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妻が初めてプラモを作った日

  妻と出会ったばかりの頃、ちょうどガンプラの一番くじが開催されていた。プラモデルにはまったく興味のなかった妻だが、くじを引くのは楽しそうと一緒に近くのコンビニまで行くことに。到着早々一番くじを引くスナガガだが、その欲まみれの手ではプラモデルを掴み取ることはできず、あろうことかズゴックの同じ絵面の小皿を2枚手に入れる嵌めになってしまった。

   それをみかねた妻が「私に任せろ」と一枚追加でくじを引く。そして引き当てたのが、エントリーグレードのG3ガンダムだった。くじを当てた興奮と喜びで今から作ろうとはしゃぐ2人は、すぐさま家にとんぼ返りし、制作に取りかかった。妻はプラモデルを作ったことがないとは言え、相手はエントリーグレード、バンダイのプラモデルで最も簡単なランクの製品だ。それほど難航することも無いだろうと、とりあえず一番完成を実感できる頭を妻に作ってもらうことにした。しかしその判断が、失敗だった。
  エントリーグレードのガンダムの頭部は少し複雑で、なるべくシール貼りや塗装をしなくとも成形色だけで色分けできるように作られている。それは逆に言えば、多くのパーツが入り組んでおり、組み立ての複雑さによる間違いと、ランナーの切れ跡などの干渉があれば、素直に組み立てることができないというわけだ。案の定、妻も苦戦し最終的に力技でガンダムのV字のアンテナをはめ込もうとした瞬間、ポッキという音とともに悲劇が起きた。アンテナが綺麗に折れてI字型になってしまったのである

   とは言え、アンテナぐらいタミヤセメントで簡単に直せるのだが、折ってしまったという心のショックは意外と大きいもので、妻の中でプラモデルは苦手なものという認識となってしまったのだ。結局最後まで作り切ることはなく、スナガガ一人でほとんど完成させてしまったのである。

 それから5年後、プラモデルから離れていた妻が、ある日ヨドバシカメラで1つのプラモデルを作りたいと言い出した。それが「ちょいプラ みかんかっぱ」だった。可愛いらしい見た目と、直感的に組み立てたやすそうなパーツ、そしてドデカイ頭のくせに自立するその姿が、妻を魅了したようだ。

  ランナーの少ないちょいプラは、全パーツを把握してから作り始めることができたのか、パチ組だけなら15分もかからずに無事完成した。妻が初めてプラモデルを触わった時から約5年の時を経て、ついにプラモデルを完成させる事が出来たのである。そして現在、妻は「みかんかっぱの甲羅をネイルの塗料で塗ってやる!」と息巻いている。

  プラモデルという趣味は、結構困難が多い。きっとそれを超えるには本当に作りたいものを作っているかどうかが重要なのだろう。幸い今日ではへんてこなものからマニアックな物まで幅広いプラモデルをメーカー方々が作ってくださっている。作る側も、そのなかのいろいろなものに挑戦し、発信していく方がことがもしかしたら、プラモデルへの間口広げることになるのかもしれない。とりあえず今は妻の思い描いたみかんかっぱが完成することを祈りたいと思うスナガガでした。


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