幸せな女たち(第二話)
【まえがき】
note、創作大賞2024投稿作品。
女性向けの恋愛小説。
漫画原作部門、投稿。
【第二話】
パンパンパンパン!
朝の青空に、上がるトーナメント開始の合図の花火とラッパの音。
ここ、ジアルダークの首都、リドニスの中にある、サンマルク市国の闘技場では、28科目中、27科目目のアーチェリー大会が行われていた。
ラッカルからリドニスまで、列車で朝八時から、昼二時まで、六時間かけて、到着した、シャンティと5人の学校の女友達、ラベンダー、ユリア、サリー、ミランダ、エリスは、それぞれ、家から大人の男の世話人を1人ずつ付けてきていて、到着した翌日の朝から、サンマルク市国の闘技場、VIP席から、ニーナ姫の夫選びトーナメントの試合観戦をしていた。
その時、ラベンダーが変わった男が突然、試合に参加し始めた事に気がついた━━━━。
「何、あの赤いマントの男の人、騎士みたいな格好をして、左手薬指に、沢山の指輪をしてる!!」
「まさか━━━━」
シャンティは、無我夢中になって、親友、ラベンダーの双眼鏡を引ったくって、その中をマジマジと覗(のぞ)いた。
すると、確かに、突然、闘技場に現れた、その男の人は、左手薬指の第一関節から根元までにかけて、金銀様々な、十数個の指輪をつけていた。
「あれって、もしかして、全部、結婚指輪~~?!」
◆
「大変です、サンマルク市国に、スティーブが現れました!!」
「スティーブが!?」
ジアルダーク国の女王、グラン・ホワイトール(最高の白の女王)、ネデミーア女王は、臣下セシルの報告に、たじろいだ。
「あの、風来坊、今度は、サンマルク市国に?!全く、神出鬼没で、どこにわいて出るか、わからないんだから」
「どうしますか?」
「しょうがありませんね、とりあえず、電話を繋ぎなさい」
「かしこまりました」
◆
「あー、よく寝た」
リドニスの夫選びトーナメント優勝者、常連のスティーブ・ジェイノベンスは、1ヶ月ぶりに、ベットから目を覚ました。
スティーブは、半年に一回、1ヶ月ほど、眠らないとダメな体質で、ニーナ姫の夫選びトーナメントには、きちんと応募するつもりだったが、その直前に、長い睡眠に入ってしまい、やっと、今日、起きて、当日参加申込をして、大会に出てこれたのだった━━━━。
「あれは、スティーブ!!」
闘技場の特別席から、身を乗りだし、スティーブを見つけるニーナ姫。
ニーナ姫も、スティーブの事については、他のホワイトワ(白の姫君)や、ホワイトール(白の女王)から、話を聞いていた。
しかし、自分のトーナメントには、参加申込がされておらず、自分は、スティーブに選ばれなかったのだと、多少、落胆していたが、今日、スティーブが自分の夫選びトーナメントに出てきてくれて、とても嬉しいニーナ姫なのだった。
「あれが、噂のスティーブ?」
トーナメント大会、優勝者、最有力候補のガーディアスは、突然、現れたスティーブに、驚いた。
この日は、戦闘科目の中のアーチェリー大会が行われていた。
そして、スティーブの番がやってくる。
ストトトトトトト。
六発とも、的の中央を獲ていた。
「うおおおおおお、さすがスティーブ!やるじゃねえか!!」
観客席は、スティーブ登場で、大盛り上がりだった。
けれど、━━━━。
「あ、やっぱ、まだ、ねみ……」
バタンキュー。
と、スティーブは、その場で、眠りについてしまった。
◆
3日後、二度寝して、やっと起きたスティーブだったが、トーナメント大会はすでに終了していた。
優勝者は、ガーディアス。
スティーブは、28科目中、1つしか出ていなかったので、もちろん、敗退してしまったのだ。
「ちぇ、ニーナ姫、狙ってたのにな」
スティーブは、不貞腐れて、また、眠ってしまった。
◆
「へぇ、スティーブって、睡眠障害のある人だったんだー」
シャンティは、サンマルク市国の闘技場のVIP観客席にいた時、たまたま、飲み物を注文したので、運んできてくれた給仕の男性スタッフから、話を聞いて、ようやくそれを知ったのだった。
「通りで、神出鬼没だって、いわれてたのね」
ネデミーア女王も、スティーブが倒れて、二度寝してしまったので、電話する事が出来なかった。
しかし、ネデミーア女王は、そんなスティーブを、ジアルダークで一番、頼りにしていた。
なぜなら、スティーブは、10人目のホワイトール(白の女王)の第一夫になった時に、ジアルダークの警察庁からスカウトされ、普段、特別警察官(つまり、自由出勤制の警察官)として働いており、女性のために、警察の女性保護課に所属していたからだ。
神出鬼没と言われるのは、この特別な仕事をしているためもあり、ジアルダーク国の中すべてにある郵便ポストの前に、自由にテレポート出来る権利と魔法の力を与えられており、昼夜、パトロールも含めて、ジアルダークのどこにでも現れると言う特徴があった。
その仕事の中には、外国で殺された女性の国際指名手配犯を捕まえた経歴などあり、スティーブは、トーナメントに参加していない時は、そうやって、国に貢献していた。
