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NEWhのサービスデザインのこだわり

Sun*のグループ会社であるNEWhは、大企業の新規事業・サービス開発に特化したイノベーションデザイン&スタジオです。共創と伴走を大切に、これまで100以上のプロジェクトにワンストップソリューションを提供してきました。それらのプロジェクトのサービスデザインにおいて欠かせないプロセスがストーリー設計です。

本記事では、サービスデザイナー・石塚賢に、NEWhのサービスデザインのこだわりがつまったストーリー設計について詳しく聞きました。


ストーリーを明らかにし、紡ぐ

——NEWhのサービスデザインの領域、サービスデザイナーのチームについて教えてください。

戦略策定からMVPの定義、プロダクト開発、ビジネスグロースまでが対応領域です。これはSun*と同様なのではないでしょうか。

他社ではUXデザイナーともいわれる職能を持ったサービスデザイナーが、現在(2023年11月時点)、8名在籍しております。NEWh入社に至るまでの背景は多種多様で、非常に優れた方達が集まってくれていると感じていますね。

メンバーのケイパビリティの共通点として、大きく4つが挙げられます。1つ目が、顧客中心設計やデザイン思考的アプローチを軸としたUXデザイナーとしてのケイパビリティです。2つ目は、アジャイル開発に適したプロダクトマネージャーとしてのケイパビリティ。3つ目が、シナリオプランニングなどの手法を交えた市場未来洞察能力。そして最後が、事業戦略の設計・策定能力です。

この4つのケイパビリティを、サービスデザインの各フェーズで互いに影響を発揮させつつ活かしています。特に、NEWhのサービスデザインの特徴が表れているのが、市場未来洞察能力です。市場や事業の未来を思い描きながら、プロダクトやサービスのあり方を考えるアプローチを得意としています。

優れた市場未来洞察能力とともに、僕らは、ストーリーにフォーカスしてサービスデザインに取り組んでいます。ストーリー設計への姿勢が、NEWhのサービスデザインのこだわりと言っても過言ではありません。

——ストーリーとは、どのようなものなのでしょうか?

経営学者の楠木建さんの著書『ストーリーとしての競走戦略』に、“全体としてゴールに向かって動いていくイメージが動画のように見えてくる。全体の動きが生き生きと浮かび上がってくる。これが「ストーリーがある」ということです。”という記述があります。

まさに、僕らはここで言われている“ストーリーがある”状態にまで常に仕上げています。クライアントも含めたプロジェクトメンバー1人1人がユーザーの行動や課題などの一連の体験の流れを、体験ストーリーとして自分の言葉で流暢に語ることができ、そこから顧客に対する体験価値を魅力的なストーリーとして紡ぐことができる状態を目指します。

——なぜ、サービスデザインにおけるストーリーを重視しているのでしょうか?

各アクティビティで、“ユーザーは◯◯で困っている”という情報のピースを見つけることはそこまで難しくありません。ただ、見つかったそれぞれのピースを、関係性を見出さずに語ってしまうと、プロダクトの提供価値を損なったり、チームの共通認識のズレにつながりかねません。事業構想の整合性を見出せない場合もありますね。そういったことを回避するために、ストーリー作りが重要なんです。

もし、「“パンを焼く”ストーリーを描いてください」と言われたら、どのようなイメージを思い浮かべますか?そのイメージは、絶対に、ほかの方と同一のものとなっているでしょうか?これは、クリエイティブディレクターのトム・ウージェックが著書『厄介な問題を解決したい?ではトーストの作り方を説明してください』で紹介している実例です。

動詞と目的語という単純な組み合わせのテーマでも、同じイメージを思い描くことは極めて難しいんです。ある人は小麦粉の採取から描き、ある人は食パンをカットするところから描きます。また、思い描く人の人種によって、トースターを使うか、フライパンを使うかも異なるでしょう。ストーリーを作り、共有することの意義がよく伝わる実例です。

複眼で体験をあますことなく描き切る

——ストーリーはどのように作られるのでしょうか?

