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初めてのライトノベル執筆

 コロナに罹り、この一週間へろへろで療養していたのですが、ちょうどその直前、8月25日に初めて書いたライトノベル「あなたの、そして誰かのお弁当〜あけぼの町三丁目 みんなのお弁当物語」が、小学館それいゆ文庫より電子書籍で発売になりました。商業では初めての、BLではない小説です。BL小説の投稿をする前にはいわゆる”一般文芸”と言われるものを書いて投稿していたこともあるのですが、その頃にはライトノベルという言葉すらありませんでした。
 ライトノベル、ライト文芸……広義ではBL小説もライトノベルに入るのでしょう。異世界とかあやかしとか、転生とか、BL近刊で私が苦労しまくった(^^ゞ冒険者とか、悪役令嬢(令息)とかライトノベルの流行りがBLに派生していると感じています。

 ご縁あってそれいゆ文庫さまにお誘いいただき、担当さまとZOOMで初めての打ち合わせ時、女性向けライトノベルということで、私はなんとなく異世界かごはんものかなーというくらいの認識でした。ブロマンスはOKということで現代バディものもいいなあと思ったのですが、ダメだ。それじゃ絶対BLにしたくなる。そして異世界も、ごはんものもBLでたくさん書かせていただいたしなあ……そんな私に、担当さまは「好きなものを好きなように」と仰ってくださいました。それなら……と、「現代でお弁当ものはどうでしょうか、あまりないと思いますし」(実はわりとあった)
「いいですね」と仰ってくれた担当さま。「では、あの、オムニバスにしたいのですが……」緊張でまだまだ堅い私。「単話で成立するのではなくて、キャラが少しずつどこかでつながっていて、最後はひとつにまとまるような……」(声だんだん小さく)初めて書くのに、そんな難しい構成あかんよな。そもそもBLでも書いたことない上に、そんなライトノベルってありなのか……等々私がライトノベルをあまり読んだことがないので無知なことが多すぎて。ただ、オムニバスにはずっとあこがれがありました。小説を読むときには、敢えてオムニバス形式のものを選んだりするほどに好きだったのです。
 お弁当小説いいですね、と言っていただき、そして、
「BL小説を書く前は一般文芸で投稿しておられたということですが、どのようなものを書いておられたのですか?」
 さあここから、私のBLではない小説のネタ語りが怒濤のように始まります。BL小説を書くようになってから作品は絶対に完結させるようになりましたが、当時の私は完結させる方が少なく(もうここからダメですね)その断片が自分が思ったよりも頭の中にたくさん残っていたのです。いわゆる匂い系あり、近親相姦が絡んだ話あり……他に、性虐待を受けた少年と、彼を守ろうとする少年の話、完全な男女の恋愛小説もありました(怖れ多くも、女性のためのR18文学賞や、日本ラブストーリー大賞に出したり)ファイルも壊れ、データもろくに残っていないそういうものが自分の中にわーっと振ってきて戸惑いました。誰かにその思いを話していると、やれるような気がしてきて、書けるような気がしてきて……新たにいただいたこの機会に感謝しました。それぞれが「女性向けライトノベル」という枠にどこまではまってどこからはみ出すのか、そうか、新しいチャンスをいただくというのはこういうことなのか……と思いました。
 私の中にあったネタのかけらは、どちらかというと男女の恋愛が大きなものを占めていました。今、たちまちそれを形にすることは無理で、これからも無理かもしれないけれど、いただいた突破口から少しでも実現できたら……そんなことを思った打ち合わせでした。

 さて、お弁当小説。
 上記のことは置いといて、自分自身がお弁当を作ることについていろいろ感じていたこともあり(これはいずれまた……)短編をオムニバスで綴っていく構成がOKになりました。自分のお弁当作りで心に残っていたシーンを膨らませたり、きっかけにして書いてみたり。一から作ったエピソードもあります。その中で今回、お弁当をテーマに小説を書くことについて、私がこだわったのは「手作り弁当という呪縛からの解放」でした。
 こうして書くと、なんかたいそうですが、きっと、お弁当作りに携わってきた人は、何らか感じたことはあるのではないでしょうか。
 本作には、同じ街に住む、里香、有純、縁、雄太、吉宏という人々が出てきます。そして、その街には、ある意味お弁当に翻弄される彼らを見守り、彼らのほっこりとした精神的な居場所となる「コウスケの弁当屋」があります。
 五人のキャラは決して、全員が知り合いではありません。ですが、知らないうちに「コウスケの弁当屋」を通して彼らの人生は触れ合っています。主人公はそれぞれです。脇キャラはいないのです。

 こうして各キャラにまつわるストーリーを考え、順番は気にせずに、まずは「書きやすそうな話から始めました。最初にお弁当女王、キャラ弁作りの達人、有純の話から。有純は自分からかけ離れたキャラでもあり、俯瞰しながら楽しく書いていました。でも、表紙の里香、縁くらいになってくると、だんだん自分と同化しはじめるところがあり、初めて「キャラに引きずられる」「どこまでが現実かわからなくなる」という経験をしました。BL小説はファンタジーなんだ、と心から思いました。異世界や架空の王国、オメガバース、魔法使いやドラゴンのいる世界、特に最近私が書いていたものを思うとなおさら……BL小説は大好きですし、こうしてファンタジー設定を構築するのも大好きです。現実でもファンタジーでも、そこで悩み成長するキャラというのはブレてはいけないけれど、現実世界に生きる人々を書くということの難しさ、現実世界ではあっても架空のキャラである塩梅、そういうことを私は知らなかったんだな……と感じた次第です。

 そんなこんなで結構悩み、苦しんだ原稿でもあります(苦しまない原稿などありませんが)でも、書かせていただけて本当によかった! 異世界転生も悪役令嬢も出てきません、異世界のご飯屋さんでもありません。流行からは遠いところにあるものですが、一人でも多くの方の元へ届きますようにと願っています。



 


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