女性が少ない、この異世界、デイドナースでは、女殺しは、ご法度中のご法度であり、一発、極刑の重罪だった。
スティーブが捕まえた、ジキル・ホーキンスと言う男も、被害者は、異国の地の女性だったものの、強姦された後、殺され、飾られると言う目にあい、ジアルダーク人ではなかったものの、スティーブは、それが許せず、自ら、それ専門の現場に、名乗り出たと言われている。
そんなスティーブは、影から、18人の妻である、ホワイトール(白の女王)を守り、ジアルダークのために、日夜、働いていたので、ネデミーア女王からの信頼が厚(あつ)かったのだ。
スティーブは、サンマルク市国での、第一回目の夫選びトーナメントが終わると、拠点にしている、リドニスの自分専用の屋敷に、テレポートで帰って行った。
スティーブは、いつも、第一目のトーナメントに優勝した時にしか、第二回、第三回には、参加しないのだった。
◆
一方、旅行帰りのシャンティたちは、やっと闘技場で見つけたスティーブに、直接、会えず仕舞いで、サンマルク市国で、最後、お土産を買っていた。
「ねぇ、店員さん、これがスティーブの顔??」
「そうよ(笑)」
旅行の最終日、シャンティは、目を覚ましたと言うスティーブの噂を聞き付けて、トーナメント参加者が泊まる宿へ、顔を出したのだが、もう、スティーブは帰った後で、仕方がないので、トーナメントの記念品を売っている店で、スティーブのグッズを買う事にしたのだった。
「スティーブって、近くで見たら、こんな顔してるのね、なんか、トイプードルみたいで、可愛い♡」
ポスターのスティーブは、茶色いフワフワのトイプードルみたいなパーマのかかった髪と、青色の瞳、写真で見ると、カッコいいのもあったけれど、かわいい顔立ちをしていた、
「キャアアア♡スティーブ、かわいい」
「女性が男性にかわいいって言うのは、違うと思いますけど(笑)」
「だって、可愛いじゃないですか(笑)」
一緒に旅行に来ていた、ラベンダー、ユリア、サリー、ミランダ、エリスも、ポスターのスティーブをマジマジと観察した。
「結構、いい男じゃない」
「私は、好みー」
「私もー」
シャンティは、そのポスターと、生写真数枚と、スティーブのフルネームが入ったマグカップを買った。
「スティーブ、次、誰のホワイトワのトーナメントに参加するのか、わかりますか??」
「いいえ、わからないわ。彼、結構ギリギリに応募したり、直接、当日参加したりするから。でも、トーナメント参加者は、毎月、ジアルダークが出す広報誌に、一覧表が出るから、それを見ると、申込さえしてあれば、わかるようになってるわね」
「へぇ、そうなんですね」
「ええ。しかも、トーナメント参加者は、トーナメントの応募前に開かれる、ホワイトワ(白の姫君)のお披露目会で、性格が気に入ったら、トーナメントに参加する人も多いわ」
「へぇ、やっぱり、性格って大事なんですね!じゃあ、今度は、戦闘科目だけでも、見に来れたらいいな」
「そうね、応援するなら、ラッカルにも送られてくる、毎月出る、ジアルダークの広報誌をチェックしてね」
「わかりました、ありがとうございます!」
そうして、シャンティの旅行は、スティーブの会えず仕舞いだったが、終わった━━━━。
◆
かに、見えたが━━━━。
「あぁ、やっと、地元の駅に着いたわ」
「じゃあ、タクシー呼んでくるので、このポストの前で待っていて下さいね、シャンティ様」
「わかったわ、ロイド。行ってらっしゃい」
二つ前の駅で、女友達たちと別れた、荷物だらけのシャンティは、旅行に同行してくれていた、シャンティの家の世話人の男、ロイドがタクシーを拾って来るまで待った。
ふと、隣でタバコを吸っている人がいたので、ふいにその人の顔を眺めた。
そうすると、なんと、隣にはスティーブがいるではないか!!
「なんで、ここに……!!」
≪つづく≫
【リンク】
◆「幸せな女たち」(第三話)
https://note.com/sumirena7/n/n03d42542d161
【あとがき】
人名や場所名が、いい加減なカタカナなので、修正するかも。
【登場人物】
◆シャンティ
15才の少女
銀髪に、桃色の瞳をしている
◆ラベンダー
シャンティの女友達
◆ユリア
シャンティの女友達
◆サリー
シャンティの女友達
◆ミランダ
シャンティの女友達
◆エリス
シャンティの女友達
◆ニーナ
サンマルク市国のホワイトワ
◆ネデミーア
ジアルダークの女王
◆セシル
ネデミーア女王の臣下をしている男
◆ガーディアス
ニーナ姫の第一夫として、選ばれた
◆ジキル・ホーキンス
外国で女殺しをした国際指名手配犯
すでに、スティーブにより逮捕されている
◆ロイド
シャンティの旅行に付き添っていた、シャンティの家の世話人の一人で、35才の男
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