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ヨルシカの「晴る」に想う事

 ヨルシカの新譜が配信された。四季を歌うヨルシカの曲、中でも花を大切にする彼らの中で春は特別なのではと思う。今年はどんな春の曲かと楽しみに待っていたら、昨夜配信があった。新年の、初春に合わせた春の曲のリリースは、厳冬期を前にした人々には明るい道標となり、心を優しく支えるだろう。

 去年の「春泥棒」は満開の桜が頭上で散る所を歌った伸びやかな曲だったが、今回はわりとテンポの早い曲調。そして言葉選びが多彩だ。
 例えば「春」を「晴る」と韻を踏んでいる所。歌詞を見ると漢字で見分けがつくけど、聴くとどちらかわからない。しかしそこが、和歌や俳句のように二通り意味をなすようで面白い。他に「咲く」を「裂く」としたり、あと「春のせい」は「春の精(使者、妖精)」、「土」は「槌」かな?と、想像は膨らむ。
 曲名「晴る」は造語だけど、多分「晴れる」意味を持たせながら春になっていく事を表した動詞なのだろう。素敵な表現だと思う。

 冒頭から風を取り入れて、広範囲にだんだん春が地上へ降りていく印象を受ける。また、吹き下ろす風や降る雨が土に落ちる音、そしてビードロの透明感や雨を涙として青色を取り入れた色彩感、そして春のにおいを感じとる、と五感からつぶさに春を汲み取っている。なるほど季節、特に春は五感からの小さな気付きの積み重ねだと思う。研ぎ澄まされた感性が、春の訪れを形にしていく、美しい歌詞である。

 いつも詩的なヨルシカの曲は、聴き手に様々な捉え方を許す。例えば和菓子では本当の季節が来る前に、店先にはさりげなく季節を表現したお菓子が並ぶが、私にはこの曲がそんな印象に思えた。

 さて、あなたにはどう届いただろう。

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