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永遠の別れには「またね」と言わせてくれ

死ぬには意味がありすぎるし、死ぬには理由が無さすぎる快晴で、今日も中央線の通勤特快を見送った。
何処か遠くへ行きたいが、行くあてが無いから中央線沿線のその先へ行けない。「遠くへ行けるのは天才だけだ」と、寺山修司が遺しているが、これ以上に頷ける言葉は無いと常々思う。
私は天才じゃ無いから何処へも行けない。何処へも行け無いのならいっそ、と、何処へも行けなくてもそれでも、の間で、駅のホームで何度も地団駄を踏んだ。

永遠の別れには「またね」と言わせてくれ!

ある日突然いなくなった元友人達に幾度となく思った言葉が、死にたい気持ちの腕を引く。
自分勝手に緞帳を下ろすことは今すぐにでも出来るが、残された者の空虚感を幾度となく味わって来た今の自分が、それを許さない。
永遠の別れには「またね」と言いたい。例えそれが、一生叶わぬ事だとしても。

バンドをやっていた高校時代にお世話になった人に、年始の帰省のタイミングで数年ぶりに会った。
その人は、静岡の音楽スタジオで楽器修理をしつつのらりくらりと生活している。それは、昔から現在まで変わらず、だ。
ありえない速度で変わりゆく身の回りの環境に疲れ切っていた私は、数年ぶりに会っても変わらないその人の笑顔に安心した。
私が高校生だった10年前と同じ場所で、同じ格好で「俺は(数年後も)変わらないよ」と言ってくれた事が嬉しく、帰る場所があるから何があっても大丈夫と心から思えた。

何処へも行けなくてもいいだろう。
いつも同じ場所にいて、何処からでも見つけられる星になれる方が素敵だ。
中央線沿線で、詩を書いてたまに読んで、音楽を聞いて、酒を飲んで笑ってって、10年後もそうでありたい。
泣き虫でわがままな性格だけは変わっていてほしいけれど、それは努力が必要か。
あともう一つ変わっていてほしい「夢」も出来たけれど、それはまだ言わない。
もう永遠に会えない人間になりたくないから、死なずに、何処からでも見つけられる星になる。

もしもきみが、私の前から永遠にいなくなるその時は、そっと教えてくれないか。
缶チューハイくらいは奢るし、花火も買ってくるよ。
日本国内なら何処にでも駆けつけるさ。
だから最後は、心からの情け無い三文字を、すぐそばで聞いてくれ。

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