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劇団ユニバースの一員だった時間について

劇団ユニバース セイジン公演「アネモネ」にご来場いただきました皆様、ご来場いただいてないけど応援してくれたりスミアンジュまたなんかやってんなと思ってくださったりした皆様、ありがとうございました。

無事に公演を終えることが出来ました。





「アネモネ」の演出からインスタでDMがきたのが2020年の12月。
「アネモネ」の代表からもインスタでDMが来たのが2021年の2月はじめ。

「成人公演やるんですけど出ませんか」

曰く、西濃のメンバーを集めてやるつもりがキャストが足らないとのことで。

いや、誰やねん。

マジで誰。西濃て。こちとら岐阜地区よ?西濃の同期演劇部なんて誰も知らんよ。きみたち誰よ。
てかなんで私のインスタ知ってんの...?

この人たちが誰なのかも知らないし、何やるかも知らないし、いつどこで誰とやるのかもその時は全くわからなかった。
でも向こうはどうやら私を知っているようだった。
じゃあだいじょぶでしょ。
軽率な私はそう思って、それはそれは軽率にこの一大プロジェクトへの参加を決めたのです。






2021年2月末。
いつか1度だけ来たことのある大垣の稽古場で、それから1年以上付き合うことになる人達に出会う。


時効だと思うから正直に言います。
顔合わせの時点で私は、出演を快諾したことをめちゃくちゃ後悔してた。
それはもう、ものすごく後悔していた。
帰りの車を運転してくれた彼氏に半べそで「どうしよう...」って言うくらいには。

誤解のないように言っておくけど、何か嫌なことがあったとかそういうことでは全くない。
いのりちゃん、おがわ、こでら、きゅうまさん、るびすくん、皆めちゃくちゃいい人です。
皆素敵な人たちです。

じゃあどうして後悔してたのか。
私はこの人たちに馴染めるだろうか、と不安に思ってしまったからにほかならない。

同じ地区で高校演劇をやってきた人達というのは、多かれ少なかれ面識はあるし無くても共通の話題がいくらでもあるだろう。
同じ世界で3年間生きてきたのだから当たり前といえば当たり前だ。
その人達をかき集めて高校卒業の2年後に公演をする。このご時世に。それを成し遂げようとするコミュニティがいかに確固たるものか、私は「岐路」のときに身にしみて実感していた。
あの時は迎える側だったけど。

そして大垣で、初めましてスミアンジュです、と挨拶したあの日。自分が迎えられる側になったことを私はやっと自覚したわけである。

今思うと、いろははこういう気持ちだったのかもなあ。
私、あの子がちゃんと「私は成人公演2021の一員だった」って言える舞台にできたかなあ。






わりと最近まで、‪具体的に言うと昨年の冬まで。
ユニバースにとって私は余所者だと思っていた。


「なんこう」がどこかわからない。「きたこう」が岐阜北高校じゃない。「けがなしおしなしえがおあり」ってなに。西濃地区の常識も定番ネタも私にはわからなくて、皆が盛り上がってる時に水を差しちゃった気がしたり。
高校時代の私を知っている人達に呼ばれたからには期待されている以上の演技をしなくちゃいけないっていうプレッシャーも、誰もそんな圧力なんてかけてないのに勝手に感じてしまってたり。


皆やさしいから、私が疎外感をおぼえないように気をつかってくれていただろうし、私だったらそうしていると思う。
だけどそれとこれとは別で、言葉にするのが難しいけれども、私は彼ら彼女らにとってあくまで余所者で、外から来た人なんだと強く思っていた。

もうすぐ稽古が本格的にはじまるだろうと思って脚本を読み返し始めた頃。昨年の冬。

私の自己認識は綺麗さっぱり消え去った。

文脈は忘れてしまったけど、私をここに連れてきた1人がLINEで私に投げた言葉が、私をユニバースの一員にしてくれた。
「私は西濃でもないしユニバースのメンバーじゃないから」
と無意識の自虐みたいに話した私に彼は、


「西濃じゃないけどれっきとしたユニバースのメンバーでは...?」

かっこつけた言い方でも改まった言い方でもなく、当たり前みたいに言った。
私がずっと持っていた荷物をさらっと奪い取って、宇宙の彼方に投げ捨てた!

何気ない一言だったのか、なにか心を込めて言ってくれたのかわからないけど、覚えていないかもしれないけど、あなたのおかげで私はユニバースの一員だと胸を張って言えるようになれた。
あなたが代表でよかったと思います。ありがとう。







春休みは、公演当日までほとんど稽古1色だった。
稽古場までは車で1時間。ちょっとしたドライブ。
集まっては稽古して、稽古して、気分のノリが悪い日は皆と喋ってからさあやるかって重い腰を上げたりして。
演劇だなあって思えた。楽しかった。

だから当日、私の出番がぜんぶおわって、アネモネの花言葉を舞台袖で聴いた時、ああもう終わっちゃうのかってちょっぴり寂しかった。
いつの間にか私はユニバースの一員になっていて、この1度きりの公演が終わるのを切なく思うくらいには楽しんでいたし幸せだった。そのことに、その時ようやく気づいた。

私は皆に期待してもらえていたでしょうか。
期待を超えるはたらきはできたでしょうか。
自分では少し反省も残っているけど、皆にとって私もユニバースの一員だったと思ってもらえていたらいいな。



知らない人と知らない場所で演劇をした時間は、私にとって宇宙旅行だったと思う。
未知の世界。キラキラした世界。世界の根源。
演劇はスミアンジュが生まれた場所だから。
私をアネモネがいっぱい咲いている宇宙に連れていってくれた、代表はじめ劇団ユニバースの皆には感謝でいっぱいです。

そして、幸せな時間だと思えたのは客席をいっぱいにしてくれたお客様のおかげでもあります。
皆様本当にありがとうございました。



紫色のアネモネの花言葉は、
「あなたを信じて待っています」。

待っていてくれる人がいるから走っていける。
どこにでもいけるのは、どこからでも帰れるから。
いつまでも進んでいけるのは、いつでも振り返ればそこで待っていてくれるなにかがあるから。

私はいつだってそうだった。
きっとこれからもそうだと思う。

劇団ユニバース セイジン公演「アネモネ」は、そのうちのひとつになりました。
幸せです。ありがとう!




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