか?」
「競合との違いはなんですか?」
「あとから競合が出てきたらどう対応しますか?」と。
ピッチする起業家からすれば
「あれ、技術やビジネスモデルの話で伝わらなかった?」とか
「うちには顧客がいるし、その人たちが何で使ってるか説明したじゃん」とか
「今競合いないからとりあえず先に金積めば勝てるから出せよ」とか
思うわけですが、そうもいきません。
こういった話は日本だけではありません。インドでも中国でもアフリカでもそうですし、意外とシリコンバレーでもそうです。
本当に起業家のプロダクトがユニークなら、私も投資家の勉強不足感や「1知って10理解できない」感に大きな共感をするのですが、たいていの起業家はプロダクトに関係する市場分析も、伝え方も悪い結果、資金調達が決まっていないのです。
プロダクトの良し悪しについてはまた今度書くとして(例えばこちら)、今回は投資家向けのプレゼンで重要なこと・最初に話すべきこと、つまり伝え方にフォーカスして書きます。
まずある消費者層がどんな競合のプロダクトを使って、どんな不平不満を持っているのかを説明しましょう。
例えば30代前半の女性が美容情報を知るためにA雑誌を使っているけど分かりづらい、とか。
次にその消費者が自分自身でどうやって解決しようとしているのか、それによって何が問題なのかも説明しましょう。
その例に乗れば、本やインターネットで調べるけど、関係する記事が多すぎるなどです。ここでは実は本やインターネットもあなたの競合になります。
ここでやっと自社プロダクトの説明するわけですが、それもすでに説明した競合との比較をしながら説明しましょう。
比較の表現方法は、スクリーンの場合と、1対1ミーティングの場合で違います。スクリーンで細かい(4x4以上)マトリクスを見せてはいけません。
さらに2軸の図を使って、自社プロダクトと一番近い競合2-3社との比較をしましょう。なぜその競合が自社プロダクトを真似してこないのか、真似したとしてなぜ最低限のシェアを自社が取り切れるのか、その競合に対するM&AのExitはありうるのか、など説明しましょう。
最後にdefensibility(防御可能性)について説明しましょう。論理的にだけ考えれば、同じように始めれば誰でも真似できるわけですが、後発者が勝てないポイントがいくつかあります。
例えば、
プラットフォームのネットワーク効果
企業向けサービスのスイッチングコスト
オリジナルのアルゴリズムや技術力
データベース
業務オペレーション
など。
古くは知的財産もそうですが、それは裁判で勝負できれば、の話です。
これらの話をすれば投資家はひとまず最低限「納得」できます。「投資」の前には「感動」があり、その感動の前に「納得」があるので、納得が必須です。
また、上記の話をすれば結果的に自社の顧客や技術の話をすることになります。他人の話をすることで自分の話をするのです。
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