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北朝鮮を覗きに行く旅

北朝鮮を見るために

2023年6月に韓国へ旅行に行きました。
この旅行のメインの目的の一つは、北朝鮮を見に行くことです。
ソウル北部の北朝鮮と接しているパジュ市のとある所へ行くと北朝鮮が覗けるということでそこへ向かいます。
北朝鮮と接しているパジュ市へは、ソウル市内からツアーで行くこともできます。英語だけでなく、日本語のツアーもあるのでツアーを使う行き方が一般的かもしれません。
ですが、なんとなくツアーに拘束されるのが嫌いで、複数の箇所に行きたいと思っていた私は、電車とバスを使い、自力で軍事境界線ギリギリのところまで向かいました。

北朝鮮と接するパジュ市

目的地

今回の目的地は2か所です。
『臨津閣平和ヌリ公園』と『烏頭山統一展望台』です。
臨津閣平和ヌリ公園には、地雷原や地雷の埋まっている川の真上をゴンドラで渡り、かつて米軍が拠点にしていた軍施設(キャンプグリーブス)に行くことができます。
烏頭山統一展望台では、境界線となっている川を挟んで北朝鮮を覗くことができます。距離にして2kmほどしか離れていないので、肉眼で北朝鮮が見えますが、望遠鏡から覗くと北朝鮮人の姿を見ることもできます。
今回は、ソウル市内から臨津閣平和ヌリ公園へ行き、その後烏頭山統一展望台へ移動をしソウル市内へ戻ってくるという旅程です。

アクセス

臨津閣平和ヌリ公園には、京畿中央線でソウル市内から文山(ムンサン)駅まで行き、文山駅近くのバス停からバスに乗り20分弱で臨津閣平和ヌリ公園前まで行くことができます。公園から徒歩10分のところにある臨津江駅まで直通で行く電車も一日に2~4本ほどあるようなので、運が良く時間が合うとバスを使わずにソウル市内から京畿中央線1本で行くことができます。

文山(문산)駅⇔臨津江(임진강)駅の時刻表

臨津閣平和ヌリ公園から烏頭山統一展望台へは、いったん電車でクムチョン駅まで戻って、バスで向かうしかないようです。しかしバスは分かりにくく、韓国はタクシーが安いので、値段を気にしなかったり、複数人で行くならタクシーを使ったほうがラクだと思います。
烏頭山統一展望台の最寄りのバス停まではバスで行けますが、展望台のある敷地に入るには、車かシャトルバスでしか行けないので、「119安全センター」というバス停でバスを降り、シャトルバスが出ているバスターミナルまで5分ほど歩いてシャトルバスを待つ必要があります。
帰りは、近くのバス停から直接ソウル市内に行くバスがあるのでそれに乗れば簡単に帰ることができます。ソウル市内から烏頭山統一展望台に直接行く場合は、もちろんこの逆ルートでバスのみで行くことができます。

韓国はグーグルマップよりもネイバーマップという地図アプリのほうが使えるので、そちらをダウンロードしておくことをオススメします。

臨津閣平和ヌリ公園へ向かう

私は漢江の南側にあるゴールデンソウルホテルというホテルに宿泊していたので、そこからバスで加佐(カジャ)駅に行き、まずは京義中央線で加佐駅から文山駅へ行きます。
この京義中央線はソウル駅やホンデ入口駅、新村駅、デジタルメディアシティ駅など観光で有名なところも通っている路線なので使いやすい路線だと思います。
車窓からはソウルとは全然異なり高いビルは少なく、田舎らしい風景を眺めながら、およそ1時間で文山駅に着きます。
文山駅からはバスに乗り換えて臨津閣平和ヌリ公園前まで向かいます。私が乗ったバスは『58A系統』か『58B系統』で、そのどちらかのバスに乗ると公園前まで行くことができます。バス停は文山駅から西に約100mのところにあります。
旅行者にとってバスは少々ややこしいところもあるので、タクシーを使うと確実に行くこともできると思います。

