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杖つきパパの作文、その後

以前に父が作文に取り組んでいる話を書いた。

その後、やっと作文は仕上がり、原稿用紙への清書をわたしが手伝って新聞社へ送り届けた。
一般市民からの投稿が紙面に載るのは土曜日。
1週目は採用にならならず、父のがっかり感が伝わって、こちらも焦る。
父が頑張って書いたのを知っているので、娘としても、「頼むよ、新聞社〜」の気持ちだ。

2週目の土曜を前に、新聞社から封書が届いた。
そこには謝礼の図書カードとともに、掲載予定日と担当者からの優しい感想が添えられていた。ほっ。

あんまり感情表現しない父の代わりに、大げさに「すごーい!!」と喜んであげたら、ニヤニヤと嬉しそうな顔をする。
掲載当日は新聞を早速写真にして姉にLINEで報告。
接客業の姉は心得たもので、褒め言葉満載で父に連絡をしてくれた。
実は、父が思っているほどに周りからの反応はないだろうと思っていたので、家族だけでも存分に新聞掲載を褒め称えたいと思っていたのだ。

ところが、思いの外、反応が多かった。

父の元には知人友人から「新聞、読みましたよ。お元気にリハビリに取り組まれているようで何より。」と何本も電話が入る。

「顔を見たかった」と訪問客も何組か来てくれて、中には、最近この辺のスーパーでは欠品が続く卵をどっさりと持ってきてくれた方も。

町内の人にも声をかけてもらえたし、しばらく経ってからハガキで感想を寄せてくれた元の部下の人もいた。
いろんな人達と久しぶりに交流ができて、父はとても嬉しかったみたいだ。

ごめんよ。パパ。

本当にこんなに反応があるとは思っていなかった。
わたしは父が、読む人たちの反応を気にして、作文の書き直しを繰り返していた姿を、内心、笑っていたところがある。

88歳のご老体。ソファで野球を見ながらうたた寝する姿ばかりを見ていると、ついつい忘れがちだけれども、我が家の父は、現役時代に社会に貢献した人気者だったのだね。

「また書かなきゃならんなー」と自ら言うので、次の作文が書き上がるのを、今度は真面目に応援したいと思う。




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