見出し画像

散文-2(つぼみ)

やわらかい日差し
やわらかく青い空
やわらかく空を覆う春の気配
やわらかく静かに耳に届くピアノ
2月は思ったよりも優しい

行ってみたい景色はまぶたの裏に浮かんでは消える

雪に覆われた街、それでも晴天できらきらと輝く田舎町
緑が存在感を放ち始めた水田
桜の花びらが散る姿、そこに集まる無敵な制服の学生たち
日が沈む直前の夕日を反射する穏やかな海
霞んだようにほのかに浮かび上がる天の川

どれも手を伸ばしたら手が届くはずで
すぐに通り過ぎてしまうもので
それでも毎年、毎日、訪れを穏やかな気持ちで待つ

飛ぶのではなく
羽ばたくのではなく
今は風に漂っていたい

花が咲くかもしれない
ゆるく閉じた緑のつぼみを抱えて
それを誰かに手渡すときを夢みて
いつか渡した思い出を胸に抱えて
ただ春を待って漂う

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?