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第5章「自分を見つめる」

6:26発の電車

人はまばらで、きっと朝練に向かう野球部の高校生とすれ違う。

いつも通りの平日の朝

仕事へ向かう人々の目線は、手元のスマホに落ちる。

そんないつもを見ながら、目頭が熱くなる2024年6月27日の朝

この景色は、昔から変わらなくて、静かで、鳥とかが鳴いている。

JRの車内の匂い、青くて横向きのシート、きっとそこまで高くないスーツの会社員

窓の外の景色は、山と海と高くて2回建ての建物


転勤前に、弾丸で1日半だけ帰省していた。

引っ越し準備で時間もお金も結構カツカツだったけど、それでも会いたかった。

特に何をするでもなくて、自由な時間に起きて、それぞれ好きなことをして、なんとなく一緒に近所のスーパーへ行って、一緒にご飯を食べた。

そんな時間は当たり前で、何も特別さはないけれど、いや本当は本当に特別だった。

家族全員いつの間にかお酒が飲めるようになり、みんなちゃんとビールが好き。

円高円安について、熱く語る父とどうにか理解しようとする妹と、半分聞いて半分聞いていないニコニコする母と私。

実家に住んでいた時は、みんなが揃ってご飯を食べることに特別さは無くて、お腹が空いたら先に食べている人もいた。

今は、どうにかこの特別を作り出そうと、みんなが揃って、集まっている。

だからなんだってことはない

そんな今日。


ここにいたこと、ここで生きていたこと、愛されていたこと、変わらず愛し続けてくれていること。

その時はなんとも思っていなかった日常が、こんなにもあたたかくて、大切な思い出だったことに気づかされる。

そんなあたたかさがいつまでも変わらずそこにあるからこそ、今を必死に生きていられる。


今日から、また新しい地に身を置くことになる。

偶然の、予想外の、3年前は全く思い描いていなかった場所。

そこにどんな出会いと経験と景色があるんだろう

人生のどんな彩りになるんだろう。

大きな期待と少しの不安と、ほとんどがわくわくした気持ちで、揺られる車内。

朝からぼろぼろと涙を流しながらスマホと外を交互に見つめる私を、物珍しそうに見ている豊橋のサラリーマン、ちょっと見過ぎです。

そろそろ乗り換え

新しい毎日が、きっと楽しくなりますように

きっと楽しくする

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