『グスコーブドリの伝記』を読んで

鶴と亀が合わせて9匹います。足の数は合わせて26本です。鶴と亀はそれぞれ何匹いますか?

私はこれを自力で解けるまで3ヶ月かかった。
中学入試対策のため小学5年生の春から塾に通い始めた私は、普通の小学生が全く触れないようなことまで勉強することとなり、初めにぶつかった壁が鶴亀算だったのだ。

数学を知っている人なら、こんな問題はいとも簡単に解けるだろう。しかし未知数を使った計算を許されない小学生たちは、これを算数の分野で解かなければいけないのだ。

塾は水曜と土曜にあったので月曜は国語、火曜は算数と宿題をやる日を科目ごとに決めていた。火曜の夜は算数の宿題をやるというだけで憂鬱になっていた。今日は何時に寝れるのだろうか。

母と妹が寝静まった後も父に算数の宿題を解説してもらう。日付が変わる前に寝れたことは殆ど無かった。

そんな算数も紅葉が散る頃には苦手どころか得意になっていた。私の目指す中学は県内で中堅ほどの難易度だったが、算数だけは県内トップ中学を目指す同級生と遜色のない偏差値を模試で取れるようになっていた。

本当は中学受験に合格することが目標だったにも関わらず、あの時私は自分と父の睡眠時間を確保すること、もっと言えばただ宿題を提出するためだけに必死に火曜の夜をやり過ごしてきた。

目の前のことに"いっしょうけんめい"で視野が狭い状況はゴールが見えず大変苦しい。しかしそんな時、ふと冷静にゴールを見た時に自分が本当に目の前のことに"いっしょうけんめい"で良いんだと安心させてあげることで、その苦しさも和らげることが出来るはずだ。そして最終的にその頑張りが自分や周りの人を幸せにすることに繋がっているのだと全てが終わった時に感じれれば人生はそれで良い。

社会人になった今も一人暮らしの本棚には数学の参考書が置いてある。

父との思い出がいつまでも私の頑張りを肯定してくれる。

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