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短歌 作品

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つくった短歌の一部です、ときたま思い出したように更新します よかったら感想おしえてね!
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#連作

陽射し 【短歌五首連作】

誰も彼も高校球児経てしまうような陽射しの神宮球場 めろめろのオープンハウスの広告が東大生に染み込んでゆく 前世からようやく呼ばれる名前だね追わねばならぬ白球ひとつ 顔面を野球にぴったり貼り付けるための根源的努力あり 増えてゆく明治大生だった人 守るしかない七回しずか

大恋愛記 【短歌五首連作】

すりきれるまで響かせよ恋と薔薇 大きく腕はふりまわしなさい 聴かせたい、麒麟のような眼をしてたきみが知らない真夏の曲を 風が耳を千切ってしまった幕開けのわたしときみの大恋愛記 青春が夏風に乗り駆けぬけて映画を一日四本観たい 心臓にひかり伝ってゆくような恋だと思うあなたに会えば

デキャンタ 【短歌五首連作】

年末年始の空気がいちばん好きだ。このままずっとみんなが浮かれ歩いて、どの店にも琴の音楽が流れていればいいと思う。今年も食べたことのないものを食べて、会ったことのない人に会い、知らない場所をたくさん訪れたい。 お正月の短歌連作を書きました。 ■ 十二支の吐く息みちてたれさがる桃の赤味のやや強くなる ひたむきにきらめき志向やもんなあデキャンタひとつおねがいします 鳥は花の蜜を飲むのよたましいの発育にいいと知っているから 遊牧をいまだ続ける人々が青いベンチのカラオケ映像

千年 【短歌二十首連作】

めずらしく寿司を手で食うひとといていまどきめずらしいなと思う 桟橋は弱った人をひきよせる銀のぬめりをひけらかしつつ カーペットのない部屋に住む友人の家で地べたが硬すぎること アルコール濃度は赤くたかまって指は揺れれば革命家めく のろのろときみは膝から立ち上がり別れの言葉に廊下がのびる 引き分けねらいで訪れている ほら、ご覧 歯医者も花の世話をわすれる ハンバーグ寿司でも食べにいきましょう喧嘩腰でもたずさえながら 公園に褒められて伸びる子どもたち、あるいはそうじゃ

鴨鍋 【短歌七首連作】

鴨鍋はまきもどされてとぼとぼと鴨が神話をしょってくる景 満天の星がうらやむ祝言にほてってやまない眼が並んでる 懺悔懺悔六根清浄やまびこはいまだいまだにまぐわっている なまもので皿は一面ぬるぬるに生き血を吸ったりするわけないよ あおくびをこっくりゆらすみたことがあるかい恋は絶壁である よく来たね 花をあふれて嬌声をあげながらゆくこの世の川を 一匹がはぐれて泳ぐ でも君ははぐれていないと思っていたわ □ 2023年11月に行われる文学フリマ東京で頒布予定の本にもこ

運転免許証 【短歌七首連作】

運転免許証 どんなにか輝くだろうわたくしにまだ生まれえぬ運転免許証 話し足りないままだけど外国に晩杯屋ってあるんかなあ ぜったいにさわらないから宿すまでとうもろこしがとうもろこしを 落椿をきみがはじめて撮るときのいつか神話になる瞳だね わかるんだ燃え移るように手を取って昔見た琵琶湖を話してよ 大きな声をはりあげたくてもうずっとひとりぼっちの噴水のため 観覧車ひろびろまわる少しだけ遅くなるよう心で太る □

おへそ 【短歌五首連作】

おへそ 海にいて朝焼けを見る ほんとうに朝と私と海だけがある たましいの重さの限り眼をつぶる母のおへそをつらぬくように 些細な声も手放せないねふるさとの位置も確かになってしまうね 会いたいひとがまだ生きている世界にはなるべく器をふやさなければ 朝焼けのなかを歩いて毛があってもおかしくはない手の甲ゆらす □

昼食を忘れる 【短歌七首連作】

昼食を忘れる 流星群ふりまわしている手のひらに危うく息を盗られてしまう 歩きタバコで近づいてくるお兄さんの完全版の死がありました 丸腰でペルセウス座にも勝てます、いまのわたしの体調ならね 昼食を忘れることを信じられない気持ちを恥じつつあなたと話す 口角からひかりあふれている人よ 真夏のこけらおとしはすぐそこ 久しぶりに風に吹かれて思い出す聴いてた曲の大きなサビを 朝五時の夏の明るさコンビニの前に男女がまだ座ってる □ この連作は歌会ピオーネのフリーペーパー『

反芻 【短歌五首連作】

『反芻』 せやねんなの扱い方を正された動物園の記憶まぶしく おそらく罠とおもうのだけどとてもとても野薔薇のような横顔をくれる 三月は風が生まれてくるために編み込みのある揺りかごの形 駅前に大きな噴水が有ったから瞳をうしなわなかったそうだ ためらいなく真っ直ぐと立つ牛のような動物がいる 反芻燃える

顔面 【短歌五首連作】

ひとりになれば案外冷やし中華など食べないことの大きな川だ 全身がユニクロだけど下着だけは無印良品みたいな感じ ひっそりと昼夜逆転なのだったハムスターでも飼いたいのだった 桜の葉はりつけてゆく顔面のそれはもうねぇまばゆかろうて 冷凍の米をぴかぴかチャーハンに変えゆく時はいつもうれしい

葉書の光 【短歌八首連作】

『葉書の光』 あ これはたぶん秋やなぁ 濡れている稲の香りが綴じられていて 絵画のある場所にめがけて悪気なくお前もお前も産まれてしまう バイオリンの絶叫がまた挟まった なにか降りそうに夕暮れの中 不確かとつぶやく、横目にグッピー、ふたしか、声はまたぼやけつつ 一年に一回くらいは溜まりっぱなしの隅の埃に触れ、確かめる ふるさとに無い存在は際立って 濃い白色のケトルの背すじ 祖母からの電話をとらず眠るたび僅かに足の指が浮き出る 選ばない言葉を奥へしまいこみ葉書に光