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ChatGPTのもたらす大きなモメンタムエンジニアの開発体制やキャリアの未来はどう変わっていくのか

ChatGPTの登場は、エンジニアの業務や開発体制に大きな変化をもたらしています。

実際の活用事例や将来的に開発組織にどのような影響があるのかについて、StartupTechLiveでは「ChatGPTによってエンジニアの開発体制はどう変わるのか?」というテーマのもとでイベントを開催。

業務でChatGPTを活用している各社をお呼びしてパネルディスカッションを実施しました。

前半記事(1/2)はこちらからご覧ください。

▼登壇者
末永 昌也(株式会社グロービス VPoE)
金子穂積(株式会社Sun Asterisk CTOs)
西尾 拓也(オシロ株式会社 リードエンジニア)
増井 雄一郎(株式会社Bloom&Co. CTO)


100年後にはエンジニアが5%になる?

末永:色々とディスカッションしてきましたが、「今後の開発体制にどのような影響がありそうか?」というトピックに移って、もう少し議論を深めていきたいと思います。

増井:この話をするときに、以前一度調べたことがあるんですけど、今から100年前は日本の人口のうち7割が第一次産業だったんです。それが今では3%しかいないんですよ。でも、生産量は500倍に増えている。一人当たりの生産量で言うと、単純に500倍増えているわけで、農業という分野では100年で起きたブレイクスルーなわけです。それはコンバインの機械化や農薬の開発、流通網の整備など、いろんなところで起きていますが、たぶん同じようなことがIT業界でも起こると思うんです。

今のエンジニアが生き残るのは5%くらいで、その人たちだけで今よりもはるかに多い量が生産できるようになり、それ以外の人は他の仕事に従事するようになる。農業で言えば、新規就農がどんどん減っていて高齢化し、若者が農業を選ぶ機会も少ない。ただ、農業だった人がそんなに辞めているわけではないんですよ。

これと同じような状況がIT業界でも起こる気がして。僕らはずっとコードを書いているわけですよ。でも、これから若い人がどんどんエンジニアにならなくなって、僕らはその5%くらいのエンジニアとして、GPTをもとにコードを書き続ける世界になるんじゃないかと予想しています。

末永:歴史から学ぶのは大事だし、世代が変わるというのは結構大きいなと。

金子:プロンプトの話でもそうですが、やはり色々と作るには経験値が重要だったりするので、コードも経験値のある人の方が、当然ながら深くレビューできるわけで。GPTが書いたようなコードの精査も、経験値の多い人の方が有利なのは事実だと思います。課題としては、これからの若手がどうなるかという部分だと思いますが、この点について西尾さんはどう思われていますか?

西尾:私も若手と呼べる年齢ではないんですけど、今の若い20代のエンジニアはすごく大変なのかなと思っていまして。先ほどもGPTが教育に使える話とか。何度聞いても嫌な顔せず答えてくれる話とかありましたが、私の場合は経験者がGPTを使ってどんどん生産性を上げて、一人でさらに成長していくのではと感じるところもあります。

そういう観点では、未経験やポテンシャル採用でも、本当に何かないとエンジニアになること自体が難しくなってくるという考えも持っています。

増井:食とITで最も違うのは「1日の消費量に限界があるかどうか」ということなんです。食べることに関しては限界がありますが、システム化するという意味では、プログラムはいくらでも消費できるんです。僕が話した将来エンジニアが5%になる可能性はありつつ、逆方向で圧倒的にIT化が進んでいき、自動化がものすごい速度で全体に進んでいく場合、エンジニアの仕事は膨大に増えるんだけど、実はそれによって他の仕事がなくなっていく可能性もあるんじゃないかと考えています。

プログラマーの生産性が上がれば、例えば3,000万かかっていたのが30万でできるようになると、今までできなかったDXが可能になったりと、ITが使われるケースが膨大に増える可能性は十分ありうると思っていますね。

末永:100年後にはエンジニアが5%になるかもしれないですけど、直近では逆にエンジニアが他の業界を変えていく可能性があるわけですね。

増井:ノーコードツールもこの先、もっと賢くなるだろうし、それこそマクロを書かなくてもExcelのCopilotで簡単にデータ分析できるようになるでしょう。エンジニア未満の仕事がまずはAIに置き換わってくると予測しています。

金子:これからインターネットがどんどん進むので、ソフトウェアよりもハードウェアで何かをやるというスピードも上がってくると思っています。ただ、ハードの場合は、人間がタッチするなど、何かしらのアクションがないと確認できないので、そういった意味ではソフトウェアじゃない、ハード寄りのところで、エンジニアがアクションをチェックしたりするような仕事が増えていくのではと考えています。

ChatGPTを使うことで少人数でも高効率な開発体制を作れる

末永:もうちょっと近い将来を考えた際に、登壇者の皆さんはどのような所感を持っていますか?