文山駅からは58A系統か58B系統のバスに乗っていく
文山駅前のバス停


バスからは畑や田んぼが見えますが、その他にも戦争で使ったもののようなトンネルっぽいものまであることが分かります。
正直なところ「北朝鮮と接している街」ということで全然発展していないと思っていましたが、田舎感は否めないものの、街には住宅や団地のようなマンション群もあり、スーパーや学校、KFCなどのファストフード店もあり市民が普通に生活していることがうかがえました。また電気の通らない北朝鮮と接している街ながらスマホの電波が5Gで繋がることには驚きました。

文山駅前
パジュ市街

臨津閣平和ヌリ公園に到着

臨津閣平和ヌリ公園へ入ると、拉致被害者記念館や本来北朝鮮まで続いていた京義中央線の線路、古さびたテーマパークが見えます。

意外と数人の小さい子供たちが遊んでいた


もう少し進むといよいよゴンドラや第三トンネルへ行けるツアー窓口のある建物が見えます。たった数キロ先が北朝鮮なのかと思うと胸がゾクゾクします。
まず建物内でゴンドラのチケットを買う必要があるのですが、DMZ(非武装地帯)へ向かうための誓約書かなにかの記入が必要でした。何かはよくわかりませんでしたが、名前と住所(国籍)を記入し、パスポートを見せたらちゃんとチケットを購入できました。

右の建物がゴンドラ乗り場、真ん中の建物にはツアー窓口があり、左の建物は食堂


そして遂にゴンドラへ乗り込み、臨津閣という地雷が埋まっている川の向こう岸まで渡ります。
ゴンドラへ乗るといきなり有刺鉄線の柵が見えます。向かって左側を見ると、朝鮮戦争時に爆破されて途切れている線路が見えます。かつては韓国側と北朝鮮側で繋がっていたそうです。さらに川の対岸には地雷の標識や哨戒所が見え、緊迫感が伝わってきて緊張します。

ゴンドラからの眺め。
左に見える線路は朝鮮戦争で破壊され途切れている。


対岸へ着き、ゴンドラを降りると地雷が埋まっている森のすぐ横に舗道ができており、施設内を歩き回ることができます。人生で味わったことのないほどの急な坂を上ったところには、かつて米軍が娯楽を楽しんだボウリング場跡に朝鮮戦争の資料館があり、見学することができます。朝鮮戦争の経緯や戦死された方の写真、軍服などが様々な資料が展示されていました。
KpopアイドルBIGBANGのT.O.Pさんが主演を務められた映画「戦火の中へ」のモデルになったイウグンさんのエピソードの紹介もありました。


地雷の標識が何個も立てられている
かつての米軍キャンプ
朝鮮戦争に関する資料が展示されている


また、別の場所には臨津江を北側から韓国を望むことができる広場があり、そこには2018年4月27日に文ジェインと金正恩が一緒に散策した際に通った「徒歩の橋」のレプリカや朝鮮戦争時に使われた「越境防止標識板」などが展示されています。
また”1年後に発送される郵便ポスト”がありました。これは同じ韓国でも地雷原を渡らないと配送ができないほどコストが大きいことを示しているように思いました。国際郵便も可能ですし、この時は知りませんでしたが、青い箱の中にポストカードが入っているようなので、投函してみると思い出として残っていいなと思いました。

徒歩の橋のレプリカ
"1年後に届く遅い郵便ボックス"

烏頭山統一展望台へ

時間は昼過ぎになり、平和公園から申し込みができる第三トンネルを見学できるツアーにも参加したかったですが、烏頭山統一展望台の営業時間が17時ごろまでなのでそちらに向かいます。
帰りの時間には運良く臨津閣駅から電車が出ていたので、ここからクムチョン駅に行きます。そしてバスで烏頭山統一展望台付近へ行こうと思いましたが、グーグルマップやネイバーマップ(韓国ではネイバーマップのほうが主流らしい)を見ても時間通りにバスが来なかったり、どのバスに乗っていいのかよくわからず40分ほど時間をロスをしてしまいました。
33番線のバスに乗ると烏頭山統一展望台の最寄り駅である「119安全センター」にたどり着くことができました。が、もしかしたら他の便のバスでも行くことができるかもしれません。
119安全センターでバスを下車して5分ほど南に歩くと烏頭山統一展望台へ向かうシャトルバスのターミナルがあります。このシャトルバスは無料で、30分おきに運行されているので、この看板の前でバスが来るまで待機しておきます。
また、烏頭山統一展望台の営業時間は17時までとなっていますが、帰りのシャトルバスの運行は15時半までとなっているので注意が必要です。

