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野花の様な君と(読み切り)
◆
≪野生の花は、摘まずに、生き生きと、その場で、咲いているから、美しい━━━━≫
◆
━━━━西暦2024年3月のとある平日
どこにでもいる女子高生たちが、教室で、休み時間、話をしていた。
「いよいよ来月だね、ベーシックインカムの初の給付日」
「毎月、15日だっけ?」
「そうそう」
「毎月、働かずに、国から50万円ももらえるなんて、夢のようだよね!!」
「しかも、子供まで満額もらえるなんて、まさに、神!!」
「ついに、この時代が来たって感じね」
「私、毎月、何に使おうかな?!夢の一人暮らしだって、出来ちゃうもんね!50万円もあれば!」
「私は、毎月、旅行に行こうかな?!」
「私は、毎月、高い化粧品買う!!」
「あぁ、早く、4月15日の月曜日にならないかなぁ~♪」
◆
日本の街角や電車の中では、ベーシックインカムの告知広告があちこちに貼られ、ニュースや新聞でも、頻繁に報道されていた。
もはや、日本で、ベーシックインカムの事を知らないのは、誰も居ないかと言う様に。
給付は、毎月、登録された口座に振り込まれる様になっていて、その手続きを済ませる様に、しきりと、テレビやインターネットでも宣伝されていた。
そして、ついに迎えた給付日の前日、4月14日の日曜日には、東京オリンピックが行われたドームで、朝10時から、静粛に記念式典が開かれ、総理大臣から国民全員に、新しい生活への心構えなどが、話された━━━━。
◆
━━━━そして、迎えた、4月15日、月曜日の午前0時、
「3、2、1、ベーシックインカム万歳!!」
日本から、ついに、貧困がなくなるその日がやって来た。
日本のいろんなイベント施設では、花火が上げられ、カウントダウンが行われた。
町中は、朝も昼も夜も、お祭り騒ぎ。
「俺達、労働者が、労働者じゃなくなる日が、やっと来た!!」
「明日からは、もう、働かないぞ~~!!」
その日だけは、ベロベロに酔ったスーツ姿のビジネスマンやビジネスウーマンたちが、道端に、溢れかえっていた。
◆
━━━━そして、迎えた、4月15日月曜日の朝、
各地の銀行やATMには、行列が出来ていた━━━━。
「入金、されてたー!!」
「よっしゃ、今から飲みに行こうぜ!!」
都合のつく大人たちは、みんな一斉に記帳していた。
「━━━━記帳、しておいたわよ」
「ありがとう、ママ!!」
ドタバタと、夕方、やっと学校から帰ってきた、セーラー服姿のままの四織直子(しおりなおこ)は、急いで、母から銀行の預金通帳を奪い取った。
直子は、熊本で暮らす普通の14才の中学二年生。
家族は、シングルマザーの母、道子(みちこ)だけの、二人暮らし。
家は、築40年の3DKの団地。
(ちなみに、全部、和室)
直子の部屋は、六畳の和室で、ベットと学習用の机と椅子が置かれていた。
近所のスーパーマーケットのレジ打ちをしている、パートの母親の収入では、正直、貧しい暮らしをしていた。
しかし、母にも、直子にも、毎月、国から50万円がもらえる生活には、もう、貧困と言う苦しみは、無い。
「ママにも、ちゃんと、入ってた?!」
自分の通帳に、50万円、きちんと入金されていたのを確認した直子は、念のため、道子の通帳も確認した。
「ちゃんと、入ってる!!やったー!!今日、学校行ってる時も、気になって、仕方がなかったのよ!!他の生徒なんて、学校休んでる人も居たのよ?!ズルーい」
「はいはい、確認したら、直しておくわよ?」
「はーい」
そして、直子は、道子と直子の通帳を道子に渡した。
母、道子は、直子から見ると、いつもと変わらず、ホッとした様子はあるものの、いつもと大して変わらなかった。
「ママ、嬉しくないの?」
「そりゃ、嬉しいわよ。助かるし、でも、仕事は、辞めない。人、居ないと困るから、店」
「ええ、もう、仕事なんて辞めても良いじゃん。で、一緒に旅行とか、行こう?ずっと、行きたかったでしょ?」
「そりゃ、そうだけど……」
「ママ、折角なんだから、早速、お祝いしようよ!私、とりあえず、1万円、下ろしてくる。で、お刺身とか、からあげとか、買ってくる♪あ、ケーキも食べよう?!」
