アルバム ”Melancholic Way” ライナーノーツ(其の1)

 2022年8月14日に發賣開始を豫定してゐるアルバム ”Melancholic Way” について、作者である小生(大川すみを)が、つらつらと思ひ附く儘に書いてゆかうと思ふ。

 アルバム全體・各曲について・そして小生自身のこと…。文章量が増えてしまふかもしれないので、記事を數囘に分けることを想定し、今囘は“其の1”とした。

アルバムのアートワーク

アルバム作成に至る經緯

 2019年1月26日(27日だつたかもしれない。正確に把握してゐる譯ではない)に、當時「當代随一」との評判で世間を賑はせたアイドルグループ “天狗黨” が解散した。

 天狗黨總裁であつた小生も生活の爲に就職し、東京・大田區の大森へ移住したのだつた(會社の新人研修の爲の移住。約四カ月間)。新たな暮らしへの門出は期待と諦めが相克した。

 そんな感じの東京暮らしを其れなりに滿喫し、其の間に數曲、作曲した。“アールグレイよりもダージリンの方が好き” “うさぎさん” “目醒め” “電話” などである。そして此れらを含むアルバムの制作を畫策した。

 2019年秋になつて、氣心知れた友人・先輩に手傳つてもらひながら、アルバム “アールグレイよりもダージリンの方が好き” 制作が始まつた。最初は調子良くやれてゐたが次第に行き詰まり、コロナ禍の廣がりも相まつて遂に破綻した。

 完成してゐれば大作になつたであらう此の制作は、小生としては完成させるまでは死ねない、と思ふくらゐには一生懸命だつたし、ゆゑに當時を思ひ出すのは今でも辛い。此のことは別の機會に書くこともあるだらうから、今囘は此れくらゐにしておく。

 2021年の春頃、悲嘆にくれながら某喫茶店で珈琲を飲んでゐる時(此の頃には紅茶より珈琲の方が好きになつてゐる)、其の喫茶店のマスターの言葉に一筋の光・一本の道筋を見たのである!

「獨りでも出來ることから、始めてみてはどうだらうか? 其の代はり、今から始めないとだけれど」

制作の經過

 其の言葉から制作を開始したのが本作である。完全に獨りで、部屋に籠つて密かに作つてゐた。“副將軍” “眠れない夜” “訣別” などの過去の曲を幾つか選曲し、不足分は此のタイミングで作曲した。DAWソフトウェアの使ひ方を覺え、バッキングトラックから録音、そしてボーカルトラックを録音。ミキシング、マスタリングを手探り狀態ながら勉強し、即實踐…。

 此處に大きな落とし穴・罠がある。演奏・編曲の拘り・マスタリングの技術などに意識がいき過ぎると、作品の目的・本質を見失ふ。

 小生にとつて大事なのは、作品が持つ質感・イメージ、其れだけだ。其れらが強ければ強い程、聴き手にも強く響くものになるだらうし、聴くことに意味が伴ふものになる。音樂は、頭で聴くのではなく心で聴くものだから。技巧に寄れば寄る程、かういふ側面からは遠くなる氣がしてゐる(技巧が不足してゐるからだらう)。

 其れと同時に、アルバムジャケットや歌詞カードなどの意匠面の檢討・制作も並行して行つた。外身の體裁にはかなり拘つた。

アルバムの主題

 今作は其のタイトル通り、“憂鬱” が主題となつてゐる。此れについては歌詞カードに收めた序文に詳しく書いておいた。特別に、以下にも書き殘しておく。

メランコリックな夜、まさに夢現つ。

 此の世はまさに地獄。其れについて、今更何を云ふことがあらうか。皆が同じやうに、少しでもより良い狀況をつくらう、より強い人間にならうと懸命に生きてきた。

 殘念乍ら、皆其々違つた生まれがあり、力量の差があり、考へ方がある。得手不得手がある。關はり合ふ其々の關係性が互ひの優劣を生み、貴賤貧富の差を生み、善惡を生む。現實はそんなものだ。

 然しそんな世に於ひても、各人の幸せの度合ひは測れない。といふ説を、此處で表明しよう。幸福や憂鬱は自分の感じ方次第なのだ。其處に人生の面白さであり、苦しみであるやうなものが、在ると思ふ。

 街へ出て、美しいものを探してみよう。野に咲く花に心奪はれてみよう。朝まで酒を飲み、夢を語らう。一生に一度の戀をしてみよう。デカいボリュームで、ロックンロールを聴かう。何も出來ないやるせなさに、涙を流してみよう。


 そして、何を感じるだらう。各人の狀況に關はらず、其々に美しい瞬間がある筈だ。そして憂鬱は、そんな些細な喜びを感ずる爲の逆説であると思つてゐる(暗い夜空の中で僅かに光る星影を觀るが如し)。

 本作は、私にとつての“憂鬱に滿ちてゐ乍らも美しかつた過去”に書き溜めてゐた、或ひは最近書いた、樂曲の一部である。聴き手に注文をする氣はないが、強いて云へば、暗闇ではなく星影にフォーカスを當てゝ慾しい、と思ふ。
序文「メランコリックな夜、まさに夢現つ」

 次囘、氣が向いた時に、各曲についての御話を書くかもしれない。

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