Prologue: あなたが英語嫌いになったのは、「英語好き」の書いた本を読んできたから。
あなたはこの連載を読む前に、
数多くの学校教科書・参考書・文法書に触れてきたことだと思います。
その上で
「何を言っているのかが理解できない」
「せめてもう少しシンプルに・すっきりと説明してほしい」
「もっとゼロからでも分かるようなものがほしい」
と嘆いてきたことだと思います。
私も小中学生向けに塾講師として働いていた頃、
生徒たちの大半はそういった「英語嫌い」の子たちでした。
では、なぜ世の中の教科書・参考書・文法書は分かりづらいのか。
その理由はすごく簡単です。
それらを書いている人は、英語が大好きだからです。
そういう本を書くということは、
「英語」という科目を職業にしたということです。
もし英語が嫌いだったら、絶対に英語を仕事にはしないでしょう。
ただでさえ英語を仕事にしている中で、
その中でとりわけタフな「英語の教材」を好き好んで書くわけです。
英語が好きかつ得意でなければ、到底耐えられる仕事ではありません。
三度の飯より英語学習が好きだ、
休日にはオンライン英会話・海外の映画やドラマが息抜きという人たちです。
そういう人たちが書くことが大半なのですが、
そこには一つの「問題」が生まれます。
私も以前、英会話の教材編集に携わったことがあるのでよく分かるのですが
好きな人というのはつい、好きな人「基準」で書いてしまうのです。
嫌いな人からしたら
「こんなに要らないよ」
「そんなに深いところまで興味ないのに…」
という情報も含めて、
「でもこれは絶対に知ってほしい」
「英語ってこんなに楽しいんだよ」
とつい熱くなって本の内容に入れてしまうのです。
(編集者も編集者で「英語好き」なので、誰も止める人がいません)
そんなテンションで書かれた数々の本や教材は、
「英語好き」の人にとってはまさに天国です。
ほしい情報は全て載っているし、かなり深い所まで載っていて役に立ちます。
ですが、こと「英語嫌い」にとってこれは地獄です。
野菜なんて嫌いだから野菜ジュース一本で済ませたいのに、
「でも採れたての野菜は絶対美味しいから」
「身体にいいよ、健康にいいよ」
と無理矢理生野菜を口に突っ込まれるようなものです。
そこでこの連載は、
野菜嫌いの人が「これならまあ飲める」と飲む野菜ジュースのように
英語嫌いの人が「これならまあ読める」と読む参考書を目指しました。
余計な情報や「奥深さ」「英語の面白さ」なんてものは、一切排除しました。
私が教えていた「英語嫌い」の子たちに
いかに飲ませるか・定着させるかを毎日考え抜いた上で、
この「透佳ノート」が生まれました。
こんな連載を書くのにあまり大きな声では言えないですが、
実は私も英語があまり好きではありません。
中学の最初の英語のテストでは30点を取りましたし、
海外留学を4年経験しても、英語講師を経験しても、
英語にはまだまだ分からないことだらけだからです。
そんな私だからこそ書けるものがあるはずです。
ぜひ、これまでとは違った英文法の勉強をしてみてください。
2021年12月吉日 透佳(スミカ)
(『透佳ノート – 英語嫌いのための中学英文法 ー Sumika’s Note: J.H.S. Grammar For Those Who Don’t Like it.』)