浦島太郎

私たちは昔話を読む時、つい、そこで描かれている教訓とは何なのかということについて考えたくなる。そのように身構えて話を聞いた時、浦島太郎というのは、一体この話で何がいいたいのだろうか、と思う人は多いのではないか。また更に不思議な点も多い。私が思っていた一番不可解な点としては、おとひめさまは、開けてはいけない箱を何故お土産と言って浦島太郎に渡したのか、ということだ。

さて、浦島太郎は、万葉集にも出てくることから、既にその頃には語られていたものとされる。
また、語り継がれる地域は少し違いがあったりするようだ。

最近、図書館で子どものために浦島太郎の本を借り、あらためて読んでみた。

そこでの作者の解説が面白かったのでメモしておく。
それは、一連のストーリーの中で、亀を助けることや、玉手箱を開けてしまい、白髪のお爺さんになってしまうことは、竜宮城に行くきっかけや、この話を完結づけるための要素にすぎない、という考え方であった。

いじめられている亀、煙にまかれて年老いてしまう浦島太郎の姿など、この話のイメージとして直ぐに思い浮かぶワンシーンは、この物語の核心とはすこし離れていて、いわば、物語を語りやすくするためのアイコンのようなものと考えられるのかもしれない。

そして、この解説では、貧しい暮らしから、一転して、当時の権力者でも手に入らないようなユートピアを手に入れた浦島太郎が、自分の意思で、もとの暮らしに戻ることを選んだとうことと、2つの世界がパラレルに、そして、300年のスケールで存在しているということに着眼点が置かれていた。

なるほど、物語の最初のシーンでは、浦島太郎の黒く焼けた肌、潮の香り、波、魚を捕らえる浦島太郎の勇ましく、堂々たる姿見が強く描かれていて、印象的であった。
美しいおとひめさま、豪華な宴の席と舞、煌びやかな竜宮城の光景は、この最初のシーンと対比されるものなのだ。

人間が本来望むものは何なのだろう。
そんなことを考えさせる、問いかけるようなものが、助けた亀と玉手箱、のカギ括弧の中に温存され、今日まで語られてきたのかもしれない。

また、別の浦島太郎も読んでみよう。

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