展望台の麓にあるバスターミナル

烏頭山統一展望台に到着

バスで烏頭山統一展望台の前に到着しました。
展望台のある建物は大きくはないですが、しっかりとした建物です。建物の前には高く掲げられた韓国の国旗があります。また山の上にあるので建物入り口前からも北朝鮮が肉眼で見えます。
建物の中に入ると、券売機でチケットを買います。また入場する際に、日本語をしゃべれるスタッフの方がおり、その方から軽い説明とパンフレットを受け取りました。
施設の1,2階は南北関係の遷移や統一されたらどのようなことが可能になるのかなど展示物を見て学ぶことができます。例えば、先ほど使った京義中央線がソウルから平壌まで鉄道がつながると、その先の北朝鮮内の鉄道、シベリア鉄道を使って、ソウルからヨーロッパへ電車で行けるようになるらしいです。

そして、メインイベントである展望台に出て、北朝鮮を覗きます。
展望台には無料の双眼鏡があり、しっかりと北朝鮮を見ることができます。私たちから見えている北朝鮮は、いわゆる「宣伝村」といわれる外国人に見せるように作られた町ですが、実際に北朝鮮を見ることができる数少ない場所です。双眼鏡からは北朝鮮の人を鮮明に見ることができるので、北朝鮮で生活をしている北朝鮮人を見ることができる貴重な場所です。
ここは宣伝村ですが、それでも貧しそうな生活をうかがうことができるので、他の北朝鮮の地域ではどれだけ貧しい生活を送っているだろうかと想像がつきません。
この展望台には、先ほど申し上げたように韓国の国旗が北朝鮮側にアピールするように掲げられております。これは北朝鮮側に、これだけ高く国旗が掲げられるほど韓国は豊かだというアピールをしているらしいです。(別の都羅展望台というところでは北朝鮮側の国旗のほうが高いらしい)
また非常に大きいメガホンがあり、北朝鮮側の人々にアピールしたいことを言葉でを訴えられるようになっています。実際に聞こえてるのかどうかはわかりません。

対岸に見えるのが北朝鮮
北朝鮮側の哨戒所が見える
北朝鮮の人も鮮明に見える
北朝鮮側にアピールするように掲げられている韓国国旗

15時半ぐらいになったので最終便のシャトルバスで烏頭山統一展望台から去ることに。14時半ぐらいに到着したので、あっという間の1時間でした。
当然ここからソウル中心地へ帰ることになるのですが、ここでも地図アプリ通りの時間にバスが来ない、地図アプリ通りの番号のバスが来ないなどで、どのバスに乗ればいいのか迷子になりました。北朝鮮から3㎞の場所で野宿することになるのか、と結構焦りましたがなんとかソウルへ向かうバスを見つけることができました。
(私は近くの「国立民俗博物館」というバス停から赤の2200系統のバスに乗って、地下鉄6号線が通っているはプチョン駅近くのバス停へ帰りました。)

まとめ

今回は韓国旅行で主な目的であった、臨津閣平和ヌリ公園と烏頭山統一展望台を訪れ、実際に北朝鮮という国を自分の目で見る貴重な経験ができました。この経験から南北関係により興味を持つことができました。
実際に日本に帰国してからも南北関係について調べたり学びました。戦争自体よくないものではありますが、同じ民族同士で争ったり分断することほど悲惨なものはないと思いました。
これらの施設は、韓国旅行をする中で有名な観光施設というわけではないかもしれませんが、南北関係について興味を持つことができ、自ら南北関係について調べようと思うきっかけになるかもしれません。私はアクセスに結構苦労しましたが、ソウル市内からツアーで簡単に行くことができるようです。北朝鮮に興味がある方はもちろん、普通の韓国旅行に飽きた方、そうでない方も、一度だけでも訪れる価値のある場所だと思いますので是非行ってみてはいかがでしょうか。

南北関係は勿論、日朝諸問題も解決されることを祈っています。

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