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北海道紀行 壱日目 知床ウトロ編

旅立ち

「自分探しの旅に行くって人は見るけど実際探して帰ってきた人ってみたことないんですよね」

アドリブに定評のある当時好きだった俳優が放ったひとこと。シナリオとまるで関係のないそのセリフに客席はどう反応していただろうか。何の気なしに笑って聞いていた数年前の自分が今の私を見てどう思うだろう.

大学二年生。適応障害によりほぼ授業を受けられず、すでに4年での卒業が危ぶまれる中、私は安直にも自分探しの旅を決行することにした。

ミレーリュック

相棒はミレーのバックパック。自分探しの旅に優雅にキャリーケースを引っ張っていくわけにはいかない。30年前自転車で北海道を周った父のおさがりを背負って女満別へと降り立った。

北の大地は免許を持っていない人間に厳しい。旅は総じて公共交通機関の時刻表に振り回されるものとなった。

​フレぺの滝

女満別からウトロまでバスで行き荷物を置いて向かったのはフレぺの滝だ。40分ほどで一周できる遊歩道とのことだったので軽い気持ちで向かったが大満足の場所だった。森というよりは草原の中を歩く時間の方が長そうだったが、実際木々の中を歩いている時間と開けた場所を歩いている時間は半々くらいだ。

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売店で熊鈴を購入し遊歩道へ向かったが思いの外うっそうとしていた。3日前にヒグマの親子が目撃されたそうだ。何を隠そう私はヒグマが地球上の何より怖い。昔Wikipediaで日本の獣害事件を読み漁ってからヒグマが怖くて仕方ないのである。入口付近ですでに帰りたくなったがこんなことでは自分は見つからないぞと自分を鼓舞し足を進める。途中何度が立ち止まっては音がしないか確認をしてまた歩く。正直自然を楽しむどころではない緊張感だった。

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20分ほど歩くと突然視界が開けた。あまりの絶景に思わず息をのむ。薄暗い森からの解放とクマへの緊張からの解放が相まって何とも言えない爽快感だった。運がいいとシカが見れるらしいが残念ながらシカには会えず。フレぺの滝自体は角度的に上からのぞき込んでもあまりよくは見えなかった。滝の全は次の日のクルーズ船で海から見たほうがよく見えた気がした。とはいえフレぺの滝は40分ほどの遊歩道で知床らしさを満喫できる。知床に来たら外せないスポットだろう。

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オロンコ岩とゴジラ岩

ウトロ市街地へ戻ってまだ少し時間があったのでオロンコ岩へ上ることにした。ゴジラ岩を通り過ぎオロンコ岩の階段に足をかけた瞬間後悔した。これはかなりきつい。登る距離自体は大したことないのだが階段一段がかなりの高さがある。一応大学の体育会系運動部所属としての意地で休まず登りきった先には約束された絶景が広がっていた。

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頂上にベンチがないのがしんどかったが、そんな無粋なものはなくて正解だろう。周りをカラスはカモメが飛び交っておりうるさいくらいだった。ゴジラ岩も下から見るより遥かにゴジラらしく見える。

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ゲストハウスにて

1日目の観光が終了してゲストハウスへ向かった。自分探しの旅といえばゲストハウスでの交流も醍醐味の一つだろう。ワクワクして向かったがなんと他の宿泊客は4,50代の男性一人だった。少し拍子抜けだったが気さくな男性で助かった。まるで似合わない甘いサワー片手に晩酌に誘ってくださった。酒もつまみも用意してくださり酒盛りと洒落込む。奇遇にも住んでいるところが近いこともあり話は弾んだ。後日男性のインスタでは酒豪馬術部女子大生と紹介されていた。身元がばれそうで怖い。

ウトロ編はまとめて書くつもりだったが長くなりそうなので分けることにする。次回は知床五湖、クルーズ船編だ。



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