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映画『大いなる不在』

年初にユーロスペースで観た、塚本晋也監督の『ほかげ』で森山未來の演技が印象に残ったので他作品ではどうなんだろうと『大いなる不在』を観ました。

超ざっくり言うと「何十年も顔を合わせていない父が認知症になり、久しぶりに会って徐々に父の人生を辿っていく」というあらすじ。

身近なテーマだからか、少し前に見た『関心領域』よりしんどさを感じ、観賞中ずっと胃が痛かったです。距離のある親子間の絶妙に張り詰めた空気やよそよそしさ、認知症になった父役の演技のリアルさに観ていてまあまあ疲れました。

ボケ始まっている自分の祖母と重ねて見てしまったのが良くなかったのか、「次の瞬間どんな行動をされるか分からない緊張感」や「今まで自分が保護される立場だったのが徐々に逆転する受け入れられなさ」が思い起こされたのが多分疲労の原因です。悲惨さや悲しさをことさら強調している内容な訳ではないですが、どうにもできないやるせなさというか…なんとも言えませんね。

森山未來演じる息子が父の思っていたことや抱えていた愛をなぞっていくのは、淡々としたキャラクターなりに「あなたのことをわかりたいけど、人と人が理解し合うのはこんなに難しい(それでもいつかわかると信じて行動したい)」というのが伝わってきてよかったです。(途中これ泣かせにきてる?ちょっとわざとらしい、と冷めちゃったシーンはありますが)
あと2カットくらい遠景のやたら美しい場面があったのもよかった。ずっと近景~中景の視点だったのであそこだけ雰囲気違いました。

ちょうど知人が最近脳科学の観点から見た認知症についての本を読み、「記憶は無くなってもその人らしさは残り続ける」という議論をしたばかりだったので、「じゃあその『らしさ』はどこに残るのか?」ということを思った映画でした。

父役、愛のコリーダの人だと後から気付いた

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