ディマンドウォーターフォールって何?

最近、以下のような声を良く聞く。

マーケティングの施策の成果がわからない

コロナをきっかけにメルマガやウェビナーを始めてみた。一定の手ごたえは出ている。ただ、手探りで始めたので、これでいいのか、悪いのかがわからない。

そもそも、KPIが設定できていない。あるいは、KPIも自己流で設定している。これでいいのかわからない。

マーケ活動が受注に貢献できているのかわからない。

あるいは、もう少しデジタルマーケティングの取り組みが進み、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスという欧米型のモデル(いわゆるザ・モデル型)にシフトすると、マーケのリードにアプローチしても、全然アポイントが作れない(インサイドセールスの悩み)、インサイドセールスのリードにアプローチしても商談にならない(営業の悩み)が現れる。

課題は現状の可視化ではないか?

私が、これらに共通する問題点だなと思うのは、「施策先行」でB2Bマーケ
をしてしまっている点である。ウェビナーが最近流行ってる、うちもやってみよう。競合がメルマガ始めたらしいぞ、うちもやった方がいいんじゃないか。ザ・モデルがいいらしい。うちもやってみよう、etc、etc。

しかし、本来必要なのは、施策をやる前に現状をきちんと把握する事、特に、B2Bマーケティングおいては、保有しているリードの状態を可視化する事が重要なのである。要するに、自社の保有リードのホット度合い、見込み度合いの可視化である。

リードの種類別の見込み度の違い

B2Bマーケを始めた初期の頃は、名刺の取り込みからスタートする。営業名刺を取り込んだ直後では、名刺(リード)の温度感はわからない。数年アプローチしていない人も居れば、直近商談をしているお客さん(過去商談客)、契約済みの顧客、あるいは、契約したものの他社に流れてしまっている顧客など様々なリードが混じって存在している。

数年アプローチできていないリードと、半年以内に商談をしたお客さんでは、見込み度合いが変わってくる。上記の例であると、見込み度合いの高さを順番に書くと、1)契約済みの顧客、2)過去商談客、3)他社に流れた客、4)未アプローチ客となるだろう。

こうしたリードの状態を把握したい、あるいは、リードの状態に合わせて、マーケティング活動を適切に実行し、結果を計測していきたいというのは、マーケティングをやっていくと、必然的にたどり着くニーズである。

デマンドウォーターフォール(Sirus Decision社)

そのような時に参考になるのが、ディマンド・ウォーターフォールという考え方である。(※米国の旧Sirus Decision、現Forresterの一部門が開発した)

ディマンドウォーターウォールというのは、判りやすく説明すると、リード(見込み客)の関心度・ホット度合いを元に、リードを分類分けし、リードが時間とともに成長する姿を図示化したものだ。上から下に落ちていく形で図が描かれているので、ディマンド・ウォーターフォールと呼ばれる。

海外では、このようなフレームワークを使って、MAやSFAのリードのプロセスの定義、経営に向けたKPIのレポーティングを行うのが一般的だ。そして、営業との間では、このデマンド・ウォーターフォールの考え方に基づいて、営業・マーケティング間でのサービスレベル・アグリーメント(SLA)と作成していく。これは、各セールスステージにおいて、どのようなアクションを取るのかを決めていく。

冒頭に話した、マーケ施策の成果が可視化できていない、次に打つべき施策がわからない、とうのは、このディマンドウォーターフォール型でリードの状態を把握すると解消する。

ざっくりと言うと、受注を増やすためには、SQLを増やさないといけない、SQLを増やすためには、MQLを増やさないといけない、という数字の因果関係が作れるからである。

Demand Waterfallの変遷

ただし、実は、このSirus Decisionのディマンドウォーターフォールは、時代とともに変遷がある。最初に2002年に発表された後、2012年に最初の改訂が行われ、2017年にももう一度改訂されている。先ほど紹介したのは、2012年バージョンである。

