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アルハイママと点つなぎしたら泣けてきた

アルツハイマーの母の机の上には常に塗り絵ブックと色鉛筆がある。これまで曼荼羅の塗り絵が主な暇つぶしだったけれども、最近『点つなぎ』が新しく加わった。

『点つなぎ』は番号のついた点を順番に線で繋いでいくだけのもの。完成すると文字が浮き上がる。母が通っているデイサービスで時々使用しているようだったので、書店で探してみると、数独やクロスワードなどの棚に結構な数が売っていた。知らなかったけれど、流行っているみたいだ。

慣れているならば、すんなり出来るのかと思いきや、母は、その日のコンディションによって上手に出来たり出来なかったりする。
ある日は定規を使って線を几帳面に引くのに、ある日は、数字を順番に追っていくという基本ルールさえ分からない。

いつでも数字を声に出して作業するので、1、2、3・・・という母の声を家族はなんとなく耳にする。規則正しく順に数える声は気持ちがよくて、気を許して数字のリズムに浸っていると、急に76、77、82、83みたいに飛んで、一同、ガクッとなる。

記載してある番号の点は常に隣近所にあるわけではないので、探しきれないと、そんなことが起きる。

普段は放置だ。
正しく仕上がらなくても何の問題もない。家族としては、母が飽きずに一箇所に座っていてくれれば、それで良い。
父が「おーい、数が飛んだぞ。」と言ったとしても、わたしは目線も上げずに「飛んだねー。」とだけ返す。大したことをしているわけではない。書いたり、読んだり、観ていたりする自分の時間を中断したくないだけだ。

ある日、珍しく気が向いたので、母の隣に座って手伝いをしてみた。
「77の次は、78。少し遠くにあったね。」
そして、一緒に声をそろえて数字を数えながら作業を進めた。
「78、79、80・・・」

ふと、デジャブ。

前にもこんなことあった?

思いを巡らすと、逆だ。

わたしが幼い頃に、母がわたしの横に座って、数を間違えなく数えるのを手伝ってくれたのだ。きっと。

そうやって育ててもらったんだな。母も三人の子育てをしながら忙しかったのではなかったのか?しかも今のわたしよりずっとずっと若かったはず。
手をかけて育ててくれてありがとう。
そう思うと涙がこみ上げてきた。

母に涙を見られるのはちょっと恥ずかしくて「お茶淹れるね。」と台所に避難した。

読んでくださり、ありがとうございます。 サポートのお気持ちとても嬉しいです。ありがたく受け取らせていただきます。感謝💕