「早速、無駄遣いし過ぎじゃない?」
「大丈夫大丈夫、私のお金なんだし、テレビで、子供のお金も、きちんと子供に使わせるようにって、言ってたよ!自分で、使ったり、管理する事が大事なんだって」
「わかったわよ」
「じゃあ、カードで下ろしてくる。記帳もしておくから、また、通帳、ちょうだい」
「はい」
そうして、また、直子の通帳は、直子の手に戻った。
「あ、買い出し、多くなるから、やっぱり、一緒に来て?一人じゃ持てないから」
「わかったわよ」
その日の直子の家の食卓は、いつになく、豪華だった。
◆
━━━━次の日、学校では、ベーシックインカムのお金の使い道に関しての話題で、持ちきりだった。
「ねぇねぇ、昨日、何かに、ベーシックインカムのお金、使った?!」
「使ったー!!(笑)」
「私も!!」
昨日の夜は、どこの家庭も、豪華な食事を取った様だった。
中には、小さな店を貸し切って、パーティーを開いた男子も居たらしい。
「ねぇ、直子。明日、4人で、近くの美容室行こうよ」
4人とは、声をかけてきた友子(ともこ)と、和子(かずこ)と、幸子(ゆきこ)と、直子の事。
直子は、この4人でいつも一緒にいた。
「もちろん!私、いつも、1000円カットだったから、すごく楽しみ!!」
「じゃ、決まりね★」
━━━━翌日の夕方。
学校帰りの通学路にある、近所の美容室には、制服姿の小学生や中学生で、溢れかえっていた。
「こんなに、子供が居るの?!」
「さすが、ベーシックインカム様々って感じね(笑)」
「今日は、どんなカットにされますか?」
「はい、寝癖がつかない、セットしやすくて、可愛い髪型にして下さい!」
「四織さんは、中学生だよね?カラー以外のストレートバーマとカットとシャンプーなら、良いかな?」
「はい、よろしくお願いします!」
直子は、待っている間、出されたオレンジジュースとクッキーを飲食しながら、雑誌を読んでいた。
鏡の手前に置かれた、直子の学校のバックには、4人でお揃いの、ベーシックインカム記念グッズのキーホルダーがつけられていた。
4人は、オシャレな髪型になって、家に帰った。
そして、その週の日曜日には、4人で、ショッピングモールに出掛けて、爆買いをした。
町の中には、前以上に、オシャレな人で溢れ、人々は、陽気に活気づいた。
◆
「ねぇ、私達って、将来、どうするの?」
ふいに、友子が、放課後、直子たちに、話しかけてきた。
「私は、いろんな学部の大学に、数個くらい行きたい。学費も、ベーシックインカムを貯めて、払って、大学行きながら、小説を書いて過ごしたい。13才の時に市役所に提出した、ビジネスネームも、小説を書く時のペンネームにする予定なんだ♪」
直子の夢は、小説家だった。
ちなみに、ビジネスネームとは、個人情報保護の観点から、仕事用に使う二次的な名前で、戸籍と紐付けされていた。
この世界の日本では、中学生になる時に、登録する。
「私は、グラビアアイドル。スタイルには、自信があるから、今からでも、雑誌に載りたいな。年を取っても、若くいたいし」
友子の夢は、グラビアアイドル。
「私は、弟が自閉症だから、自閉症の人達だけで暮らす小さな町を作りたい。だから、そのために、熊本県知事になりたい」
和子の夢は、知事。
「私は、子供嫌いだし、前、親が離婚して、大変だったから、将来、結婚したくないから、友達とアパートの隣同士で、仲良く暮らしたい。出来れば、ペットも飼いたい。猫が好きだから、猫カフェ経営とか、やりたいな」
幸子の夢は、猫カフェ。
「ていうか、今からでも、アパート、隣同士で暮らさない?!(笑)」
「それ、ナイスアイデア」
ベーシックインカムが始まって、あっという間に、2ヶ月が過ぎようとしていた。
4人でゴールデンウィーク中、東京観光にも行った。
カフェ巡りもしたし、一泊2日の温泉旅行にも、遊園地にも行った。
やりたい事は、あらかた、やり倒した直子たちは、次、何をするか、話し合っていた所だっだ。
「実質、4人暮らしかぁ、楽しそうだね」
「やってみようよ!」
「じゃあ、早速、親の許可取ってから、不動産屋へ行こうよ!!」
直子たちは、新しくやりたい事を見つけた。
◆
━━━━1ヶ月後。
4人は、通っている学校の近くの二階建てアパートを借りていた。
