非ユークリット幾何学

テアトロン(高山明)を読んで面白かったところが、ベンヤミンがブレヒトの演劇をリーマンの非ユークリット幾何学(平行線の公理を取り払うこと)ととらえていた、というところだ。それは、線的なストーリーに没入させる演出ではなく、観客が面を読み解く演劇である。演劇における観客と客席のオーガナイズの方法を問う演劇が魅力であり、その方法論を持って現代の社会問題にアプローチし、その舞台を都市空間とするところに高山さんの演劇(芸術)の面白さを実感した。

迂回路のアプローチ。それは政治的対立を超える。ブレヒトの教育撃破、演じる側と見る側の教会が無く、劇場では無く学校や工場で行われる学びの場を創るワークショップに近いものである。英語でラーニング・プレイと訳されるとよりとらえやすい。ロールプレイングゲーム、的な響きで、ゲームを操作する自身がより能動的になる行為である。著書のタイトルになっている「テアトロン」も元々、テアは観るの意味のようで、見物する場所、つまり客席であり、演劇は客席という考えが面白い。

ルターの宗教改革を教会をメディアセンターのような場にしたととらえ、それは未来の「演劇ちゃん」につながると述べられている。バーチャル空間をリアル空間に重ねあわすプロジェクト(磯崎新)である。旅(ワーグナー)でなく、観光(ブレヒト)であり、行き着く場所を分かった上で、プロセスを通じて何を知らなかったのかを発見することだ。

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