見出し画像

日記-4(雨と花とエビ)

静かに、けれど確実に、雨が鳴る。
地面を叩く音、張った傘を叩く音、きっと葉を叩く音もする。

今はマンションの2階に住んでいて、端の窓から臨場感をもって道路を見下ろすことができる。こんな日に歩いているのは配達員さんくらいだ。ありがとうございます。本当に。
私の頼んだヨガマットが届いたのが、昨日でよかった。

今日は恋人のシャツをクリーニング屋から引き取り、最寄りのコンビニで片栗粉を買うだけで外出は終えた。
さっき生理が始まり、こんな大雨で、こんな状況じゃ、お家に根付くことが一番いいというか、それ以外あんまり気が進まない。

寒いなあと思いながらも雨の音を聞きたくて、窓を少しだけ開けている。
何日か前、幸いにもまだ閉まっていない花屋で買ってきたレースフラワーが3本、窓際で風に揺れている。
もう1本、シックなフリルのようなラナンキュラスは、実は動かすともう花びらははらはら落ちる。

もう本当は、彼女は役目を終えているのも分かっているんだけれど、まだ傍目には綺麗な顔をしたままなので、ついそのままにしている。動かさないように、彼女だけはもう水切りをしない。
寿命を分かりながらも延命をしない、そのくせに愛でる、矛盾した愛情なのかもしれない。でも綺麗なんだ。まだ一緒にいたいの。このレースフラワーには、彼女の裾の紫がすごく似合う。

それにしても私は、色の付いた花はラナンキュラスばかり買うな。

チューリップも、ダリアも、ミモザも、もちろんバラだって、美しい顔をしているとは思うし、大好きだし、もらうととても嬉しい。
チューリップはすぐに開いて折れてしまうし、ダリアは誇らしげに咲きすぎて後ろめたい、ミモザは花粉が落ちて家具を汚しちゃうし、バラは香りが好みでないものが多い。全部個人的な話だし、明日にはその花たちを買っているかもしれないし、何とも頼りない好みだけれど。

今調べてみたら、ラナンキュラスはラテン語の「カエル」に由来するのだという。
湿地帯に多く咲くことと、葉の形がカエルの足に似ているらしい。何だかイメージと違うな。でも裏切られても、私はまだこの花を買い続けるのだろうな。

期間限定の仮住まいなので、部屋にこだわっていられない。
大好きな花たちも、100円で買った花瓶に入れている。でも今は、それくらいが調度いいのだろうと思うし、花を挿したらもちろん100円の花瓶には見えなくさせてくれるしね。

いくら暖かいコーン茶を飲んでいるとはいえ、そろそろ窓を閉めよう。
雨の音は、遠くなった。それでも、今日の雨は存在感が違う。
外に人がいなくて、嬉しいのかも。音もせず、ただ地面に染み込む雨もいるんだろうな。そういう子の方が、私は好きだな。

今日の夜ご飯は、恋人に買わせたちょっといいエビで、エビチリを作るよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?