![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/9771293/rectangle_large_type_2_ddd8749cf613e18311774b83da396b87.jpg?width=800)
散文-2(つぼみ)
やわらかい日差し
やわらかく青い空
やわらかく空を覆う春の気配
やわらかく静かに耳に届くピアノ
2月は思ったよりも優しい
行ってみたい景色はまぶたの裏に浮かんでは消える
雪に覆われた街、それでも晴天できらきらと輝く田舎町
緑が存在感を放ち始めた水田
桜の花びらが散る姿、そこに集まる無敵な制服の学生たち
日が沈む直前の夕日を反射する穏やかな海
霞んだようにほのかに浮かび上がる天の川
どれも手を伸ばしたら手が届くはずで
すぐに通り過ぎてしまうもので
それでも毎年、毎日、訪れを穏やかな気持ちで待つ
飛ぶのではなく
羽ばたくのではなく
今は風に漂っていたい
花が咲くかもしれない
ゆるく閉じた緑のつぼみを抱えて
それを誰かに手渡すときを夢みて
いつか渡した思い出を胸に抱えて
ただ春を待って漂う
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?