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幸せな女たち(第一話)



【まえがき】


note、創作大賞2024の応募作品。
女性向けの恋愛小説。
漫画原作部門、投稿。

【あらすじ】(ラストまで)

女が男の数百倍いる異世界の国、ジアルダーク。そこでは、女はみんな産まれつき銀髪で、妊娠したら、1ヶ月で、鶏の卵サイズの赤ん坊を、数人、一気に産むと言う、体をしていた。
女に産まれたと言うだけで、幸せだと言われる、そんな、女厚待遇の国で産まれた、女たちの群像劇。その中の一人、シャンティ(15歳)は、首都、リドニスで行われている、夫選びトーナメントで立て続けに優勝している男、スティーブ(25才)と奇跡的な出会いをし、やっと相思相愛になるが、やはり、18人もの第一夫であるスティーブの事が受け入れられず、自分を一途に愛してくれる、地元の農園の地主の男、カイン(22才)に心引かれ、カインと結婚する事になる。

【見どころ】

これでもか、と言う位、ありえない女厚待遇の異世界を、楽しみながら、ファンタジーとして書きました。
こんな、世界、あったら、良いな、みたいな気持ちで、読んで頂けたら、幸いです(笑)

【第一話】

━━━━とある異世界の国、ジアルダーク。

ジアルダークとは、現地の言葉で、≪女王蜂≫という意味で、そこでは、人間の女性の数が、極端に少なく、人口比率は、女性一人に対して、男性が数百人の割合だった。

そして、ジアルダークの女性は、妊娠すると、1ヶ月で、鶏の卵サイズの子供を、一度に数人産む。そして、女の子が産まれるのは、初産のみで、産まれた子供は、男女共に、20年で大人に認められた━━━━。

ジアルダーク人は、女性のみ、産まれた時からみんな銀髪で、ジアルダークの中央にある都、首都リドニスでは、二十歳になった女性はみんな、その女性専用の城を持たされ、毎月トーナメント方式で、夫を選ぶと言う慣習で、子孫繁栄し、自分たちの集落を作らされていた。

そして、リドニスでは、未婚の女性を≪白の姫君(ホワイトワ)≫、既婚の女性を≪白の女王(ホワイトール)≫と呼んだ━━━━。

━━━━ジアルダークの南の都、ラッカルには、首都リドニスの様な、伝統的な風習はなく、ラッカルで産まれた女の子、シャンティ・ラモレットは、のびのびと育ち、15才の誕生日を迎えていた。

「おめでとう、シャンティ!」

沢山の少年や男性に囲まれ、パーティの主役になっているシャンティは、銀髪の巻き毛、桃色の瞳をして、華やかなドレスを着ていた━━━━。

「ありがとう、みんな!」

今日のシャンティの誕生日パーティは、ラッカルの町の複数あるホテルの内の一つで、行われていた。

今日、ラモレット家の娘4人は、みんな誕生日パーティなので、それぞれ、別会場のホテルで、お祝いが行われていた。

ジアルダークでは、12才までは、男女関係なく、毎年、誕生日が兄弟姉妹で被るので、同じ日に、同じ会場でパーティが行われるのだけれど、13才になったら、それぞれ、別に誕生日パーティを開くのが、普通だった。

「シャンティも、もう、15歳かぁ。そろそろ、彼氏の一人や二人、作ったりしないのかい?(笑)」

「や~だ~、ジークのエッチ!!」

はたかれたジークは、何だか嬉しそうだ。

ジークは、シャンティの家の近所に住む18才の少年で、ヤギの世話をして、暮らしていた。

パーティ会場には、他にも、女友達が数人と、シャンティの両親、祖父母、曾祖父母が来ていた。

ジアルダークの人間の寿命は、およそ200才で、結婚適齢期は、二十歳から三十歳。女性の初潮は、12歳くらいで、閉経は、120才くらいだった。

なお、パーティは、二時間くらいで締め括(くく)られて、両親たちは、時間をずらして行われる、他の娘たちのパーティに出席する事になっていた。

シャンティは、次女なので、今日は、昼の12時から、パーティが始まっていた。

長女テネシーは、朝9時から、三女ロゼッタは、昼の三時から、四女ハノイは、夕方6時から、誕生日パーティが開かれていた、

しかし、誕生日パーティが、こんなに盛大に開かれるのは、二十歳以下の女の子だけで、男の子は、子供の時なら、いざ知らず、13才を越えてからは、女の子ほどは、派手なパーティを開いていなかった。

