Prologue:孤独になれば、道は拓ける。
今だから告白するが、私は留学していた頃に「孤立」する経験があった。
アメリカ・ミシシッピ州での留学をスタートさせて1年目のことだった。
そこに至る段階で私は
小・中・高・短大での全ての人脈・交友を断ち切っていた。
否、「断ち切らざるを得なくなった」と言う方が正しい。
LINEの「友だち」からは家族以外の人間はいなくなり、
それまでの全てを絶った状態で一人ミシシッピに渡った。
心の底から人間関係に疲れていた私は、
そこから「逃げる」という後ろ向きな気持ちのもとで孤立状態になっていた。
「一人で寂しいな…」
当時の私は一点の曇りもなくそう思い込んでいた。
「様々な人との交流」が一大メリットとして挙げられる海外留学なら尚更だった。
だがその年の暮れの一時帰国中、文字通り私の運命を変える出来事に出会った。
都内のとある大型書店だった。
出会ったのは人ではなく、一冊の本だった。
それが千田琢哉さんの『孤独になれば、道は拓ける。』だった。
誠に恥ずかしいことだが、それまでの私はろくに本を読んでいなかった。
どうしてその時書店に行く気分になったのかは覚えていない。
だが、その本の背表紙を見た時に私は確信したのだ。
「あ、これは私のために書かれた本だ」
無心でその本を手に取り、無心でページをめくった。
最初のページにはこう書かれていた。
『人間の本能として、孤独になると寂しさを感じるには違いないが、
人と群れる時の苦痛と比べれば、限りなくゼロに近い。
群れることによって得られる悦びと比べると、孤独から得られる悦びは無限大だ。』
現代では、留学における孤独を「避けるべきもの」と思っている人が大半だ。
それは私自身が留学時代の前半に交流してきた同級生からも直接聞いてきたし、
ネットで「留学 孤独」と検索してみればよく分かる。
だが、あの書店で私の頭に電撃が走った。
私は一点の曇りもなく、こう確信した。
「孤独とは武器であり、強みであり、チャンスである」
それから留学生活後半を終えて卒業し、今は日本で暮らす私だが
あの時の確信は確かに正しかった。
「孤独である」という事実が、私を導いてくれたのだ。
あなたは色々な悩みを抱えてこの文を読んでくれているのだろう。
または「そんなことあり得ない」と思っているかもしれない。
そんなあなたにお伝えしたいのは、
留学において孤独とは避けるものではなく、歓迎するものだということだ。
この連載ではその秘密について一つずつ解き明かしていきたい。
2022年1月吉日 透佳(スミカ)
(『孤独の留学 ー Study Abroad in Solitude.』)
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