全部の部屋が、1LDKの間取りだった。
部屋は、洗濯物の防犯対策で、2階の、左から、201号室(直子)、202号室(友子)、203号室(和子)、204号室(幸子)、にした。
「まさか、中学生で、本当に家が借りられるとは、思わなかったわ(笑)」
「言い出しといて(笑)」
「これもそれも、ベーシックインカム様のおかげよ」
「でも、ママには、ちょっと、悪かったわね、早く一人暮らし始めちゃって」
「直子のママ、心配してたし、寂しそうだったもんね、ちょっと」
「まぁ、ママもこれで、新しい恋愛が出来ると思うし、良かったと思うよ」
「━━━━へっくし」
直子の母、道子は、噂をされ、くしゃみをした。
━━━━201号室の直子の部屋は、LDKに、大胆にも、ベットを3つ繋げて置き、四脚の椅子がついた、ダイニングテーブルを学習机兼食事用テーブルにしていた。
空いている部屋は、丸ごと、クローゼットにした。
憧れの一人暮らしに、直子は、ワクワクしていた。
ベーシックインカムのおかげで、小説を書くための資料になる本も、沢山買って、読める。
「焼き肉パーティーしようぜ!!」
202号室の友子が、夕飯、一緒に食べようと、声をかけてきた。
友子の部屋は、LDKに、ダイニングテーブルと椅子四脚、三人がけのソファーを二つ向かい合わせで置いて、そこに、ローテーブル、そして、テレビを置いていた。
余った個室は、学習机とベットを置いていた。
いつも、集合する時は、だいたい、友子の家になっていた。
━━━━一方、母、道子も、新品の軽自動車を買って、直子たちの近所の新築アパートに引っ越した。
道子は、美容に目覚めて、とてもキレイになって、新しい恋人が出来て、市役所に交際届を出していた。
日本中の人達が、まるで、みんな、輝いて見えた。
誰もが、明日が来る事を楽しみに思えた。
そんな日常が、当たり前の世界が、ついにやってきたのだ。
◆
━━━━昼間の繁華街。
ドンッ
「おっと、すまない」
体格の良い男性が、少年の肩にぶつかり、軽く謝った。
少年も、それに応える。
「いえ」
ベーシックインカムが始まってもう、3ヶ月。
町の中は、随分、活気に満ちて、前より暮らしやすくなったな。
スタバのカフェのテラス席から、町の様子を伺うさっきの少年は、ノートパソコンを開きながら、メロンフラペチーノを飲んでいた。
町の中って、こんなに人、多かったんだな、まるで、平日も、休日みたいに、人が多い。
「父さんの言う通りだ」
これで、治安がだいぶ良くなる。
少年の名前は、ゼノア・ルドネーデス。
ビジネスネームは、レオン・ロックハートといった。
外見は、銀髪の長髪に、青い目の外国人。
年は、14才。
でも、特別に運転免許証を所持していた。
それは、海外でライセンスを取っていたからだった。
パタンと、ノートパソコンを閉じると、高級車で、どこかへ消えてしまった。
◆
━━━━直子は、久しぶりに、引っ越した道子の部屋に、買ったばかりの自転車に乗って、朝から遊びに来ていた。
「母さん、時給3000に上がったって、本当??」
「ええ、働かない人が増えたから、逆に時給が上がって……」
「へぇ、良かったね」
「まだまだ、上がるらしいのよ。はら、スーパーマーケットの商品って、日常的に必需品だから」
「そりゃそうだよね」
「今、週四回働いてるんだけど、もっと、シフト増やして欲しいらしいわ」
「ありゃりゃ」
今日は、日曜日。
デートの約束がある道子は、直子を置いて、出掛けていった。
「じゃあ、私も帰ろうかな」
合鍵で、戸締まりをして、自転車に乗り、家まで帰る。
その帰り道、川の河川敷で、野花が咲いているのを見つけた。
オオイヌノフグリ。
ネモフィラみたいな、青くて小さい花だった。
思わず、立ち止まって、自転車を止める。
しばらく、野原の上で、日向ぼっこをして、帰る事にした。
今日は、たまたま、友子たちも、それぞれ用事があって、暇だった。
直子は、寝転んで、野花の中に埋もれた。
◆
「━━━━日本人なのに、珍しいね、日光浴してるなんて」
見上げると、そこには、外国人のあの少年、ゼノアがいた。
「そう?」
「隣、良いかな?」
「どうぞ」
何故かよくわからないが、突然、外国人の少年と日向ぼっこをする事になった。