女の子の誕生日パーティは、出会いの場でもあり、顔見知りでなくても、前もって、名前と住所と年齢と連絡先さえ規定の用紙に記入して予約を取って、身分証さえ提示すれば、誰でも参加出来るシステムだった。

なので、知らない男性も、複数いた。

また、ジアルダークの教育システムは、満6歳から満11歳までの六年間が、初等部、満12歳から満14歳までの三年間が、中等部、満15歳から満17歳までの三年間が、高等部で、満18歳からの四年間が、大学だった。

ジアルダークの学校は、男女共学が一般的で、男子校はともかく、女子校は珍しかった。

シャンティは、15歳を迎えたので、中等部の三年生だった。

シャンティの学校のクラス分けは、男子のクラスが、一つ40人で、5クラスの合計200人。女子のクラスが、一つ40人で、1クラスのみの合計40人だった。

なので、今日、シャンティの誕生日会に来ている女子数人は、中等部のクラスメイトだった。

また、ラモレットの4姉妹も、普通そうであるように、姉妹全員、同じ日に産まれているので、同じ家から通っているし、同じ学校の同じクラスにいた。

40人いる女子のクラスも、ほとんどが、双子や同じ日に産まれた姉妹だらけ。

学校の教師や職員も、ほとんどが男性だった。

今日のシャンティの誕生日パーティの参加者は、数百人で、普通の規模。

誕生日プレゼントは、山のような荷物になるので、誕生日までに、家に郵送するのが、一般的だった。

シャンティの家は、ラッカルの端の方の田舎で、父親が畑と牧場を経営しており、母親は、その近所でカフェを経営していた。

なので、ラモレット家の土地は広大で、シャンティの部屋は、6LDKの二階建ての民家、一棟で、そこに、猫二匹と、世話人の男性2人を住まわせて、一緒に暮らしていた。

「今年のプレゼント、クローゼットに入りきるかしら?」

「俺、今年は、シャンティに、珍しい花の種を贈ったぜ」

「まぁ、それは、ありがとう。ジーク」

「家の庭に、撒(ま)いてみ?きっと、キレイだから」

「それもそうね」

男性から女性への誕生日プレゼントは、お返ししなくても良い決まりだった。

なので、お返しがくれば、男性たちは、特別なので、喜んだ。

ジークの去年のシャンティへのプレゼントは、シャンティが飼っている猫二匹の新しい首輪だったので、シャンティは、お返しに、ジークに、靴を贈った。

(今年は、ジークに何を贈ろうかしら?)

シャンティは、今年は、ジークに、帽子を贈る事にした。

「お初にお目にかかります。私(わたくし)、ラッカルで領主を務(つと)めております、ガドットと申します。以後、お見知りおきを。この度は、15歳のお誕生日、誠におめでとうございます」

「ありがとうございます」

「良かったら、少し、バルコニーで話しませんか?」

「ええ」

いきなり断るのも角が立つので、シャンティは、葡萄ジュースのグラスを手に取ると、一緒に外へ出掛けた。

「シャンティさん、私も」

「私も!」

そうして、十数人がバルコニーへ向かった。

声をかけてきた男性たちは、みんな大人で、二十代から三十代くらいだった。

「シャンティさん、ますます、お美しくなられて」

一緒にバルコニーに行かずとも、遠くから思いを寄せている男性が、他にもいた。

首都リドニスで宮廷画家をしているリュックは、名残惜しそうに、シャンティを見つめていた。

「一度で良いから、シャンティさんの肖像画を描かせて欲しい」

「絵なんて、シャンティは興味ないと思うぜ?」

そう、目の前の料理を貪(むさぼ)りながら、興味無さげにシャンティの事を話すのは、隣人の21歳の男、ケイモス。

ケイモスは、鉱山で働く男で、今回シャンティの誕生日会に参加したのは、たらふく料理を食べられるから。

プレゼントには、安物の石鹸を贈っていた。

ジアルダークは、男性の数が、女性の数百倍なので、男性の仕事や経済力には、格差があり、ケイモスは、中等部を出てすぐ、鉱山で働いていた。

また、男性の中には、生涯、独身で暮らしたり、男性同士で恋愛や結婚をするケースも多く、ジアルダークの東の都、ナルメシストでは、男性同士のカップルで溢(あふ)れていた。

