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シャツの割引

何かを買う時に、できるだけ安く買いたいとおもうのが、一般的な感覚だと思うのですが、今回はそれとは逆の話。

懇意にしているオーダーメイドシャツ屋さんがありまして、まだ世の中がコロナコロナ自粛自粛になる前に、オーダーをしました。

セミオーダーのイベント。

好きな形を選び、ボタンや襟の形、生地を選び、お金を払って注文終了。

今回はプルオーバーかな。
襟は丸襟で。
生地は茶色のピンストライプ。
ボタンは生地に合わせた茶色の猫目。

頭の中で何度もイメージを繰り返して、シャツ屋のオーナーさんとも相談しながら決めました。

仕上がりは2ヶ月後。
ワクワクしながら、「また今度!」とイベント会場をあとにします。

それからしばらくして、メールが。

「確認不足で生地が在庫切れでした!」

なんと!!

「次のオーダーイベントにいらしていただければ、別の生地を選んでいただけるのですが。。高くなっても差額は頂きません!

なんと!!!

ということで、それから2週間後のイベントに顔を出しました。

こちらのシャツ屋さん、オーダーイベントごとにテーマを設けていて、最初に書いたイベントは「カラーシャツ」、今回のイベントは「藍染と古釦」でした。

つまり、藍染のシャツと、古道具店で見つけたという陶器のボタン(釦はボタンの漢字です。いい字。)

最初はちょっとしたおしゃべりと、生地見本を見に行くのが目当てでしたが、実物の藍染のシャツとボタンの美しさをみて、茶色のストライプ生地はまんまと藍染になったのでした。

プルオーバーは変わらず
襟は丸襟のままで。
生地は藍染の濃いものに。
ボタンは古道具の陶器ボタン。
ボタンの色が白だったので、それに合わせて襟と袖を白にして、クレリックにしました。

と、ここからが実は本題なのです。

オーナーさんから「メールでもお伝えしましたが、差額は頂きませんので、オーダーの仕様書だけお渡しするのでちょっと待ってください」の一言。

でも、ここで違和感が。

生業にしていなくても、趣味でも、
ぼくはものづくりを行う人間です。

シャツ一枚に対するパターンの多さや、縫製の丁寧さ、こだわり、シャツへの思いなど、

彼のものづくりのこだわりに対して比較的理解できる経験があると思っています。

そして、こちらの藍染は、生地染めではなく製品染めなので、糸もそれ専用のものを使ったり、染めの段階も考えてサンプルを作るなど、染めにもこだわっているのがわかります。

そんな愛にも似たシャツへのこだわりを、割り引いて受け取っていいのだろうか、と。

自分が何のためにここでシャツをオーダーするのか。

消費のためだけのシャツであれば、ファストファッションを選べばいいと思っています。

ここでシャツを頼むのは、オーナーさんのこだわりに触れに来ているから、と言っても言いすぎでないと思っています。

そして、作業に対しての適切な対価が支払われるべきとも、思っています。

そのような思いを、オーナーの彼もちゃんと受け取ってくれました。

たぶん、いずれ届くこのシャツは、とても大切なものになる気がしています。

安くて得したシャツとしてではなく、こだわりのこもった大切なシャツ。

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