ゼノアは、近くに車を止めて、散歩していた。
「家、近所なんですか?」
「敬語じゃなくて良いよ。あぁ、今は近くのホテルに住んでるよ」
「ホテル住まい?!凄すぎ」
「そんな事無いよ、ビジネスホテルなら、1日1万円もしないし」
「でも、ビジネスホテルなの?観光客用のホテルじゃなくて?」
「ビジネスホテルだよ。一番広い部屋だけどね」
「さすが、お金持ちなんだね」
「君、名前は?」
「私は、中山田(なかやまだ)こはな、ビジネスネームだけどね」
「初対面だから、当たり前だよ。僕のビジネスネームは、レオン・ロックハート。小さい頃から、日本で暮らしてるんだ。最近、熊本に来た」
「だから、日本語上手いのね、どこの国の人なの?」
「アメリカさ」
「あら、素敵な国ね」
「そうかな?」
「そうだよ、私、アメリカ人に産まれたかったなぁ」
「それは、僕もアメリカ人で良かったと、思うけど……」
「そうでしょ?(笑)」
「僕、本当は、物凄い秘密を抱えてるんだ」
「なあに?」
「言えるワケ、無いよ」
「じゃあ、なんで、秘密がある事、教えてくれたの?」
「…………」
そうすると、二人は見つめ合った。
「これ、僕の連絡先」
「え?何、突然」
「この名刺に、僕の仕事用の携帯電話番号が載ってる。良かったら、連絡して」
「なんで、私?」
「誰でも良いから、話したいのかもしれない……」
「じゃあ、今度、話、聞くよ」
「ありがとう、こはな」
「またね、レオン」
そうして、不思議な出会いが終わった。
◆
━━━━帰宅後。
「すごく高そうな、キレイな名刺」
何の仕事、してるんだろう。
同い年くらいだったけど。
ピンポーン
すると、直子の部屋のインターフォンが鳴って、和子が、晩御飯を4人分作ったから、一緒に食べようと、誘ってくれた。
「今から、行く~」
直子は、その名刺を名刺入れに入れて、和子の部屋、203号室へ急いだ。
━━━━その夜。
ピロリン
ゼノアの仕事用の携帯電話に、ショートメッセージが届いた。
送信元は、知らない電話番号からだったが、それは、もちろん、直子からだった。
≪今日は、名刺、ありがとう、レオン。これが、私の仕事用の携帯電話番号。名前は、中山田(なかやまだ)こはな、って書くよ。電話帳に登録しといてね≫
ゼノアは、真っ先に、返事を返した。
≪連絡、ありがとう。こはな。早速、今度、君が時間がある時に、遊びに来てよ。学生だろ?また、日曜日が良いかな?≫
≪うん、日曜日が良いかも≫
≪じゃあ、決まりだね、来週の日曜日、白川ビジネスホテルの最上階の2501室に、朝10時に来て≫
≪わかったわ、じゃあ、その日時に≫
━━━━直子は、誰にも内緒で、そこへ行く事にした。
秘密をバラしては、いけないと思ったから。
◆
━━━━そして、次の日曜日。
「ここが、白川ビジネスホテル」
そこは、25階建ての新しいビジネスホテルだった。
一応、最上階は、スウィートなので、レオンに言われた通り、フロントに、部屋に呼ばれている事を伝えて、案内してもらう事にした。
「承(うけたまわ)っております、こちらへどうぞ」
若い男性ホテルマンに案内されて、エレベーターに乗り、最上階まで来た。
そして、そのホテルマンが、チャイムを押して、レオンがロックを解除した後、ドアを開けてくれた。
「ようこそ、我が家へ(笑)って言っても、ほとんど荷物は無いけどね」
「レオン、名刺には、特に職業が書いてなかったけど、レオンは、普段、どんな仕事をしているの?」
「普段は、投資家かな。見せてあげるよ」
すると、レオンは、いつも持ち歩いているノートパソコンを開いて、株などの取引の画面を見せた。
「うわぁ、なんかよくわかんないけど、難しそう。凄いね」
「こはなは、今、中学生くらい?」
「うん」
「将来、どんな仕事、したいの?」
「小説家かな、才能無いけど(笑)」
「見せてよ」
「嫌よ、恥ずかしい」
「今度は、こはなの番だろう?(笑)」
「わかったわよ」
直子は、自分が今、投稿している小説を見せてくれた。
「へぇ、思いの外、ちゃんとしてる(笑)」
「どういう意味よ」
「さっき、自信がない、みたいに話していたからさ」
「だって……」
「じゃあ、小説は、今度、読んでおくよ。早速、僕の話を聞いてもらっても良いかい?」