また、ナルメシストには、数は少ないが、女性同士のカップルもいた。

「なぁ、あんた、名前はなんて言うんだ?」

ケイモスは、むしろ、小綺麗なリュックに、興味を持っていた。

「僕??」

リュックは、驚いて、思わず口をつむぐ。

「リュックだよ」

仕方なく、自己紹介した。

「今日は、いろんな男性に声をかけられたけど、私、まだ、結婚なんて考えてないし、それに、ラッカルで女性が結婚出来るのは、20才からだから……」

「でも、15歳ともなれば、彼氏のいる子だって居るでしょ?」

パーティが終わって、シャンティの女友達数人は、シャンティと一緒に、誕生日パーティが行われたホテルに、そのまま宿泊した。

部屋では、夜、パジャマで女子会が開かれていた。

「いるいる。同じクラスのミリアンヌなんて、もう、彼氏を取っ替え引っ替えで、すでに第5彼氏までいるわよ」

「何それ!」

「他校の女の子なんて、月曜日から金曜日まで、曜日ごとの彼氏がいるって言ってたわ」

「ゴミの分別かよ!」

「あーあー、私も彼氏、作っちゃおうかなあ」

「やめときなよ、結婚するまで、処女で居ないと」

「首都リドニスの子じゃ、あるまいし」

「リドニスって、滅茶苦茶厳しいんでしょ?ホワイトール(白の女王)になるために」

「でも、産まれた時から、20才になったら、夫を毎月トーナメントで選んで、子供を毎月産むなんて、過酷過ぎる」

「私、ラッカルに暮らしてて、良かった」

「ラッカルで産まれても、希望すれば、ホワイトールの候補者、ホワイトワ(白の姫君)に、なれるんでしょ?」

「時代錯誤よ。誰がそんな事したがる子がいるの、ラッカルに」

「確かにね」

「それより、シャンティ。今夜は、シャンティに贈られて来た、男性陣のラブレターのお披露目会をしましょうよ(笑)」

「ラベンダーって、本当に趣味が悪いわね」

「何よ、ユリアの時もしたでしょ!」

「じゃあ、一番面白いラブレター、選んだ人の勝ち!!」

そして、ラベンダーは、ダブルベッドの上に、数十通の未開封のラブレターをばらまいた━━━━。



「ふん!」

カキーン!!

ジアルダーク国の中央にある首都、リドニスは、石で出来た広い要塞都市で、その中には、ホワイトール(白の女王)達が暮らす、それぞれの城と小さな城下町を、石の壁で囲った、上空から見ると、六角形の筒のような部分が無数にある、蜂の巣のような構造をした町だった。

リドニスで暮らす男たちの職業のほとんどは、兵士。

自分の女王の城と、戦争になれば、他国から、ジアルダーク国を守る兵士をしていた。

ここ、リドニスの外(はず)れ、サンマルク城という、古い城では、最近、新しい女王が迎えられ、めでたく、第一夫を選ぶトーナメントが、敷地内にある闘技場で、今まさに、行われていた。

ジアルダーク国のネデミーア女王の五番目の息子で王子、ガーディアスは、実力で、準決勝にまで、登り詰めてきた。

今日は、剣術で勝ち負けを決める日。

ガーディアスは、大きな剣をものともせず、バッサバッサと、対戦相手の腰につけた旗を、切り落としていた。

相手にケガをさせないように、左と右に、それぞれ違う色の旗をつけ、それを切り落とした方が勝ち、という判定になっていた。

中には、あまりに戦闘に夢中になり、相手にケガをさせてしまう参加者もいた。

カン!カン!

剣と剣とが、噛み合う音。

だがしかし、ジアルダークの王子であるにも関わらず、ガーディアスは、たくましく育ち、ヘミング国王もそうであったように、見事、何の不正もせず、正々堂々と勝ち残り、その日は、優勝した。



「明日は、馬術の競争か……」

サンマルク城の小さな城下町にある、小ぶりな宿の部屋で、夜、休むガーディアスは、後、二週間続く日程を確認していた。

明日が、馬術、次の日が、体術、その次の日がサバイバル術━━━━。

後半の二週間の予定は、戦闘術ばかりが残っていたが、前半二週間は、法律、歴史、ディスカッションなど、座学系の競争が続いた。

1ヶ月間で、28科目の成績が比べられ、トーナメント優勝者が決まるのだった。

選考科目は、必須の戦闘科目以外、この度、ホワイトール(白の女王)になる、ニーナ姫がお決めになっており、他のホワイトワ(白の姫君)は、中には、音楽や料理、考古学や絵画など、兵士とは全く関係ないような科目を選んできた姫達もいた。

