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アルハイママとの勝たないオセロ

アルツハイマー患者にオセロはできるのか?
と思いません?
できるんですよ。これが。

モノの名前や家族のこともあやふやなアルツハイマーの母も、白と黒を挟んでひっくり返すというゲームはちゃんとできるのです。

母は、どうにもこうにも落ち着きがないという時がある。
午後の1時、2時から晩御飯の準備を始めるつもりで、台所をウロウロ、冷蔵庫をごそごそ…。
「まだ準備を始めるには早すぎるから」と諭してテレビの前に誘導しても、ほんの5分でまた台所に立つ。

そんな日は、我が家ではオセロの出番となる。

昔からゲーム好きな母は、オセロを始めるとじっくり集中してくれる。
もちろん、戦略的に凄腕なゲームにはならない。

母には、のちのちのゲーム展開を見据えた采配はなくて、その都度、その都度、一番多く駒がひっくり返るスペースを探す。
オセロで普段私たちがやりがちな、相手の傾向を掴む、次の手を予測する、裏読みする、などの戦略が存在しない。たぶん、それに必要な過去未来感覚を母はすでに失っているせいかな?と思う。

だから対峙していると、「へ?そこ、くる?」みたいな、逆に驚く展開になることも多い。

母と対戦するわたしのオセロは『勝たないオセロ』。
目標は、ちょうど引き分けになる程度の勝負。
あんまり勝ち過ぎず、負けすぎない。
それなりに工夫を要するので、わたしも意外と真剣に取り組むことになる。

ゲームが終わり、盤の上の駒をいち、に、さんと数えていって、その差、数枚で勝った時には、「やったー!!」と母はガッツポーズをする。子供みたいに無邪気に。
そして「もう一回。」それまた子供みたいに。

その状態が、わたしにとっても、やったー!の達成感。

だって、これは『勝たないオセロ』ですから。


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