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Design Salad vol.3~これからの「サービスデザイン」

デザインを通じた世界との関わり方を考えていく、デザイナーのためのアップデートプログラム「Design Salad」。背景や業界も種々さまざまなデザイナーが出会い・対話し・混ざりあい、実践から得た知見を共有しあいながら「デザインの未来」を探索していきます。

サービスデザインをテーマにした第3回目は、株式会社コンセント デザイナー/アートディレクターの佐々木さん、Sun* Inc. デザイナーの南、NEWh Inc. 代表取締役社長の神谷、モデレーターとしてSun* Inc. デザイナーの早川 の4名が登壇。クライアントのサービスづくりにまつわる知見の共有や現場での体験談について語り合うセッションとなりました。

サービスは、モノとコトの集合体で作られている

「サービスデザインって結局なんだろう?」というはじめの議題に対し、コンセントの佐々木さんは例をあげてわかりやすく説明してくれました。

「例えば『おいしいコーヒーが自宅で手軽に飲めるサービス』の場合、その中には複合的にモノとコトが集合体として存在していて、サービスを契約する一連の流れと、それに付随する必要なモノたちが含まれているんです。」

「コーヒーを実際に注文して配送される体験、それに付随するアプリケーション、Webサイト、コーヒーを入れるための機会、手に取るカップ、飲む場所など、1つのサービスにはモノとコトが複合的に入っています。サービスというのは、それらを包括する大きな概念だと考えています」

4つのデザイン領域を包括する、一番広い概念がサービスデザイン

株式会社コンセントでは、優れた一連の顧客体験をデザインし、それを継続的に提供するために幅広い領域をデザインしています。
「ユーザ体験のデザイン(UXD)、顧客体験のデザイン(CXD)、多様な顧客文脈を満たすデザイン(ID)、企業ビジョンのデザイン・ブランディング(VD)があり、それらを包括する一番広い概念をサービスデザイン(SD)と読んでいます」と佐々木さんは言います。

これに対し、Sun* Inc. の南とNEWh Inc. の神谷も「アグリーです」とした上で、各領域のデザイナーやクライアントが業界知識やスペシャリティを発揮しながら、いかにコラボレーションしていくかが重要だと付け加えました。

サービスデザインの導入ってどうしてる?

では、実際にクライアントへサービスデザインを導入するときに、どのように進めているのでしょうか。
「サービスデザインのような全体感をもったアプローチをするときに大事なのは、相手も全体視点で語れる人であること。できれば代表取締役と僕は話したいので、紹介してもらうなどアプローチできる道を探す。」とNEWh Inc. の神谷は話しました。
「リブランディングの相談があったときに経営層と話をすると、そもそもリブランディングの手前の『事業の強みや組織の価値』があいまいだよね、となるケースがある。事業の強みを可視化しながら、どこに注力すべきか考えていきましょう、と話をしていくことができる。そういう会話を大切にしている」とも述べました。

Sun* Inc. の南は、クライアントとの関係構築について「プロジェクトにおいて関係性や文脈を解きほぐさないと、最終的なユーザ体験は届けられない場合がある。どこから介入していくのが良いか、という視点で会話を開始していくことが多い。プロジェクトの状況に応じて地図を書いて、どのように入っていくのが良いか作戦を立てるところは感覚的にやっていると思う」と話しました。

「サービスデザイン」という単語にこだわらなくていい

「サービスデザイン」という単語にこだわるのではなく、その根底にある考え方が重要であるとコンセントの佐々木さんは述べます。
「『デザイン』と聞いたときに、ある種の専門性を持った人たちがやっていること、と他人事のような受け取られ方をしてしまったらサービスデザインの意味がなくなってしまう。そうではなく、サービスデザインという単語は出さずに、事業を考える時にどういう観点で考えていけばよいかというTips的な方法で導入し、一緒にやっていくことも重要だと考えている。」と話しました。

Sun* Inc. の南からは「非常に共感します」との感想の後に、「デザイナーがプロジェクトの中でクライアントからどう見られているのか自覚的になることが大切」という意見を述べました。
「デザイナー側からすると全体を俯瞰して設計しているつもりでも、クライアントから見ると『デザイナー観点での主張だよね』で済まされてしまうことがあり、目的達成のためには望ましくない可能性がある。デザイナーがプロジェクト内での立ち位置や相手からどう見られているかを自覚的になった上で振る舞うことが必要だと感じる」と語りました。

サービスデザイナーとして動きやすい環境をつくるには

「プロジェクト内の関係性を、新しくフラットに構築していける環境は動きやすいと思います。一方で、これまでの関係性や文脈が外せないチームだと、関係性を解きほぐすことから始めないといけない。そこは難易度が高い。」とSun* Inc. の南は述べました。

また、コンセントの佐々木さんは「サービスデザイナーとして動きやすい環境をつくるためには、まず相手の温度感やモチベーションについて理解する必要がある。さまざまな立場の人がいる中で、相手が何にモチベーションを感じるのか、何に共感しているのかなどを理解し、状況に応じたアプローチや関係構築が求められる。」と話しました。

SDGsとサービスデザイン

セッションも終盤に差しかかり、議題はSDGsや社会へと移っていきます。

「コンセントでは、インクルーシブ領域についてはWebアクセシビリティからスタートして、さまざまな顧客の文脈に対応したサービスやプロダクトづくりをすることに注力している。SDGsでいうと環境問題や貧困にアプローチする機会もあり、サービスデザインの枠内で行政や自治体の方と協力して取り組んでいる。」と佐々木さんは述べます。
SDN(サービスデザインネットワーク)でのここ3〜4年のカンファレンスを見て感じるのは、サービスデザイナーもグローバルな地球環境問題にアプローチする潮流が増えていると感じる。また、サービスデザインにおいてもAIやデータ活用といった観点がますます重要になっている」と話しました。

これからのサービスデザインのテーマは「カルチャーをどうつくるか」

「これからのサービスデザイン」という最後の議題に対し、NEWh Inc. の神谷は次のように語ります。
「サービスデザインの領域はまだ広がると思う。サービスはモノとコトの複合体であるという整理があったが、コトの先にさらに『ムーブメント』があると思っている。ムーブメントというのは、例えばサービスによって社会をどう変容させていくのか、それによって自社のサービスもどう変容していくのか、というインタラクションのこと。ムーブメントまで踏み込んでデザインするというのは、一言でいうと『カルチャーをつくる』ということ。僕の壮大な夢としては、カルチャーをつくっていきたい。
すべてのサービスが社会をより良くする方向にシフトすれば、企業が社会や地球に与える影響も良いものになっていく。そのためにサービスデザイナーがいる。そういう考え方がロマンがあっていいなと思っている。」

モデレータの早川から「めちゃめちゃかっこいい結論が出ましたね」とのコメントのあと、Q&AとFree conversationでセッションを締めくりました。

まとめ

第3回目のDesign Saladはいかがでしたか?
サービスデザインの今とこれからについて、興味深い話題の連続でした。みなさんも新しい発見があったのではないでしょうか。
今後もDesign Saladはさまざまなゲストを招きながら展開予定です。次回以降の予定もぜひこちらからご確認ください。

また、Design Saladでは日々デザインの力を信じてUI/UXを突き詰めるデザイナーの皆さんのためのコミュニティも運営しています。こちらの参加を希望する方は、フォームよりぜひ登録をお願いします!(一部審査が発生します)

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