その後、改定されたのが以下のファネルだ。改訂の背景としては、買い手のニーズに合わせたGTM(Go-to-market)戦略の必要性、Predictive analyticsなどのテクノロジーが発達し、リードの購買意図(buyer intent)が測定できるようになったこと、リード単位でとらえるよりも、アカウント(企業、企業の取引窓口)単位で見るべきだという考えの高まりがある。

その後、このモデルを開発したSirus Decisonは、Forrester社(IT業界の人はおなじみだと思う)に買収され、Forresterは、Demand Waterfallではなく、Revenue Waterfallというように、名称を変えてアナウンスしなおしている。直近では、新規獲得と、リテンション、アップセル、クロスセルも含めた形のフレームワークとなっている。

このように見ていくと、リードのステータス把握をするためのステージの定義や、既存客か新規かを判別する必要性、リテンションなのか、アップセルなのか、クロスセル(別部門展開)なのかを把握する必要性も理解できてくる。

Revenue Waterfall/Demand Waterfallで気付く事

こうなるとSFAとMAでしっかりとフィールドが定義されており、情報連携が出来ていて、正しくレポートが(理想的には自動で)吐き出せる形になっていて、週次でこの数字をレビューする事が理想である事が理解されてくる。

ここまで来ると、数字として欲しくなるのは、リードが各段階にどれ位あるのか?次の段階に進む割合は?(MQL to SQL率など)次の段階に進むまでに必要な平均時間は?この次の段階に進むためのスピード感に関しては、Velocity Rateという考え方もある。

この辺のKPIの話は、とても奥深く長くなってしまうので、今日のところはいったんここまでとしたい。

BtoBマーケティングを成功させるためには

今日お伝えしたかったのは、BtoBマーケを次の段階に勧めるには、リードの細かいステージ分けをする必要がある、その時には、Demand Waterfallないしは、Revenue Waterfallを参考にするとよい。

いつも、BtoBマーケ支援をしていて常々実感するのが、BtoBマーケは、会社によって千差万別であるという事、そして、その千差万別であるのは、BtoBマーケの対象になる製品・サービスが多岐に渡る事である。億単位、数千万円単位の商品・サービスであれば、セールスサイクルが数年単位になるかもしれない。数十万円のものであれば、セールスサイクルは1-2か月かもしれない。これらを同一視してマーケティングをする事はできない。

セールスサイクルが長い場合には、見込みリード(MQL)が商談(SQL)になり、受注するまで当然ながら長くなる。期間が長いということは、マーケティング施策が受注にどう貢献しているのか、というのを示す事が難しくなるし、その長い期間に渡って、適切なリードに適切な情報を届けるのが難しくなる、とう事でもある。

B2Bマーケにおいて肝だなと思うのは、売りたい商材の典型的な購買サイクルがどうなっているのかを把握し、顧客の検討プロセスに応じて、コンテンツやアプローチ方法を変えていくという事である。

検討プロセスを適切に管理するには、MAやSFAはしっかりと設定されていて、レポートで分析が出来ていないといけない。

また、顧客視点で理想のマーケティングって何だっけと考えると、自分の関心事に合わせて、適切なタイミングで適切な内容を届けてもらう事だなと自然と理解される。このように考えていくと、結局、大勢に向けた1:nのマーケティングというのは、そもそも存在しえないのであって、理想は、1:1のマーケティイング、せめて、1:fewのマーケティングをしないといけないという事がわかる。1:fewのマーケティングを人力でやるのは不可能だから、結局、テクノロジーを活用する事になる。

だから、B2Bマーケティングに取り組む人には、お客様にとって最高の1to1マーケティングを実現するんだという理想と気概を持って取り組んでもらいたいし、マーケティングオートメーションを導入する時も、「便利そうだから」、「他の会社も入れてるから」、とかではなく、自社にとって最高の1to1マーケティングは何かを追求するために入れてもらいたい。

コロナで色々な会社がウェビナーをやり、メルマガを送り始めた。その多くが、顧客の関心を無視したもので、メルマガの「配信停止」になるのは、時間の問題だ。そろそろ、売り手目線のマーケティングは卒業するべきだ。1:manyのマーケティングには、未来が無いのだから。

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