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誰か…大量の紙をお金にする方法教えてください

ああ…こういうことなのね…
分からないことが、分かってスッキリした、心地よさはない。
知らない方がしあわせだったかも。
見なくてもいいものを見てしまった。
大好きな子の、必死の息継ぎ顔を見てしまったみたいな感覚になった。

そりゃ少ないよね。
こんなに引かれてたら。
大量の紙の束を前にして、ナゾが解けた。
ああ……これがお金だったらいいのにな。

保育園を辞めて2か月が経つ。会社、学校に属していない生活をしたことがなかった私にとって、初めてのこと。
卒業してから12年間、保育の仕事しかしてこなかった。
学生時代は短大に通ったから、2か月夏休み! なんてことはなく、
キツキツの授業と実習で、疲れ果てて寝てしまう。
そのまま就職して、私は保育園の先生になった。

ご存じの通り、保育士の給料は安い。
本当に安い。
長年働いて、正社員、主任になっても手取りは18万円だった。
毎月明細書を見て、というか見る気もなくなるのだけど、確認の為に支給額を見て、ため息が出た。

炎天下でこども達と走り回って、
食べたか飲んだか分からない給食を済ませ
昼寝時間に書き物をして
また遊んで1日が終わる。
これを20日繰り返して18万円か……。
自分の価値、能力の値段ってこんなもんなんだ。
自己肯定感が下がる気がした。

保育園を辞めたのは、給料のせいだけじゃない。
ぼんやりもうここにいても仕方ない気がしていた。
合わない、しっくりこない。
20代で履いていたミニスカートが今では浮いて見えるみたいな感覚。

抜け出てから、生活と見る世界が変わった。
決まった時間に起きなければならない。義務感がなくなった。
好きな時間に、好きな場所でごはんが食べられるようになった。
自分で稼ぐ、仕事を作っていくにはどうしたらいいのかを考えるようになって、
どう生きていきたいのか悩むようになった。

保育士という肩書がなくなって、ただのしばかわ すみかになって
自由になった分、自分でなんとかしなくてはいけなくなった。

稼ぐこと、1日の予定を立てること、何もかも自分で決める。
やらなくてはいけない。
保険料、年金を支払うこともするようになった。

無機質なコンクリートの壁をくぐり、パソコンがずらりと並ぶオフィスに入る。にこやかに対応してくれた女性は、ピンクのブラウスに、パンツを合わせ、長い髪をひとまとめにしていた。
「今日は年金の変更ですね」
紙を読みながら、丁寧にマーカーで線を引きながら説明する。
「はい」
恥ずかしながら、システムが全く分からない。何を聞いても受け入れてくれそうな人で安心した。

「まとめて支払いもできます」
「カードも可能です」
そうなんだ。国のお金ですら、まとめ払いは得になる。200円のクッキーは2個買うと350円。いっぺんに払うのは得。というのはどの世界でも同じなようだ。

「16500円ですね」

「ん!?」

「16500円をお支払い頂きます」

笑顔と反対に聞こえる金額に驚いて、聞き直した。

「1か月でですか?」

「そうですね」ちょっと悪びれた顔で彼女は線を引いた。

なるほど……説明を終え、しばらくすると、大量の紙が送られてきた。
あて名は私。
30枚ほどの細長い紙には金額が書いてある。

16500円、23500円……
計算して増えれば増えるほど、全くうれしくない。これがお金ならよかったのに……

知らなかった。こんなに支払ってたんだ。
税金も、年金も、保険料も。
今までは引かれた状態で支給されていたから、気が付かなかった。
大量に引かれれば、給料は少なくなるよな。
少なすぎる理由は、保育園を出て初めて分かった。

日本の経済状況が悪いとか、年金もらえないかもとか、不安をあおる説明はよく聞いていた。
どこか自分には関係ない。と思っていた。何とかなるかと、根拠のない自信があった。
体験して、現実を知って、気が付いた。知らないことは損をする。

34歳。
元保育士。
カレー部長として生きていく。
あの生活に戻らないのだから、自分で作っていくしかない。
現実を知った今、遅くはない。

誰か、紙をお金にする方法をご存じの方、教えてください笑
落ち込んでも仕方ない。カレーを食べながら、考えます。

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