見出し画像

茶色いパン|ピーターラビットのおはなしをAI翻訳してみた 3

そして、おかあさんウサギは子ウサギたちにこう告げる。

Now, run along, and don't get into mischief.

DeepL 訳 →
さあ、走って行って、いたずらをしないでね。

run は「走る」だが、親や学校の先生がこどもたちに

Now, run along!

と声をかける時は、家から外へ、校舎から校庭へ「遊びに行っていいよ!」と送り出してあげる時の合図だ。この言葉を聞いたこどもたちはクモの子を散らすように走り出す。自由だ! という喜びと共に。
だから、私はこう訳したい。

じゃ、あそびにいってらっしゃい。

日本のおかあさんなら、こどもたちにこう言うだろうから。でも、世界中のどんなおかあさんも「気をつけてね」とひとことクギを刺す。

原文の ... and don't get into mischief. を「いたずらをしないでね」とした DeepL 訳もいいのだが、私は、

いいこにしてね。

と意訳するのがいいかな、と思う。

原文とズレてしまうのではないかという批判もあるかもしれない。でも、私がこどもで、今から外に遊びにいってもいいという許可を母親からもらったら、そのあとすぐに「いたずらしないで」より「いいこにしてね」のほうが嬉しいかなあ。

おかあさんウサギは次にこう言う。

I'm going out.

DeepL 訳 →
私は出かけるから。

これも誤訳ではないが、おかあさんはこの後パンを買いに行くのだから、

おかあさん、かいものに いくね。

と私は翻訳したい。

日本のおかあさんは、幼いこどもとしゃべる時に自分のことを「私」ではなく「おかあさん」とか「ママ」と言う

「いえ、私はこどもとしゃべる時、いつも〈私〉と言っています」という母親もいらっしゃるでしょうが。
「ママは○○ちゃんが大好きよ!」ではなく「私はあなたを愛してるよ!」と毎日言っている日本のママもいる・・・かしら?

ちなみにうちの猫はマルチリンガルなので「大好きだよ」 "I love you!"  "Ich liebe dich!" "Je t'aime!" などなど多言語でかわるがわる伝えている。


Then old Mrs. Rabbit took a basket and her umbrella, and went through the wood to the baker's.

DeepL 訳 →
そして老いたウサギ夫人はかごと傘を持って、森を抜けてパン屋さんに行きました。

「老いたウサギ夫人」問題については前の記事で既にコメントした。


basket を DeepL は「かご」としたが、外来語のバスケットを使う方がイギリスのお話らしさが出ていいと私は思う。バスケットは日本のこどもたちの語いにもある。幼児向けにひらがなで「ばすけっと」とする。

私の翻訳 →

おかあさんは そういって ばすけっと と かさを もって もりの なかを とおって ぱんやさんへ いきました。

画像1


She bought a loaf of brown bread and five currant buns.

DeepL  訳 →
彼女は茶色いパンを一斤と、スグリのパンを五つ買いました。

DeepL 訳はやはり、 She を「彼女」と訳してしまう。これはまずい。ここも「おかあさんは」にするのか? いや、日本語では誰がパンを買ったのか文脈からわかるので、主語は省略する方が自然だ。

私の翻訳 →

ぶらうんぶれっど の ながいの 1こ と 
まるくて ちいさい ぶどうぱんを 5こ かいました。

「ちゃいろい ぱん」か「ぶらうんぶれっど」かは好みが分かれるかもしれないが。

DeepL が「5このスグリのパン」ではなく「スグリのパンを五つ」としたのには感心した。「いつつ」という日本語は伝統的で自然で美しい響きだ。

でも、1から10までの数字の書き方を覚える時期のこどもたちだから、「1こ」と「5こ」をあえて使ってみた。


Flopsy, Mopsy, and Cotton-tail, who were good little bunnies, went down the lane to gather blackberries.
DeepL 訳 →
フロプシー、モプシー、コットンテールの3人は、良い子にしていたので、ブラックベリーを採りに小道に入りました。

あれ? ここでは「フロプシー」になってる。そうか。初出の時は誤入力を疑ってくれた DeepL さん、二度目というダメ押しがあると、どうやら Flopsy で間違いないようだ、ってわかってくれるのね。

でも、この3人のウサギの女の子たちは「良い子にしていた」の? それはちょっと違うのでは? 良い子だったから、おかあさんの言いつけを守ってマグレガーさんの畑の方には行かず、the lane へ行ったのよね?

英語の down the lane は必ずしも標高の低い方へ坂を下りることではない。まったいらな道の先にある店の方向を指して You can find the store down the street. と道案内することもある。

DeepL さんはこれは知っていたようで、「小道の下へ降りていった」とはしていない。「小道に入りました」になっている。頑張った。もう一歩だが。

私の翻訳 →

Flopsy, Mopsy, and Cotton-tail, who were good little bunnies, went down the lane to gather blackberries.

ぴょこちゃんと もこちゃんと ふわみちゃんは おかあさんに いわれた とおりに できる いいこたち でした。
3にんは みちばたの くろいちごを あつめに いきました。

画像2


「ぶらっくべりー」にするか「くろいちご」にするかはちょっと迷った。おかあさんがパン屋へ行った時の basket は「かご」ではなく「ばすけっと」に、currant buns は「からんと ばんず」ではなく「ぶどうぱん」にした。迷ったすえ、ここは「くろいちご」にした。

But Peter, who was very naughty, ran straight away to Mr. McGregor's garden ...
DeepL 訳 →
しかし、ピーターはとてもいたずっら子だったので、すぐに逃げ出して、マクグレガーさんの庭に逃げ込みました。

いやいや、DeepL さん、ピーターラビットは「逃げ出した」のではなく、まっすぐ走って行ったのよ。ウサギのおうちからそれなりの距離があるから away to なのであり、run away (逃げる)の away ではない。

いたずらっ子のピーターは、これからマグレガーじいさんの畑でいたずらをするのであって、そこへ「逃げ込む」わけではない。「逃げ出して」では、つじつまがあわない。

私の翻訳 →

But Peter, who was very naughty, ran straight away to Mr. McGregor's garden ...

でも ぴいたは いたずら だいすきだったので すぐに はしって まぐれがー じいさんの はたけへ いきました


... and squeezed under the gate!
DeepL 訳 →
と言って、ゲートの下に押し込んだ。

何を?! って思わず突っ込まれるのでないか? 日本の子どもたちに。
「なにを おしこんだの?」

原文には squeezed himself の himself は無いが、それは言わずもがなだから。

それに、なぜ急に「と言って」という訳を出したのだろう?
何て言ったの? そんなこと、英語の原文にどこにも書いてない!


... and squeezed under the gate!

私の訳 →
ぎゅうううっ・・・
ふぇんすの したの すきまから はたけの なかへ はいります!

画像3


こういう時こそ、日本語訳ではオノマトペを使いたいと私は思う。
そして、こまかい事だが、gate は「げーと」でも「もん」でもなく
「ふぇんす」にした。

さし絵にある白い木製の gate を見て、日本のこどもたちは「ふぇんす」だと思うだろうから。


さて

まぐれがー じいさんの はたけの なかへ はいった 
うさぎの ぴいた。 これから なにを するのでしょう? (つづく)


*画像は The Tale of Peter Rabbit より

★私の翻訳は、私「すみ」の著作物です。無断転載を禁止します。
★引用する時は出典を明記してください。

*記事中に引用した DeepL の翻訳は 2021年8月当時のものです。DeepL は日々進化中のため、現在は引用とは異なる訳が表示される場合もあります。