ストーリー設計のアプローチ例を図解してみました。特にサービスシナリオ作成、ユーザーストーリーマッピング、タスクシナリオ作成がストーリー作りのポイントとなるアクションです。

——サービスシナリオ作成について詳しく紹介してください。

僕らは、共創で作っていくことを大事にしているので、サービスシナリオも共創しています。

シナリオは一人でも作れるんですよね。けれど、NEWhでは、お客様(クライアント企業)のメンバー複数人にそれぞれシナリオを作ってもらい、それをサービスデザイナーが統合・編集する流れを採用しています。

同じテーマで個人がそれぞれシナリオ作成をする工程が非常に重要だと考えているんです。映画監督の黒澤明は、脚本家を複数人集めて、共同で執筆し、一番良い脚本をシーンごとに採用するという手法を用いていました。同一のシーンを複数の人間の眼(複眼)で書き、それらを編集していたんです。

複数のシナリオから統合する方が、顧客体験として抜け漏れがなく、高い品質を担保できます。このやり方は、タスクシナリオの作成でも基本的には同じです。

デザインペルソナを基に、メンバーそれぞれが落語家のようにユーザーの行動を語れる状態にします。そして個人ワークで、ユーザーの行動を考え、シナリオとしてサービスデザイナーに渡します。

このシナリオは、魅力的でないことがままあります。しかし、ポイントごとに魅力的な部分があるので、それをサービスデザイナーが拾い上げて、一本のストーリーとして仕上げていくんです。統合・編集作業では、ユーザーのインサイトやプロジェクトにとっての新しいポイントが盛り込まれているかを意識します。

サービスデザイナーとして複数のプロジェクトに参画していると、インサイトのトレンドが察知できるようになると感じます。そういったトレンド感、インサイトとしての新しさは、ストーリーの魅力に大きくプラスに働きますね。

——ストーリーで重要な要素はありますか?

もちろん5W1Hが明確である必要があり、その上で、特にWHOとWHYが肝心です。ターゲット、主体となるのは誰か、そして、その主体はなにをしたいのか。それを常に問い続けています。WHOとWHYの要素を、ほかの2W1Hで補足します。

ナレッジを共有し、次のお客様へ還元する

——お客様を巻き込んでの共創をスムーズにするため、工夫していることはありますか?

僕らは、クライアントの皆さんのデザインワークへの何かしらのコミットをお願いしています。クライアントの皆さんと共創する効果効能として、多様な視点を組み込んだデザインが可能になることや、共通認識構築のスピードアップがあると考えています。

また、共創のハードルを低くする工夫も盛り込んでいます。たとえば、ワークショップをする際に、“あとは情報を付箋に描いて、貼っていくだけ”の状態まで用意したり、「どんな些細な情報でも役立つので、書き出してください」と声かけをしたり。

なにより大切なのは、僕らの姿勢なのかな、とも考えています。普段から正直に意見を交わし、忖度をしないことで、お客様が「この人たちは本当のことを伝えてくれるぞ」と受け取ってくださり、積極的アクションに転じた経験が多々あります。

——NEWhには、これまでの実績を通じて、ストーリー設計のナレッジが豊富にあると思います。どのような形でそれらを社内で共有していますか?

プロジェクトで得た知見を体系化するのが得意なメンバーが多く、ストーリー設計のツール開発も行っています。事業構想の整合性を可視化するためのバリューデザイン・シンタックスや、お客様の強みを可視化する活動システムマップなどを開発しました。

活動システムマップでは、優位性や優位性をもたらす活動、源泉となる経営資源を書き出し、それらの点を線でつなげることで、お客様の強みがストーリーとして浮かび上がってきます。

Sun*では、共通言語として“Sun*のデザイナーが持つべき態度(Sun* Designers Attitude)”を定めていますよね。ストーリー設計ツールの開発は、Sun* Designers Attitudeの中にある“驚きを想像することを諦めない”のコミットにつながっていると思います。いままでにないやり方、他社では挑戦していないやり方を常に模索しているんです。また、“挑戦するためにチームを作る”も、NEWhというチームらしい姿勢ですね。それぞれが得た知見をメンバーへと還元するため、フレームワークやデザインプロセスを積極的に生み出して、どんどん活用しています。

チーム会もナレッジ共有の良い機会となっています。チーム会は、困り事や相談を話し、その解決策を参加者で見つけ出すことを目的としているんです。毎週、メンバーが交代でブログを更新しているのですが、なかなかハードルが高い。でも、チーム会の場で、課題を解決したり、ゴールに向かって動いたりしていれば、その工程が自然とナレッジの共有になります。

——NEWhのサービスデザインのこだわりや、それを遂行するチームの様子が伝わりました。ありがとうございました。


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