ヨルシカの好きな所〜アルバム「幻燈」が発表されて〜
私は恋愛の歌の、甘ったるい歌詞が苦手だ。好きとか愛してるとか、胸が苦しいとか辛いとか云々。そんな言葉よりも、繊細な言葉に置き換えて表現するヨルシカが好きだ(ちなみにスピッツもその意味では好き)。
ヨルシカの曲で男女の別離がテーマのものがいくつかあるが、特徴的なのは、登場人物の気持ちがどこですれ違ったかの場面を描いて、後は聴き手に結末を委ねるところだ。特に「夜行」「チノカテ」「左右盲」で思い当たる。
また、最近有名文学がモチーフになった曲が発表されているが、決して結末が文学と同じになる様に描かれていないように思う。だからモチーフの文学を知らなくても楽しめるし、もちろん知れば更に楽しめるのだと思う。
甘くて単純な言葉を使わずに、恋愛の終焉を描くヨルシカ。歌詞は難解だけど、それ故に聴き手は曲に個々の解釈を持つし、思い入れも深くなる。そしてその世界観をわが物にしようと、何度も聴きたくなるのだ。
それにしても、アルバムタイトルの「幻燈」は秀逸だ。多分宮沢賢治の「やまなし」に表現されてる幻燈のイメージだと解釈したが、ピッタリだと思う。
アルバム収録曲は、様々な物語を描いている。10枚の美しい幻燈を、私達に届けてくれるヨルシカ。過ぎゆく春を感じながら、静かに耳を傾けたいアルバムだ。