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ゲッベルスから学ぶ「差別が生んだ差別主義」

以前ナチズムを積極的に調べていたことがある。
彼らのプロパガンダスタイルから、私の調べ方は映像や写真が主だった。ドキュメンタリーが主体である。

私が強く関心を持ったのが、ナチス宣伝相、プロパガンダマシーンとして名高いパウル・ヨーゼフ・ゲッベルス(Paul Joseph Goebbels)だった。

1897年に当時プロイセン王国だったライン州にて生まれた彼は、小児麻痺(ポリオ)を患った。
治療に失敗し、生涯に渡り右足を引きずって生きることを強いられたことは、彼の歪んだ人格形成に多大な影響を与えたと言われている。

日常生活は問題無く送れるが、激しい運動は出来ない。身長も163cmと小柄だった。
昔は今以上に障碍者への風当たりは極めて強かったことは想像に難くない。そして、このために第一次世界大戦の兵役も不合格だった。これは当時、とても不名誉なことだった。

だがゲッベルスは極めて優秀で博識、豊かな教養を持つ。
ボン大学、ハイデルベルク大学、ヴュルツブルク大学、フライベルク大学を卒業、ドイツ文学の博士号を取得している。

そんな彼の反ユダヤ主義は強烈で、憎悪に満ち溢れていたという。
後にナチスドイツ下で行われた優生思想の数々、「安楽死計画」またの名を「T4作戦」と呼ばれる精神障碍者の殺害にも追従することになる。

障碍者なら障碍者を差別しない?そんなことはない。
差別は誰もがするし、する可能性を秘めている。それはゲッベルスを見れば理解出来る。
むしろ彼は無教養な人間を見下し、また強い憎悪やコンプレックスから、他の障碍者を差別していたフシが見受けられる。

反ユダヤ主義に惹かれてNSDAPに入党、その当時はナチ党左派に属していた。
ゲッベルスは反ユダヤ主義ながら、政治思想的には左派だったためである。

しかしヒトラーに才能を高く買われ、ヒトラーに実際に会うと左派思想すら捨て去り、過激主義にのめり込む。

人間とは不思議なものだと思う。ヒトラーのカリスマに割とあっさり惹かれ、しかも思想まで変わってしまう。
知性や教養があっても、差別する人は差別するものであるとわかる。まぁ日本の政治家にも多いけど。

なお、補足するとナチスに限らず、かつてはヨーロッパ全体でユダヤ人差別は横行していた。差別は差別を生み、憎しみを生むし、差別する大人に影響されることも少なくは無い。


几帳面なゲッベルスは日記をきっちりと書き残しており、その日記は極めて高い資料価値を持つ。興味のある方は見てみるのも良いかもしれない。

あとドキュメンタリーを見ていて思ったのは、一部の学者・作家の話し方。あくまで翻訳だが、ゲッベルスの外見について

「一見ナチスに見えない」

これはわかる。


「背が低く、片足を引きずっていて、おまけに器量が悪い」

器量のことは言わなくて良いと思う。その言い方では、ゲッベルスがひねくれてしまうのも頷けるというものだ。

なお、ナチ党の中では珍しく、秘密結社やオカルトについてゲッベルスは言及されていない。
そこは、さすが知性派と言うべきポイントだろうか。そもそも彼は信仰を捨てているからかもしれないが。


参考資料番組

ナチスの興亡シリーズ(ナショジオ)
我が闘争(ヒストリーチャンネル)
ナチス権力者 究極の悪(ヒストリーチャンネル)
黙示録シリーズ、第二次世界大戦編(ナショジオ)
ナチスドイツの巨大建造物「プロパガンダ・マシーン」(ナショジオ)

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