「もちろん。そのために、来たんだから」
「助かるよ、わざわざ、時間を作ってくれて、 どうもありがとう」
「で、その秘密って━━━━?」
◆
ゼノアは、直子にお茶とお菓子を出すと、席に座って、話をしてくれた。
「僕、実は、この世界を牛耳ってる、世界屈指の資産家の息子なんだ……」
「へぇ、凄いじゃない」
「それだけじゃないんだ、父さんは、世界を支配するために、いろんな悪い事を……」
「そうなの?」
「わからない……」
「かもしれないって、だけでしょ?」
「いや、している、と、言った方が良いのかもしれない」
「何よ、歯切れが悪いわね」
「済まない。自分から、話したいと言っておいて」
「別に良いけど」
「それで、それが一体どうしたの?」
「僕の家は、母さんの実家も資産家の家で、父さんと母さんは、お互い資産家同士で結婚したんだ。しかも、親同士が決めた結婚で」
「あら、よくある話ね」
「父さんは、恋愛は、お互い秘密にしている事があって、当たり前だと言うけれど、僕は、恋愛において、隠し事なんて嫌なんだ」
「なるほどね、で、レオンも許嫁を決められていたりするの?」
「あぁ、母さんの実家の娘で、僕のイトコの子だよ」
「私は、親を泣かせる用な事は、しない方が良いと思うけど」
「僕の家は、親が決めた相手以外と、結婚は、許されないんだ。例え、子供が出来ても、結婚出来ないし、家族にもなれない……」
「だったら、交際だけは?」
「それは、沢山しても良いんだってさ。ただし、正体は隠して」
「すでに、恋人でもない私に、話しちゃってるじゃない(笑)」
「そうなんだよ」
「知ってしまったら、どうなるの?」
「資産を狙うようなら、殺される。前に、そんな人、いたらしいし」
「ひゃ~こわっ」
「聞かなきゃ良かった?」
「聞かなきゃ良かった(笑)」
「プー、クスクスクスクス」
「あはははははは」
「━━━━私の本名は、四織直子よ。熊本市内の花陵中学校って学校に通う、14才の中学二年生」
「良いの?本名、教えちゃって」
「これで、ちょっとは、お互い様よ(笑)」
「なるほどね(笑)」
「今回は、さっきの話、聞かなかった事にしてあげる(笑)少しは、話して、スッキリしたでしょ?」
「ありがとう、恩に着るよ」
「ついでに、もう1つ、秘密を暴露すると、僕はまだ、君と同じ14才なんだ」
「車の運転してたのに?!」
「海外でライセンスを取ったのさ、昔、F1やってたからね」
「身長高いから、18才位なのかと思ってた」
「まだまだ伸びるよ、今は172cmしかないけど、父さんは、186cmあるから」
「それは驚いたわ」
「また、遊びに来てくれる?」
「もちろん、今度は外に出掛けましょう(笑)」
二人の会話は、意外と早く終わった。
「また、白川の河川敷へ、散歩しに行くよ」
「その時は、また、日光浴しましょう」
直子は、その日の事を誰にも話さず、胸の中に閉まって置いた━━━━。
◆
それから、ゼノアと直子は、親友になった。
十年後、ゼノアは、同じく世界屈指の資産家の家の娘、ネルール・アーツヴァールと言う子と結婚して、子供を作った。
「今でも、僕は、あの時、直子が、僕の友達になってくれて、良かったと思ってるよ。僕、本当は、おの時、君を恋人にしようと思っていたからね、ほんの少しだけど(笑)」
「今の話も、聞かなかった事にしてあげるわ(笑)」
24才になった直子は、今日も、地元の大学に通いながら、小説を書く暮らしをしていた。
もちろん、あの4人のアパートで━━━━。
≪おわり≫
【登場人物】
◆四織直子(しおりなおこ)
14才、中学二年生の女の子。美少女。
ビジネスネームは、中山田こはな。
黒髪に黄色の瞳。
◆道子(みちこ)
直子の母。シングルマザー。スーパーマーケットのレジ打ちのパートをしている。
◆友子(ともこ)
直子の友達。
◆和子(かずこ)
直子の友達。
◆幸子(ゆきこ)
直子の友達。
◆ゼノア・ルドネーデス
14才のルドネーデス家の息子。
銀髪で青い目。
普段は、レオン・ロックハートと言うビジネスネームを使っている。
◆ネルール・アーツヴァール
14才。ゼノアの許嫁で、ゼノアのイトコ。
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