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【読了】『シャーロックホームズの凱旋』

 この度、ついに『シャーロックホームズの凱旋』を読了しました。

 率直な感想を一言で申し上げると、「不思議だなあ」ですかね。
 気が付くと、異世界で彷徨っている。まさに〈東の東の間〉であります。
 だが、それが何だか心地よい。森見登美彦の不思議な世界観に振り回され、首を傾げ、笑い、人生について”ちょっぴり”考える。そんな時間を過ごしたように思います。

 本書を読み終えてふと頭をよぎったのは、「自分は今、比較的幸せである」ということでした。
 というのも、私はつい先日まで仕事に追われ、心身を擦り減らしておりました。実に多種多様な人々に囲まれて働く毎日のなかで、家では寝るだけの生活が続き、本書にゆっくりと向き合うことができずにいました。一日一頁を読めれば御の字という具合。
 その仕事に決着をつけ、驚くほど平穏な日々。ようやく本書に正面から向き合うことができ、三日ほどで読了。

 そこで感じた幸せとは、「森見登美彦の創った新たな世界で得た、懐かしい気持ち」に対するものだけでなく、「この摩訶不思議な世界にどっぷりと浸かることのできる穏やかな時間を自分は生きている」というものでした。そう実感したとき、私は何だか温かな気持ちになり、涙が出そうになりました。

 これまで、幾許かの本を読んできましたが、こんな気持ちになったのは初めてのことでした。森見登美彦という自分にとって掛け替えのない存在に出会ったこと、ここ最近の公的な自分に立ちはだかった壁とそれを乗り越えた経験。私が重ねた極めて小さな歴史がそうさせたのだと思うと、感慨深いものがあります。そこそこ頑張って生きてきたのだな、と。

 おっと、これは自画自賛ではありませんよ。なってたまるか。

 何はともあれ、四年の時を経て我々読者のもとに届いた本書こそ、『森見登美彦の凱旋』である。私はそう言いたい。待ってました!不可思議森見ワールド!
 本書を通して実感した幸せを噛み締めながら、目の前の現実に向き合いたい。その勇気は、ホームズやワトソン達からたくさん貰いました。きっと大丈夫。
 やはり、「不思議だなあ」。


追伸
「破廉恥憧憬 三」 絶賛執筆中でございます。では!

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