ニーナ姫が選んだ特徴的な選考科目は、経済、地理、外国語などで、外交や経済的な発展、地理的条件など、戦争になった時の事も考えて、富国強兵を狙った、マニフェストだった。

「俺は、このまま、ニーナ姫の第一夫になれるのか?」

ガーディアスは、今年、25才になる、若い男だったが、夫選びのトーナメントに参加するのは、初めてで、競争では、快進撃を続けていたが、イマイチ自信がなかった。

「ニーナ姫……」


ガーディアスは、ニーナ姫の写真を眺めて、宿の窓から見える星を見つめた。



後、二週間で20才になる、サンマルク城のニーナ姫は、リドニス内の他の城でも行われている、姉妹の夫選びトーナメントの話が、気になっていた。

「お姉さまたち、選考、上手く行っているのかしら?」

自身の夫選びトーナメントは、毎日、会場で見守っているものの、これを毎月やるとなると、これからの日常生活に、気が滅入っていた。

この分だと、ほぼ休みがない。

「こんな生活を100年も続けるなんて……」

結婚する20才から、閉経する120才まで、毎月5人子供を生んで、6000人の計算になる。

立派なホワイトール(白の女王)になるためには、険しい道だった。



ホワイトール(白の女王)の夫に選ばれた1ヶ月間は、その夫に、ホワイトールと子供を作る権利が与えられていた。

なので、夫の寝室は、女王の隣に作られており、すぐ脇には、浴室とトイレも設置されていた。

「信じられない。後、二週間で、ここに夫がやってくるなんて」

ニーナは、リドニス出身の娘だったので、ニーナの母親は、ホワイトール(白の女王)だった。

なので、自分もホワイトールになるのが、普通だと考えていた。

けれど、親友の女、メルケルが、リドニスを飛び出すと聞いて、ニーナの心は揺れた。

メルケルは、今、ジアルダークの北の都、イグダドで、保育士をして、暮らしていると言う。

「お母様、私、立派なホワイトールに、なれるかしら??」

ニーナも、サンマルク城の窓から、星を見上げた。



━━━━シャンティの誕生日パーティーが開かれた日のの深夜、シャンティの弟たちは、さきいかとビールで、未成年飲酒をしながら、四人部屋で、姉四人の噂をしていた。

「良いよな、姉さんたち四人は、女だからって、タダで、スポンサーたちに、ホテルで誕生日パーティー開いてもらって」

「しかも、今日は、豪華なスイートルームの宿泊費もタダらしいから、女友達数人と、夜、ホテルで遊んで来るらしいぜ?」

「スポンサーの男たちは、名前も売れるし、姉ちゃんたちに、カッコいい所も見せられるし、お近づきにもなれるし、一石三鳥だぜ」

「姉ちゃんたち、スナップ写真も、そこそこ売れてたからなぁ」

「女ってだけで、プロのカメラマンに、写真撮ってもらえるなんて、このラッカルって都は、どうかしてるぜ!」

「ジアルダークでも、一般人女性が、写真集出すなんて、ラッカル以外では、聞いたことないからな」

「ラッカルに産まれた女は、幸せ者だよ」

「他の国では、子供は国の宝って言うらしいけど、ラッカルの場合は、違うよな(笑)」

「女は、国の宝だって、爺ちゃんが言ってた」

「ほらな」

「あぁ、俺も女に産まれたかったぜ!」

シャンティの母、フィオーレは、35才で、夫が70番目までいたのだが、それに伴って、父親の違う弟たちが、シャンティには、沢山いた。

が、第一夫で。シャンティの父親、ジェラルド・ラモレットの子供は、シャンティを含めた娘四人と、息子120人だけで、他の夫や他の夫との息子たちとは、別に暮らしていた。

