イメージトレーニングの特性と効用
イメージトレーニングをする時、あなたはどんな風にイメージをしますか?自分が行なっている一人称視点でしょうか? それとも外から動きを見る三人称視点でしょうか?
実はこのイメージの仕方によってイメージトレーニングの効果が少し変わってきます。
ここで簡単なテストをひとつしてみましょう。今、頭の中でできるだけ鮮明に、「走っている」イメージをしてみてください。
描けましたか? さて、それは…… ① 自分が実際に走っている目線でのイメージでしたか?
② 自分が走っているのを客観的に見ているイメージでしたか?
あるいは両方混ざったようなイメージだったでしょうか?
実はあなたが今見た映像で、どんな種類の運動イメージ(Sport Imagery)を使ったのかがみえてきます。
①の自分が実際に走っている目線でのイメージは「筋感覚イメージ」
②の自分が走っているのを客観的に見ているイメージは「視覚イメージ」
となります。
運動をイメージする際、大きく分けて2種類のイメージの仕方が存在しています。そしてそれぞれ脳の活動域が異なります。筋感覚イメージと視覚イメージ、共に脳の運動関連脳領域を活性化しますが、特に「筋感覚イメージ」を使った時の方が、より実際に動いた時と類似した脳の部位が活性化されます。つまり、自分が体感しているような一人称視点での姿を鮮明に描く方が、イメージトレーニングの効果を高めることができるのです。
イメージトレーニングと筋肉の反応
イメージトレーニングといっても実際に筋肉を動かしていないのだから、イメージしたところで筋肉は育たないのでは?と疑問に思ったことはありませんか?
実際にイメージトレーニングが筋肉に影響を与えることを検証した面白い実験があります。
フランスの大学での実験で、被験者は野球やサッカーなどのスポーツ選手。彼らにベンチプレスとレッグプレスを行ってもらい、セット間の休憩時間は3~5分に設定するというものでした。そして、被験者達は休憩時間にイメージトレーニングを行うグループと行わないグループに分けられました。
イメージトレーニングを行うグループは、休憩時間に目を閉じ、一人称視点で今行ったトレーニングの一連の流れをイメージします。そしてトレーニング中の筋肉の収縮を感じる、という課題だけが追加されました。
被験者達はこのトレーニングを週3回、4週間にわたって行い、その前後で最大筋力と運動回数を計測。その結果、筋力、運動回数ともにベンチプレスではあまり差は認められませんでしたが、レッグプレスでは有意な増加が示されたのです。この結果から、イメージトレーニングが実際に筋肉に影響を与えたことが分かりました。
体を動かすイメージを繰り返すと、実際にリアルタイムで運動しているときのように、脳と筋肉との間の運動神経路が強化され、実際の筋トレ時にも筋力が発揮しやすくなり、筋力が増強するのだそうです。
でもなぜ、ベンチプレスよりもレッグプレスに有効性があったのでしょうか? ここに、イメージトレーニングに関連するもう一つの面白い特性があります。
レッグプレスでより有効だった理由は、イメージトレーニングによる「モチベーションの向上」が挙げられています。
イメージトレーニングにはネガティブな感情を抑え、モチベーションや集中力を高める効用が報告されています。この実験のトレーニング後のアンケート調査でも、ベンチプレスよりもレッグプレスのほうが不快感が強かったことから、イメージトレーニングがレッグプレス時の不快感を軽減し、パフォーマンスの向上に寄与したと推測されています。
何度もイメージすることで、本番への緊張や恐怖心を軽減させ、パフォーマンスアップも期待できるイメージトレーニング。フィールドに出る時間が以前よりも制限されている今のこのご時世だからこそ、自分の身一つと想像力でできるこのトレーニングを活用しない手はないと思いませんか?
トレーニングの合間や練習の前後など、自分の体の中の筋肉の感覚や動きのイメージが新鮮な時に、たった5分でもイメージトレーニングを導入してみる価値は十分にありそうです。
引用:
1) Lebon, F, Collet, C, and Guillot, A., "Benefits of Motor Imagery Training on Muscle Strength"
2) "イメージトレーニングが筋トレの効果を高める〜その科学的根拠を知っておこう" by 庵野拓将
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