増井:先ほど5倍くらい生産性が上がったと言いましたが、この2ヶ月間くらいで自分のツールを作ってから、そのツールをもとに作ったプロダクトがいくつかあるんですけど、おそらく合計で書いたコードは数百行くらいだと思うんですよ。これはプロダクションではなくPoCで社内ツールを作っているんですけど、それに関して言えば、圧倒的に生産性の高さを感じています。ただ、これをプロダクションにできるかというと、まだちょっとそこまで信用できなかったりスケーラリビティを考慮してくれと言われると厳しかったりします。

僕の経験上、アーリーアダプターの人に流行ってから一般の人に落ちてくるのに大体5年くらいかかると思っていて。早くて3年、長くて5年と考えると、ChatGPTは3年くらいで一般層に落ちると見立てています。

そうした前提のもとで話すと、3年くらいで社内ツールやPoCのツールを作るためにコードを書くことはなくなり、8~9割はAIによって生産される世界はほぼ確実に到来するだろうなと思いますね。

金子:増井さんの生産性が5倍に上がった話はすごいなと思うんですけど、今後は開発体制が大人数じゃなくても回していけるのではという部分にフォーカスしていきたいと考えています。どれだけの少ない人数でパフォーマンスを出せるのかというのは、ちょっと見てみたいなと個人的には思っています。

また弊社の場合、アジャイルでプロダクトを作るパターンもありますが、ベトナムと日本で開発を進めていく際に共通のドキュメントを結構作ったりするんです。そのドキュメントベースで物事を進めるので、そのドキュメントのところからGPTを使えば、それこそテストコードみたいなものも生成しやすいと思っています。

なかなかテストドリブンな開発って、やりづらい部分もあったんですが、今後はそれもしやすくなるかもという期待もありますね。やりたいことのコンセンサスがとれ、シーケンスからしっかりテストコードを書き、そこから実際のコードに流れる。こういったことがちゃんとできるようになるかもしれません。スモールでかつ本当に信頼できるプロダクトづくりに注力できる体制に変えていきたいですね。

末永:ChatGPTが登場したことで、現状のコードの状況を理解するのが簡単になり、今よりも少人数のチームで高効率な開発体制を作れるかもしれないですね。

増井:そういう意味では、極端なことを言えば人と人が話すこと自体もなくなるのではと思っていて。LLMと話すことで、いい感じにまとめてくれ、物事がスムーズに進むようになれば、もう2度と人間と話さない可能性もあるのでは感じていて。まあ、今すぐではなく100年先になるかもしれませんが。

西尾:現在のスタートアップ界隈では、「たくさんエンジニアを採用しよう」みたいな雰囲気になっていますが、そこがもう少し「質」にフォーカスされるのかなと思っています。また、先述したようなマイクロサービスが増えると面白いのかなと考えたりします。チャンスがあれば、課題の解決策として、GPTをマイクロサービスに活用したいですね。

スケーラリビティの難しさも、ある程度クラウドサービスに頼ればできる気がして。そういったところも踏まえ、いろんあマイクロサービスを組み合わせて開発していける体制になれば、もっと面白くなってくるのではないでしょうか。

これからエンジニアの「質」も考え方や定義が変わってくる

末永:それで言うと、今後エンジニアの質についても、考え方や定義が変わりそうですね。GPTによってスキルは学習しやすくなりましたが、その上でどんな観点が大事になってくるのでしょうか。

増井:結局は「AIに置き換えられないのはどこなのか」という話だと思うんですよ。そういう観点では、やはり発想力や選べる力はすごく重要だと感じていて。というのもオプションが死ぬほど出るんですよ。AIがいくらでもアイデアを出してくれるので、その中で決めなくてはならないことを決めるためには発想力が必要になる。

先を読む力というのは、経験でしか得られないものであって、AIによって出力されたオプションの中から自分の意思で最終的に決められる力は、今後かなり求められてくるでしょう。あとはひたすらテキストを読む国語力もあらためて重要になってくると思います。

末永:セッションの最後に、一言ずついただいて会を締めていければと思います。

増井:生成AIが出てきたことで、すごい面白い時代になったなと素直に感じます。1年前にこんな世界になるとは想像もしていなかった。それが今では、人よりもChatGPTと話す方が圧倒的に多くなっているんです。いわゆる大きくジャンプするときって、以前はiPhoneの登場の頃だったと思いますが、何かが伸びる時に自分も一緒に成長できると、結構楽についていけるんですよ。このタイミングで、みんながキャッチアップしていけば、いろいろと世界が広がっていくと思います。

西尾:ChatGPTの登場で、日常的に技術検証するときも使うようになったりと、可処分時間が増えたなという感じがありますね。

金子:僕自身もRuby on Railsが出たタイミングで、エンジニアになった人間で、「Rubyが書けるといろんなことができる」というワクワク感を抱いた記憶があります。まさにChatGPTはそれと同じ感覚なんですよ。技術的にわからないことも、ChatGPTに聞けばすぐに答えてくれる体験も、結構ワクワクしていて、正直話し出すと止まらなくなるくらい、ChatGPTと話す機会は増えています。

1年後どうなるかわかりませんが、ふわっとした言語化しかできなくても、GPTがうまく咀嚼してくれ、最適なアウトプットを出してくれる世界が、早ければ1年後に来るかもしれない。

そう考えたときに、今のうちからGPTに慣れておいて、素早くアジャストできるように準備したいなと考えています。


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