息子たちは、息子舎という建物を作ってもらい、その中に、120人が、四人部屋で、20人の世話人の男たちと一緒に暮らしていた。

これは、その四人部屋での会話である。

「姉さんたち四人だけは、女だからって、自分の家までもらって」

「6LDKなんだろ?二つの部屋は、世話人の男たちが使うから、一人、四つの部屋が使えるなんて、贅沢な。俺たち、四人で一つの部屋なんだぜ??」

「母さんと父さんの屋敷に比べたら、小屋みたいなもんだけど」

「母屋は、30LLDDKKだもんなぁ。世話人の男たちも、12人もいるし」

「父さんは、やっぱり、長男のアレックスに、将来、畑と牧場を任せるのかなぁ」

「アレックス兄さんは、農学部を大学院まで行ってから、家の仕事を引き継ぐらしいぜ」

「俺もせめて、長男に産まれたかったなぁ」

「所で、母さんは、今日、どこにいるんだよ」

「最近、新しい恋人が出来たとか、言ってたぜ」

「70人も夫がいるのに、よくやるぜ」

━━━━ラッカルの女性たちは、一生、一人の男性だけを夫にする事は、まれで、多くの場合、沢山の恋人や、第二以下の夫たちが数多くいて、逆ハーレム状態だった。

ラッカルの結婚システムでは、女性は、百番目までの夫を持つ事が出来て、男性も重婚が認められていた。

ラッカルには、恋愛において、奔放な人が多く、同じジアルダーク国の北の都、イグダドには、一生、一人の異性を愛し、添い遂げると言う、厳格な結婚をする都もあった。

また、西の都、テヘネロは、ジアルダーク国の中で唯一、男女共に、12才で結婚する事が認められた都で、早熟の都と言われていた。

だが、大人として認められるのは、20才で、結婚だけは、早くから出来る仕組みになっていた。

また、ジアルダーク国では、どの都においても、女性が初産で産んだ女の子らの父親が第一夫になる事を最重要視しており、女性は、結婚すると、第一夫の名字を名乗った。

また、何かの事情で結婚出来ず、シングルマザーになってしまう女性は、子供を放棄する事が非常に多く、特に男の子は、孤児院に溢れていた。

フィオーレの娘四人、テネシー、シャンティ、ロゼッタ、ハノイは、畑や牧場は、女なので、引き継げなかったが、将来、就職をするにしても、しないにしても、結婚する事で、未来は、明るかった。

何故なら、ラッカルには、金持ちは沢山いたからである。

シャンティの15歳の誕生日の二週間後の昼間。

「━━━━シャンティ姉さん、15歳になってもう、二週間だね(笑)」

「早いもんよね、この分だと、あっという間に20才になりそうだわ」

「あはは(笑)所で、シャンティ姉さんは、どんな人と将来、結婚するつもりなの?」

「さぁ、まだ、わからないわ」

「出来れば、金持ちの男と結婚してくれよ、父さんみたいなね」

「パトリックったら」

シャンティの一つ年下、14歳の、第20番目の弟のパトリックは、姉、シャンティの家のリビングに遊びに来ていた。

「だって、姉さんが金持ちと結婚してくれれば、実家の畑と牧場、もっと大きく出来るかもしれないだろう?」

「全く、私は金づるじゃないんだから」

「良いよな、女って、結婚するだけで、大金持ちになれるチャンスがあって。男なんて、仕事にありつくのが、やっとなのに。俺も、首都のリドニスに行って、トーナメントを勝ち残ったら、せめて、自分の好みの女の子の第一夫になれて、娘をもうければ、俺も、娘たちのお陰で、出世とか出来るのかなぁ」

「かもしれないわね。でも、競争率高いわよ?当たり前だけど(笑)」

「普通の男はみんな、女と出会って話すだけでも、一苦労だからね。結婚や出産にまでこぎつけられる男なんて、ごくわずか。恋人になれるだけでも、奇跡だもんね」

「それもこれも、男女比がおかしいからだ。男が女の数百倍いるなんて、ありえないんだよ」

「おかげで、ジアルダークの女たちは、何もしなくても、みんなモテモテだし、どんな男からも厚待遇されるもんね」

「幸せだよ、特に、百番目までの夫と同時に結婚できるラッカルなんて。夫を一人しか持てなくて、しかも、その夫がトーナメントで連勝出来なきゃ、毎月他の夫に変わるリドニスに比べたら、天国さ」

「あー、女に産まれて良かった♡神に感謝ね」

「本当に、その通りだよ」

(それにしても、ホワイトワの夫選びトーナメントかぁ、一回は、見てみたいわね)

シャンティは、いつか、リドニスまで、そのトーナメントを見学に行きたいと考えるように、なっていた。

「━━━━で、ね、一度、このメンバーで、リドニスの夫選びトーナメント、見に行ってみない?」

学校の中庭で、昼休み、制服姿のシャンティの女友達たちは、その提案に、様々な意見を述べた。

「私は、行きたくない。リドニスまで行って、ホワイトワ(白の姫君)に、勧誘されたら嫌だし」

「今、数少ないって聞いてるもんね、ホワイトール(白の女王)になりたい希望者、あんまり居なくて、城、いくつも空いてるんだとか」

「私、テヘネロに旅行に行った時、その告知ビラ、見たことある。切実だよね」

「逆に、強いイケメンを漁(あさ)りに行ってみるとか(笑)」

「サリーは、それで良いんでしょうけど、私達は、第一夫は、ラッカルの男じゃないと嫌よ!束縛されたり、ストーカーになられても、困るし。ある程度、他の男と恋愛する事に、寛容な男じゃないと」

