社会問題を伝えることの難しさに10年間向き合った
こんにちは、トキワです(@etokiwa999)。
先日2月5日、ついに拙著「悪者図鑑」(自由国民社)を出版しましたが、僕のこの10年間は、社会問題をどうやったら多くの人に伝えることができるかを考えてきた10年間でした。
この10年間でデザインを学べる大学にも通いましたし、クラウドファンディングでアート活動も行いましたし、3年間企業でマーケティングの修行もしました。伝えるインフラという意味ではインターネット選挙解禁にも関わりました。
なぜ多くの人に伝える必要があるのか?
それは社会問題が全員の無責任な行動と、その結果への無関心から生まれているからです。
例えば分かりやすいのは環境問題です。便利な生活をするために二酸化炭素を排出し、それが海に吸収され、海水温が上昇し、異常気象を引き起こし、先進国はまだしも新興国・途上国に甚大な被害をもたらしています。
ただ伝えるにあたっていくつか問題があります。
まず、ただ知るだけでは人は改善のために動かないということです。電車で途上国の飢餓の子どものポスターを見ても寄付をしないでしょう。
ではどうすればいいか?自分にとってマイナス・プラスのことがないと人はわざわざ動かないのです(自分事化といいます)。コロナ禍でマスクをつけるのは自分がかかりたくないからです。
次になぜ社会問題が自分事化しづらいかというと、起きている社会問題が自分の生活から遠すぎる、もしくは分かりづらいからです。
分かりやすく伝えるために具体的な話をすると、、、
例えば性的少数派(LGBTQ)のことを伝えるとします。よくあるのが以下です。
13人に一人(8%)がLGBTQです。左利きは11%、AB型は10%です。
とても分かりやすいですよね、数字的には。でも全然、自分事化されません。
社会問題は本当に様々な形で表面上にでてきますが、それぞれの問題に関わる人口がそこまで大きくないため、具体的に伝えると自分とは関係なくなりやすくなります。
多くの人に関わる言葉を使って伝えようとすると、、、
例えば「環境問題」、「経済格差」、もっとマシなのは「福祉政策」「平等」、、、これらは多くの人口に影響のある内容です。
でも、一気に分かりづらくなります。その言葉の意味は分かるし、それが問題なのも分かるけど、全然自分事化されません。
なぜならとても抽象的すぎるのです。曖昧過ぎて何を伝えたいのかよくわかりません。
解決策がないから社会問題になっている
社会問題として残り続けているのは、それが解決の難しい問題だからです。
ただ社会問題を伝えられても「これが問題」「あれも問題」ととても暗い気持ちになります。しかもそれぞれの問題が複雑に絡み合ってるので、さらに難しく暗い気持ちになります(以下参照)。
一方で身の回りにはNetflixやYoutube、ニンテンドースイッチがあり、楽しいことで溢れています。わざわざ暗い話を聞いて気持ちを落ち込ませる必要がないのです。
出典:自殺実態白書2013
出典:本当の貧困の話をしよう
出典:リディラバジャーナル
じゃあどうするのか?
もう一度基本に立ち返って、「自分事化されるのはその人にプラス・マイナスがあるから」というところから考えるのがいいと思いました。
社会問題をその人のプラスに変えて伝える方法の例は「SDGsビジネス」です。そこに大きな市場があり、SDGsをやっていると言えばブランディング(=かっこいい、美しい)にもなります(しばしば~~ウォッシングと言われますが)。
一方でその人のマイナスに変えて伝える方法で出てきた案が「悪者」でした。
例えば「警察24時」という犯人逮捕までのドキュメンタリーがありますが、ゴールデンタイムに長い時間、そして長い間放送されています。それは見たい人がいる(視聴率がいい)からです。なんとアメリカ版も人気だそうです。
子どものころも男子には戦隊ものや、女子には魔法少女ものが悪をやっつける構図で放送されています。悪をやっつけるのは気持ちがいいのでしょう。
その証拠に「正義中毒」として有名になった「人は、なぜ他人を許せないのか?」では、悪者を叩く際に脳の神経伝達物質ドーパミンが出てることが紹介されました。
人はなぜか悪者という遠くも近い存在に対して感情を持って自分事化してしまうのです。
悪者とは加害者のことであり、社会問題とは切っても切れない関係にあります。
ちょうど出版でも、2016年「サイコパス」や2019年「ケーキの切れない非行少年たち」がベストセラーとなりました。
虐待では親が、いじめではいじめっ子が、ハラスメントでは職場の上司が加害者となりますし、悪者=自分の嫌いな人と解釈すれば貧困・自殺を作り出した政治家も悪者になります。
発売されて間もない現在、「悪者」ですらまだ抽象的ではないかと不安に感じることもありますが、どうにか多くの人に社会問題の全体像を知ってほしいと思っています。
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