「それは、言えてる(笑)」

「ねぇ、なんで、シャンティは、そんな、血生臭いリドニスなんかに行きたいの?」

「会いたい人が居るの」

「会いたい人?」

「うん、リドニスの夫選びトーナメント荒らしのスティーブ」

「何それ」

「私、聞いたことある。リドニスのホワイトール(白の女王)たちの第一夫に、立て続けになってる、トーナメント荒らし、こと、殿堂入りの男の人の事!」

「ええええ、でも、第一夫って、そんなに複数、なれるの?」

「なれるらしい」

「初めて聞いた」

「どんな男の人なの?」

「それが、謎の多い男の人で━━━━」

≪神出鬼没。ひょっこり、縁もゆかりもないホワイトワ(白の姫君)の夫選びトーナメントに、顔を出すらしいわ━━━━≫

ニーナ姫の夫選びトーナメントが行われている、リドニスにある、サンマルク市国の闘技場に、一人の男が現れた。

それは、左手薬指に、沢山の指輪をした、若い男だった━━━━。

「今日こそ、シャンティちゃんに、話しかけるぞ!」

同じ学校の同級生の男子、トーマスは、朝、校門前で、話しかける挑戦を始めて3日が経っていた。

でも、他にも話しかけようとする男子がいて、なかなか上手くいかないのだ。

「女子とお近づきになれるのなんて、学生の時くらいだもんな。共学に入れなかった男子どもは、憐(あわ)れ」

「競争率、激しかったもんなぁ、この学校も」

「お前、同級生の女子、誰がタイプ?」

「俺は、ユリアちゃんかなぁ。清楚で可憐」

「俺は、ラベンダーちゃん。元気溌剌(げんきはつらつ)で、健康的な所」

「シャンティちゃんだって、天然でドジっ子で、カワイイんだぞ!」

「はいはい、わかったよトーマス」

「誰か、トーマスを止めてくれ」

「それにしても、まだ、今日、シャンティたち、見えないな」

シャンティの男友達、クリスが、通学路にシャンティたちがいないか、探す。

「お前、知らないのか?ラベンダーたち、この数日、リドニスの夫選びトーナメントの見学へ行ってるんだぜ?」

もう一人のシャンティの男友達、ランディは、少し前、通りかかった学校の中庭で、女子たちの話を聞いたのだ。

「なんだって━━━━?!!」

≪つづく≫

【リンク】


◆「幸せな女たち」(第二話)

https://note.com/sumirena7/n/nd5af7f27a267

【あとがき】

三回書き直した小説です(笑)

【登場人物】

◆シャンティ・ラモレット
銀髪に、桃色の瞳の少女
15歳
ラモレット家の次女
◆ジーク
シャンティの家の近所に住む18才の少年
ヤギを飼って、暮らしている
◆テネシー
シャンティの姉、長女、15歳
◆ロゼッタ
シャンティの妹、三女、15歳
◆ハノイ
シャンティの妹、四女、15歳
◆ガドット
ラッカルの領主の男
◆リュック
リドニスで宮廷画家をしている男
◆ケイモス
鉱山で働く21歳の男
シャンティの隣人
◆ミリアンヌ
第5彼氏までいる、シャンティのクラスの女の子
◆ラベンダー
シャンティのクラスメイトの女子
◆ユリア
シャンティのクラスメイトの女子
◆ネデミーア
ジアルダークの女王
◆ガーディアス
ジアルダークの女王の五番目の息子
◆ニーナ
ホワイトワ。サンマルク城のホワイトールになる予定
◆メルケル
ニーナの親友の女
◆フィオーレ
シャンティの母、35才
◆ジェラルド・ラモレット
シャンティの第一父親
◆アレックス
シャンティの1番目の弟
◆パトリック
シャンティの20番目の弟
◆サリー
シャンティの女友達
◆スティーブ
リドニスの夫選びトーナメント荒らしの男
◆トーマス
シャンティを好きな同級生の男子
◆クリス
シャンティの同級生で男友達
◆ランディ
シャンティの同級生で男友達



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